第1章 決意と旅立ち
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私はソファに座らせられた
瑞樹さんはその向かいに座っている
『あ、私は時雨楓と言います』
一応自己紹介をする
「楓ちゃんだね。分かったよ。……さて、何から話そうか。質問はあるかい?」
質問……ここに来るまでは何もされなかった
しかし、この人達が悪人でないという証拠はどこにもない
自分から発言し、それがこの人達の気に障れば……
そうだ、危険に晒される可能性がある今、迂闊に質問はできない
『……特にありません』
平静を装い返事をする
「そうかい。じゃあまずは私達が何者なのかについて話そう」
そう言うと、瑞樹さんは資料を手に取り話し始めた
「私は一応医者でね。若い頃にこの病院を建てていて、それなりの地位があるんだ。伊織は私の跡継ぎだよ」
一代でここまで大きな病院を建てるとは……
きっとかなりの実力の持ち主なのだろう
「そして、この世界の人間ではないというのは……言葉通りだ。私はこの世界ではない場所の出身だ。正確には魂だけがね」
魂……?この世界の住人ではない……
私はある仮説に至り目を見開く
「……その様子だと、どうやら分かったみたいだね。私には別の世界で生きた人間としての記憶がある。それは伊織も同じ。私達は転生者だ」
要するに、私と同じだという事だ
まさか、自分と同じく転生した人間に会うことができるとは……
「私はこの現象を転生と呼んでいる。まあ、そのままだね。そして転生について研究してきた」
私はゴクリと生唾を飲み込む
転生についての研究……私が前世の記憶を持っている理由も分かるのだろうか
「転生者と言うのはこれまでもいてね。私は師匠から転生の研究を受け継いだ。受け継いだ資料は情報の宝だったよ。私では到底知りえない内容も書いてあった。ただ、あくまで仮説でそれが正しいかは不明なのだけれどね」
瑞樹さんは淡々と話を続けていて、伊織さんはその後ろに控えている
その情報とは……一体何なのだろう
「さあ、ここまで聞いて質問はあるかい?」
そう尋ねてニヤッと口角を上げる瑞樹さん
ここまで聞いておいて質問をしないのはもったいない
それに……この人達は純粋に私に知識を与えようとしてくれているようだ
『はい。質問があります。それと……実は、お2人のことを怪しい人だと思って警戒していました。本当にすみません……』
私は頭を下げる
すると向かいからはクスクスという瑞樹さんの笑い声と「だから言っただろ!」という伊織さんの怒声に近い声が聞こえてきた
「ああ、すまない。頭を上げてくれ」
言われた通り、私は頭を上げる
それにしても、お2人は本当に仲が良いのだな……と思いながら質問をする
『まず、お2人は私が転生者だと知っていたのでしょうか?私のことを例の子と呼んでいたので……』
すると瑞樹さんは一瞬きょとんとした表情をする
しかしすぐに納得した表情になった
「私だけでは君が転生者だとは確信できなかったよ。恐らく礼儀正しい大人びた子供だとしか思わなかっただろうね」
確かに、仕草だけで転生者かどうかは分からないだろう
では一体何故分かったのだろうか
私が考えていると瑞樹さんは言葉を続ける
「ああ、不思議だろう。実は伊織のおかげなんだ」
伊織さんのおかげ?
