第1章 決意と旅立ち
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
時透家の皆様との交流の翌日
現在、私は無一郎くんたちに見送られている
「ねえさん……またあそびにきてね」
先程から無一郎くんはずっと私にくっついている
『ええ、勿論』
無一郎くんを抱きしめ返し、返事をする
「さみしいけど……たび、きをつけてね」
今にも泣きだしそうな顔でそう言われる
私は無一郎くんの頭をそっと撫でる
『私も寂しいわ。今度はもっと一緒に遊びましょう。約束よ』
私がそう言うと無一郎くんの表情は明るいものへと変わる
「ほんと!?」
『本当よ』
私がそう微笑みながら返すと無一郎くんは輝く笑顔を返してくれた
「むいちろう、それくらいにしておけ。楓さん、ほんとうにありがとうございました」
一方の有一郎くんは礼儀正しく私にお礼を言ってくれている
「いえ、こちらこそ。昨日は本当にお世話になったわ。ありがとうございます」
有一郎くん達に向けてそう返す
奥様と旦那様にもそれぞれ激励の言葉を頂き、私は時透家を発った──────
──────
それからしばらくはひたすら鬼を狩る日々続いた
まだ慣れないことは多いが、1人でも生活はできている
ただ最近は便利屋の仕事だけでは懐に余裕がない為、猟師の真似事のようなことをしている
今日は気分転換をする為に、街へ繰り出すつもりだ
お金に余裕があるので甘味を食べる予定だ
何を食べようか考えながら歩いていると、突然腕を掴まれた
高級そうな服に身を包んだ壮年の男性だ
丸い眼鏡をかけている
一体どうしたのだろうか
『その……私に何か御用が……?』
そう言うと後ろから少年がやって来た
こちらの少年も高級そうな着物を身にまとっている
「父さん、置いてくなよ……というか女の子の腕を掴むな!」
どうやらこちらの壮年の男性は少年の父親らしい
すると男性は私の腕から手を離し、少年の方を向いた
私は2人の様子を窺う
「この子は、例の子なんだろう!?それなら早く話を聞かないと……!」
「父さんはせっかちすぎるんだよ!物事には順序があるだろ!急に知らないおじさんに腕を掴まれたら誰だって嫌に決まってるじゃないか!」
私を無視して言い合いを始めている
最早、私は空気だ
「って、それよりも!」
少年は言い合いをやめて私の方を向いた
「父が申し訳ありません……腕は大丈夫ですか?」
謝罪をして、親切に腕のことを聞いてくれた
『ええ、私は平気です。ご心配ありがとうございます』
私はそう返す
……それにしても、この人達は私のことを例の子と言っていた
彼らは一体何者なのだろうか
私は訝し気に尋ねる
『その……先程の会話が全て聞こえていまして……例の子とは何のことでしょうか?』
少し低めの声が出た
まさか、白昼堂々人攫いをするわけではないだろうし……
いや、そのまさかなのか?
そう思考を巡らせていると少年の方が声を上げる
「父さん……俺達、思いっきり誤解されてるぞ。多分変人だと思われてるだろうな。どうするんだよ」
そう男性に向かって呟いている
「そう言われても……お前はすぐついてきてくれただろう?」
お前は?一体何の話をしているのだろう
そして、彼らはこっそり相談しているつもりのようだ
しかし、私は耳が良いので全て筒抜けである
「俺とこの女の子じゃ、境遇が違うだろ!俺は父さんについていくしかなかったんだ」
ついていく……この少年は元々男性の実の息子ではないという事だろうか
ということは、この男性は子供を拾って育てているのだろうか
これでも身なりは整えているつもりだが、私を孤児だと勘違いしたのかもしれない
『その……とりあえず私に何か用事があるなら言ってください。ないなら私はもう行きます』
私は彼らにそう言った
すると男性の方は焦り始める
「待ってくれ、1つ、1つで良いから質問に答えてくれ」
見た目は好印象だが中身はかなり子供っぽい人だ
いや、大人にこんなことを感じるのは失礼なのだけれど、そう思ってしまう
むしろあの少年の方が精神年齢は高そうだ
そう考えていると、例の質問をされる
「お嬢さんは〝転生〟を信じているかい?いや、正確にはこの世界でないものの記憶を持っていないかね」
その言葉を発した途端、男性の雰囲気が急に変わった
その深い青色の瞳はどこまでも穏やかで、例えるならば水面のよう
その瞳で見つめられると、まるで、全てを見透かされているような……そんな気分になる
穏やかでありながらも隙を感じさせない男性
この空気に飲まれたら、私の口は真実を零すだろう
確かに、私には前世の記憶はある
でもこの男性は怪しい
藤宮さんにすら言っていない前世のことを、こんな男性に教えるわけにはいかない
私は男性を負けじと睨みつける
『それを聞いて、何になるのでしょうか。たとえ心当たりがあっても、私は言いませんよ』
私は男性に向かってそう言い放った
少しの間沈黙が続く
緊張で冷汗が流れてくる
そんな中、突然男性が笑い出した
「ははは……勇敢なお嬢さんだ。そうだね、こんな怪しい輩には何も言えないよな」
急にそう呟きだす
それにしても怪しい輩とは……自分で認めてしまうのか
「ならば、こちらから挨拶しなければいけないね」
そう言うと、男性は自己紹介を始めた
「私は瑞樹柏陽。医者をやっている。こっちは息子の伊織。そして私達は……元々この世界の人間ではない」
この世界の人間ではない……?
「お嬢さんに何の心当たりがないならばここで帰ってもらっても構わない。それでも……少しでも気になることがあるのなら、私達の手を取ってみないかい?」
そして左手を私に向かって差し出してくる
少年……伊織さんはそんな私達を複雑そうな表情で見ている
どうする?この手を取ってしまう?
前世の記憶……私はずっとひっかかっていた
何故、全てを思い出せないのか
どうして私は記憶を持っているのか
安全を取るか、好奇心を満たすか……
思考を巡らせ、私は男性の手を取った
今の私は強い
もし危ない目に遭ったら、この力を使って逃げれば良い
私が男性……瑞樹さんの手を取ると、彼の雰囲気は元に戻った
「良かったな、伊織!友達ができたぞ!」
私の手を握ったまま、息子である伊織さんの方を向いて喋っている
「……父さん、いつまで女の子の手を握ってるんだよ。気まずそうにしてるじゃないか。あと、その子は俺と友達になるとは一言も言ってないぞ!」
そんな伊織さんは私の心の内を代弁してくれている
うん、伊織さんとは気が合いそうだ
「おっと……これは失礼、お嬢さん」
そう言うと、ぱっと私から手を離した
「それじゃあ、話をしようか。ひとまず私の職場に行こう」
瑞樹さんは怪し気に笑う
伊織さんはそんな彼の頭を軽く叩いた
「その笑顔、わざとだろ。そんな笑顔見たら皆怖がるに決まってるだろうが!」
「え~だって、こういう怪しい笑顔ってなんかかっこいいじゃんか!伊織は分かってないな~」
話をする場へ向かう道中、ずっと言い合いをしている
私はそんな彼らについていく
何度も思ったが、私は最早空気だ
そう考えていると、瑞樹さんの職場に着いた
レンガ造りの広々とした建物だ
どうやら今日は病院は休みのようだ
それにしても、瑞樹さんは開業医だったのか
「さあ、入って入って!」
瑞樹さんに建物の中へ入るよう促される
『お邪魔します』
中も見た目通り広々としていて清潔だ
その後、瑞樹さんの書斎へと案内された
現在、私は無一郎くんたちに見送られている
「ねえさん……またあそびにきてね」
先程から無一郎くんはずっと私にくっついている
『ええ、勿論』
無一郎くんを抱きしめ返し、返事をする
「さみしいけど……たび、きをつけてね」
今にも泣きだしそうな顔でそう言われる
私は無一郎くんの頭をそっと撫でる
『私も寂しいわ。今度はもっと一緒に遊びましょう。約束よ』
私がそう言うと無一郎くんの表情は明るいものへと変わる
「ほんと!?」
『本当よ』
私がそう微笑みながら返すと無一郎くんは輝く笑顔を返してくれた
「むいちろう、それくらいにしておけ。楓さん、ほんとうにありがとうございました」
一方の有一郎くんは礼儀正しく私にお礼を言ってくれている
「いえ、こちらこそ。昨日は本当にお世話になったわ。ありがとうございます」
有一郎くん達に向けてそう返す
奥様と旦那様にもそれぞれ激励の言葉を頂き、私は時透家を発った──────
──────
それからしばらくはひたすら鬼を狩る日々続いた
まだ慣れないことは多いが、1人でも生活はできている
ただ最近は便利屋の仕事だけでは懐に余裕がない為、猟師の真似事のようなことをしている
今日は気分転換をする為に、街へ繰り出すつもりだ
お金に余裕があるので甘味を食べる予定だ
何を食べようか考えながら歩いていると、突然腕を掴まれた
高級そうな服に身を包んだ壮年の男性だ
丸い眼鏡をかけている
一体どうしたのだろうか
『その……私に何か御用が……?』
そう言うと後ろから少年がやって来た
こちらの少年も高級そうな着物を身にまとっている
「父さん、置いてくなよ……というか女の子の腕を掴むな!」
どうやらこちらの壮年の男性は少年の父親らしい
すると男性は私の腕から手を離し、少年の方を向いた
私は2人の様子を窺う
「この子は、例の子なんだろう!?それなら早く話を聞かないと……!」
「父さんはせっかちすぎるんだよ!物事には順序があるだろ!急に知らないおじさんに腕を掴まれたら誰だって嫌に決まってるじゃないか!」
私を無視して言い合いを始めている
最早、私は空気だ
「って、それよりも!」
少年は言い合いをやめて私の方を向いた
「父が申し訳ありません……腕は大丈夫ですか?」
謝罪をして、親切に腕のことを聞いてくれた
『ええ、私は平気です。ご心配ありがとうございます』
私はそう返す
……それにしても、この人達は私のことを例の子と言っていた
彼らは一体何者なのだろうか
私は訝し気に尋ねる
『その……先程の会話が全て聞こえていまして……例の子とは何のことでしょうか?』
少し低めの声が出た
まさか、白昼堂々人攫いをするわけではないだろうし……
いや、そのまさかなのか?