本当にどういうことなのか分からなくなってきた
「転生者はね、その身に特別な力を宿して生まれるんだ。伊織は他の人と世界の見え方が違うんだよ。伊織、説明してあげなさい」
「分かったよ、父さん。それでですね……」
伊織さんが敬語で話し始めたので止めることにした
『その……年が近いようですし、敬語を外してもらって構いませんよ』
私がそう言うと伊織さんは少し耳を赤くしている
「あ、じゃあ(名前)さんも楽な言葉遣いでいいよ……」
そうして私と話すのを恥ずかしそうにしている
そんな伊織さんを見て瑞樹さんはニマニマしている
「楓ちゃん、ごめんよ~。こいつ、ずっと俺と2人きりだから女の子に耐性がないんだよ~」
おちゃらけて私にそう言う瑞樹さんを伊織さんはギロリと睨んでいる
しかしすぐに元の表情に戻り、私の方に向き直した
「こほん……じゃあ、改めて。俺の世界の見え方が違うのは正確には人に対してだけだ。俺は人の色が視える」
人の色とは何のことだろう
「上手く説明できないけど、その人の感情や魂が色となってその人の周りに浮かび上がっているように見えるんだ。それが俺の世界。オーラみたいなものかな」
オーラのようなもの……
何となく分かってきた気がする
「説明下手でごめん。俺の言いたいことは分かった?」
私はこくりと頷く
「それで、転生者とこの世界の住人の魂の色は全く違うんだ。だから俺は君が転生者だと分かったんだよ」
そう言うと、ふっと笑みを零す伊織さん
なるほど……特別な能力……
私にも何かあるのかもしれない
そう考えると少し心が躍る
『能力って……私にもあるのかしら』
私はポツリと零す
「転生者である以上、能力は持っているはずだよ。勿論、楓さんが能力を持たない特殊な転生者である可能性もあるけど……心当たりはない?」
私の疑問に答えてくれたのは伊織さんだ
心当たり……
そうだ、私の身体能力だ
はっきり言って、私のそれは尋常じゃない
そうでなければ鬼を倒せない
それでも……伊織さんは鬼の存在を知っているのだろうか
ここが恐らく漫画の世界であることを……信じてもらえるだろうか
私は俯いて考える
すると伊織さんが慌て始めた
「ご、ごめんなさい。事を早急に進めすぎたね……」
伊織さんはおろおろしていて、瑞樹さんはそんな彼をからかっている
……何だか、気が抜けてしまった
『いえ、大丈夫です……その、俄かには信じ難いかもしれませんが、聞いてくれますか』
私が少し固い声でそう言うと、お2人は真剣な面持ちで私に向き合った
こうして私は、藤宮さんに説明した時とは違い、包み隠さず全てを話した──────
──────
話し終えた後、部屋にはしばらく沈黙が続く
それもそうか
覚えている限りのことは全て話してしまった
前世の自分の死因から、これまでどうやって生活してきたのかも全部だ
引かれてしまわないだろうか
拒絶されるのが、怖い──────
そう考える私に伊織さんがこう言った
「……今まで、よく1人で耐えたね」
そう一言
私と伊織さんは少しの間、目を合わせて見つめ合っていた
そんな私達を瑞樹さんは変わらぬ表情で見守っている
「俺の身の上話で悪いんだけどさ──────」
そうして伊織さんが話してくれたのは、彼の過去だった
瑞樹さんはその向かいに座っている
『あ、私は時雨楓と言います』
一応自己紹介をする
「楓ちゃんだね。分かったよ。……さて、何から話そうか。質問はあるかい?」
質問……ここに来るまでは何もされなかった
しかし、この人達が悪人でないという証拠はどこにもない
自分から発言し、それがこの人達の気に障れば……
そうだ、危険に晒される可能性がある今、迂闊に質問はできない
『……特にありません』
平静を装い返事をする
「そうかい。じゃあまずは私達が何者なのかについて話そう」
そう言うと、瑞樹さんは資料を手に取り話し始めた
「私は一応医者でね。若い頃にこの病院を建てていて、それなりの地位があるんだ。伊織は私の跡継ぎだよ」
一代でここまで大きな病院を建てるとは……
きっとかなりの実力の持ち主なのだろう
「そして、この世界の人間ではないというのは……言葉通りだ。私はこの世界ではない場所の出身だ。正確には魂だけがね」
魂……?この世界の住人ではない……
私はある仮説に至り目を見開く
「……その様子だと、どうやら分かったみたいだね。私には別の世界で生きた人間としての記憶がある。それは伊織も同じ。私達は転生者だ」
要するに、私と同じだという事だ
まさか、自分と同じく転生した人間に会うことができるとは……
「私はこの現象を転生と呼んでいる。まあ、そのままだね。そして転生について研究してきた」
私はゴクリと生唾を飲み込む
転生についての研究……私が前世の記憶を持っている理由も分かるのだろうか
「転生者と言うのはこれまでもいてね。私は師匠から転生の研究を受け継いだ。受け継いだ資料は情報の宝だったよ。私では到底知りえない内容も書いてあった。ただ、あくまで仮説でそれが正しいかは不明なのだけれどね」
瑞樹さんは淡々と話を続けていて、伊織さんはその後ろに控えている
その情報とは……一体何なのだろう
「さあ、ここまで聞いて質問はあるかい?」
そう尋ねてニヤッと口角を上げる瑞樹さん
ここまで聞いておいて質問をしないのはもったいない
それに……この人達は純粋に私に知識を与えようとしてくれているようだ
『はい。質問があります。それと……実は、お2人のことを怪しい人だと思って警戒していました。本当にすみません……』
私は頭を下げる
すると向かいからはクスクスという瑞樹さんの笑い声と「だから言っただろ!」という伊織さんの怒声に近い声が聞こえてきた
「ああ、すまない。頭を上げてくれ」
言われた通り、私は頭を上げる
それにしても、お2人は本当に仲が良いのだな……と思いながら質問をする
『まず、お2人は私が転生者だと知っていたのでしょうか?私のことを例の子と呼んでいたので……』
すると瑞樹さんは一瞬きょとんとした表情をする
しかしすぐに納得した表情になった
「私だけでは君が転生者だとは確信できなかったよ。恐らく礼儀正しい大人びた子供だとしか思わなかっただろうね」
確かに、仕草だけで転生者かどうかは分からないだろう
では一体何故分かったのだろうか
私が考えていると瑞樹さんは言葉を続ける
「ああ、不思議だろう。実は伊織のおかげなんだ」
伊織さんのおかげ?