そう思考を巡らせていると少年の方が声を上げる
「父さん……俺達、思いっきり誤解されてるぞ。多分変人だと思われてるだろうな。どうするんだよ」
そう男性に向かって呟いている
「そう言われても……お前はすぐついてきてくれただろう?」
お前は?一体何の話をしているのだろう
そして、彼らはこっそり相談しているつもりのようだ
しかし、私は耳が良いので全て筒抜けである
「俺とこの女の子じゃ、境遇が違うだろ!俺は父さんについていくしかなかったんだ」
ついていく……この少年は元々男性の実の息子ではないという事だろうか
ということは、この男性は子供を拾って育てているのだろうか
これでも身なりは整えているつもりだが、私を孤児だと勘違いしたのかもしれない
『その……とりあえず私に何か用事があるなら言ってください。ないなら私はもう行きます』
私は彼らにそう言った
すると男性の方は焦り始める
「待ってくれ、1つ、1つで良いから質問に答えてくれ」
見た目は好印象だが中身はかなり子供っぽい人だ
いや、大人にこんなことを感じるのは失礼なのだけれど、そう思ってしまう
むしろあの少年の方が精神年齢は高そうだ
そう考えていると、例の質問をされる
「お嬢さんは〝転生〟を信じているかい?いや、正確にはこの世界でないものの記憶を持っていないかね」
その言葉を発した途端、男性の雰囲気が急に変わった
その深い青色の瞳はどこまでも穏やかで、例えるならば水面のよう
その瞳で見つめられると、まるで、全てを見透かされているような……そんな気分になる
穏やかでありながらも隙を感じさせない男性
この空気に飲まれたら、私の口は真実を零すだろう
確かに、私には前世の記憶はある
でもこの男性は怪しい
藤宮さんにすら言っていない前世のことを、こんな男性に教えるわけにはいかない
私は男性を負けじと睨みつける
『それを聞いて、何になるのでしょうか。たとえ心当たりがあっても、私は言いませんよ』
私は男性に向かってそう言い放った
少しの間沈黙が続く
緊張で冷汗が流れてくる
そんな中、突然男性が笑い出した
「ははは……勇敢なお嬢さんだ。そうだね、こんな怪しい輩には何も言えないよな」
急にそう呟きだす
それにしても怪しい輩とは……自分で認めてしまうのか
「ならば、こちらから挨拶しなければいけないね」
そう言うと、男性は自己紹介を始めた
「私は瑞樹柏陽。医者をやっている。こっちは息子の伊織。そして私達は……元々この世界の人間ではない」
この世界の人間ではない……?
「お嬢さんに何の心当たりがないならばここで帰ってもらっても構わない。それでも……少しでも気になることがあるのなら、私達の手を取ってみないかい?」
そして左手を私に向かって差し出してくる
少年……伊織さんはそんな私達を複雑そうな表情で見ている
どうする?この手を取ってしまう?
前世の記憶……私はずっとひっかかっていた
何故、全てを思い出せないのか
どうして私は記憶を持っているのか
安全を取るか、好奇心を満たすか……
思考を巡らせ、私は男性の手を取った
今の私は強い
もし危ない目に遭ったら、この力を使って逃げれば良い
私が男性……瑞樹さんの手を取ると、彼の雰囲気は元に戻った
「良かったな、伊織!友達ができたぞ!」
私の手を握ったまま、息子である伊織さんの方を向いて喋っている
「……父さん、いつまで女の子の手を握ってるんだよ。気まずそうにしてるじゃないか。あと、その子は俺と友達になるとは一言も言ってないぞ!」
そんな伊織さんは私の心の内を代弁してくれている
うん、伊織さんとは気が合いそうだ
「おっと……これは失礼、お嬢さん」
そう言うと、ぱっと私から手を離した
「それじゃあ、話をしようか。ひとまず私の職場に行こう」
瑞樹さんは怪し気に笑う
伊織さんはそんな彼の頭を軽く叩いた
「その笑顔、わざとだろ。そんな笑顔見たら皆怖がるに決まってるだろうが!」
「え~だって、こういう怪しい笑顔ってなんかかっこいいじゃんか!伊織は分かってないな~」
話をする場へ向かう道中、ずっと言い合いをしている
私はそんな彼らについていく
何度も思ったが、私は最早空気だ
そう考えていると、瑞樹さんの職場に着いた
レンガ造りの広々とした建物だ
どうやら今日は病院は休みのようだ
それにしても、瑞樹さんは開業医だったのか
「さあ、入って入って!」
瑞樹さんに建物の中へ入るよう促される
『お邪魔します』
中も見た目通り広々としていて清潔だ
その後、瑞樹さんの書斎へと案内された