本当にどういうことなのか分からなくなってきた
「転生者はね、その身に特別な力を宿して生まれるんだ。伊織は他の人と世界の見え方が違うんだよ。伊織、説明してあげなさい」
「分かったよ、父さん。それでですね……」
伊織さんが敬語で話し始めたので止めることにした
『その……年が近いようですし、敬語を外してもらって構いませんよ』
私がそう言うと伊織さんは少し耳を赤くしている
「あ、じゃあ(名前)さんも楽な言葉遣いでいいよ……」
そうして私と話すのを恥ずかしそうにしている
そんな伊織さんを見て瑞樹さんはニマニマしている
「楓ちゃん、ごめんよ~。こいつ、ずっと俺と2人きりだから女の子に耐性がないんだよ~」
おちゃらけて私にそう言う瑞樹さんを伊織さんはギロリと睨んでいる
しかしすぐに元の表情に戻り、私の方に向き直した
「こほん……じゃあ、改めて。俺の世界の見え方が違うのは正確には人に対してだけだ。俺は人の色が視える」
人の色とは何のことだろう
「上手く説明できないけど、その人の感情や魂が色となってその人の周りに浮かび上がっているように見えるんだ。それが俺の世界。オーラみたいなものかな」
オーラのようなもの……
何となく分かってきた気がする
「説明下手でごめん。俺の言いたいことは分かった?」
私はこくりと頷く
「それで、転生者とこの世界の住人の魂の色は全く違うんだ。だから俺は君が転生者だと分かったんだよ」
そう言うと、ふっと笑みを零す伊織さん
なるほど……特別な能力……
私にも何かあるのかもしれない
そう考えると少し心が躍る
『能力って……私にもあるのかしら』
私はポツリと零す
「転生者である以上、能力は持っているはずだよ。勿論、楓さんが能力を持たない特殊な転生者である可能性もあるけど……心当たりはない?」
私の疑問に答えてくれたのは伊織さんだ
心当たり……
そうだ、私の身体能力だ
はっきり言って、私のそれは尋常じゃない
そうでなければ鬼を倒せない
それでも……伊織さんは鬼の存在を知っているのだろうか
ここが恐らく漫画の世界であることを……信じてもらえるだろうか
私は俯いて考える
すると伊織さんが慌て始めた
「ご、ごめんなさい。事を早急に進めすぎたね……」
伊織さんはおろおろしていて、瑞樹さんはそんな彼をからかっている
……何だか、気が抜けてしまった
『いえ、大丈夫です……その、俄かには信じ難いかもしれませんが、聞いてくれますか』
私が少し固い声でそう言うと、お2人は真剣な面持ちで私に向き合った
こうして私は、藤宮さんに説明した時とは違い、包み隠さず全てを話した──────
──────
話し終えた後、部屋にはしばらく沈黙が続く
それもそうか
覚えている限りのことは全て話してしまった
前世の自分の死因から、これまでどうやって生活してきたのかも全部だ
引かれてしまわないだろうか
拒絶されるのが、怖い──────
そう考える私に伊織さんがこう言った
「……今まで、よく1人で耐えたね」
そう一言
私と伊織さんは少しの間、目を合わせて見つめ合っていた
そんな私達を瑞樹さんは変わらぬ表情で見守っている
「俺の身の上話で悪いんだけどさ──────」
そうして伊織さんが話してくれたのは、彼の過去だった