その他
「ねえボンゴレ」
人の部屋に勝手に入り込んで来て、あまつさえ俺の神聖なるベッドに腰掛けてるあいつを蹴り飛ばしたい衝動に駆られる。
でもダメだ!
だって中身はドロドロしてる骸でも、外見は可愛い綺麗な髑髏なんだから。
女の子は大切にしなくてはいけませんよ。と大人ランボが言っていたことが頭を霞める。そうだ女の子には優しくしなくちゃ。
たとえ中身がムカツク骸だったとしても!
「ねえ。ボンゴレ」
俺を呼ぶ声が再び聞こえる。
それを無視する度に、リボーンの教育でついてしまったフェミニスト精神が俺の良心をちくりと刺す。
落ち着け俺。髑髏の姿をした骸なのだ!
そんな俺の葛藤など露知らず、先ほどと同じ様な声で、同じ台詞を口にする。
「…なんだよ」
やたらと人の肩書きを連呼するので仕方なく返事をやると、少し驚いていた。
ああ、こいつは最初に比べて随分表情が軟らかになったな。と思う。
でもどうやらそれを理解できるのは俺だけのようで。
前に獄寺君に同じ様なことを言うと、訝しげな顔をされた。
「僕はもうすぐ消えます。」
そんな俺の思考は、骸の声によって妨げられた
「あっそう」
「二度と会う事は無いでしょう」
「……はあ?何それ。どういう事?」
「ちょっと最後にお願いがあるんです。」
俺の質問は無視か。
それでも返事をした手前、無視する事は出来ないし、したくない。
「……何?」
「殺して下さい。」
まるで日常会話をしている様な何でもない口振りで放たれた言葉は、俺の常識のはるか斜め上をいくような言葉だった。
「嫌だよ」
反射的に返す。
最後のお願いだと言うから、お金が沢山必要になっても叶えてやろう。という俺の男らしい決意は一瞬のうちに無くなった。
「経済的負担ゼロで細やかな願い事を断るのは何故ですか?」
不満げに眉を寄せる姿に、俺は声を荒げて言った。
「当たり前だ!お金がかからないのは個人的に嬉しいけど、人殺しなんかお断りだ!大体……」
「大体?」
「お前死んじゃったら、髑髏どうなるんだよ?」
「死ぬでしょうね。僕らは二人で一人です。運命共同体ですよ」
「……その運命共同体についてはスルーするよ。つーか、髑髏の意志はどうなってんだよ!」
「骸様が望むなら…と。了承済みです」
「巻き込むのか?」
「巻き込まざるを得ない、ですかね」
「だったら死ななきゃいい!」
「でも、疲れました」
その一言に恐る恐る顔色を伺うと、穏やかな笑みを返される。
こんな骸は見た事が無い。知らない顔をしている。
「……何、に?」
それを言うだけなのにからからの喉と、ばくばくと煩い心臓に泣きたくなる。
「全てに」
余りにも短い、そして簡潔な答え。
それでも俺に骸のおかしな状態を知らせるには十分だった。
「言っただろ。人殺しにはなりたくない」
「君は背負わなければならない」
「何を」
「命の重みを」
なんかこいつ電波っぽい。いや元からやばかったけど。
俺が押し黙っていると、骸は目を細めて笑った。
急に立ち上げって俺の腕を掴んだかと思うと、そのまま後ろに倒れこんだ。
二人分の重みを受けて、パイプベッドがぎしり、と耳障りな音を立てる。
俺の手は骸によって首へと回されている。
「何で?」
主語の無い問いかけ。それでも骸は答えた。
「貴方には憎まれている僕の方が殺りやすいでしょう?」
「憎んでるって……」
「僕がした事を、忘れてはいけません」
さあ、と促される。
が、手に力は入れなかった。当たり前だ。
そんな俺を、青い眼が見つめる。
その色にじっとりと嫌な汗をかいた。
すると今迄ただ首に添えていただけの手が徐々に絞まっていく。
呆然とする俺を尻目に笑う瞬間に、右目がまるで熱を持ったかの様に赤く見えた。
「……骸っ、お前……!」
気付いた時にはもう遅い。
自身の言う事を聞かずに握力を込める。
ぐ、とくぐもった声を出したのは俺か、骸か。
骸の唇が動く。声にはならない。
「 」
俺は固く固く目をつぶった。
これ以上何も見ないように。
ひゅっと空気を吸う音がして、その後に咳き込んでいるのが聞こえた。
「………あ」
骸は生きていた。急激に入った酸素の為か、未だに咳を続けているが。
「……良かっ、た」
緊張の糸が切れたのだろうか。俺の両腕はあいも変わらず骸の首に手を掛けたまま動かない。
「……良くないですよ。死にそびれちゃいました」
「……その方が、ずっと良いよ」
ふう、と深呼吸して骸の隣へ倒れ混む。
驚くほど顔が近い。
ゆっくりと頬に手を伸ばしてみると温かい体温が伝わる。
「……どうかしましたか?」
「俺は、人殺しに、なりたく、ない。」
そう言って俯いた俺を、骸は何も言わず背中を撫でた。
人の部屋に勝手に入り込んで来て、あまつさえ俺の神聖なるベッドに腰掛けてるあいつを蹴り飛ばしたい衝動に駆られる。
でもダメだ!
だって中身はドロドロしてる骸でも、外見は可愛い綺麗な髑髏なんだから。
女の子は大切にしなくてはいけませんよ。と大人ランボが言っていたことが頭を霞める。そうだ女の子には優しくしなくちゃ。
たとえ中身がムカツク骸だったとしても!
「ねえ。ボンゴレ」
俺を呼ぶ声が再び聞こえる。
それを無視する度に、リボーンの教育でついてしまったフェミニスト精神が俺の良心をちくりと刺す。
落ち着け俺。髑髏の姿をした骸なのだ!
そんな俺の葛藤など露知らず、先ほどと同じ様な声で、同じ台詞を口にする。
「…なんだよ」
やたらと人の肩書きを連呼するので仕方なく返事をやると、少し驚いていた。
ああ、こいつは最初に比べて随分表情が軟らかになったな。と思う。
でもどうやらそれを理解できるのは俺だけのようで。
前に獄寺君に同じ様なことを言うと、訝しげな顔をされた。
「僕はもうすぐ消えます。」
そんな俺の思考は、骸の声によって妨げられた
「あっそう」
「二度と会う事は無いでしょう」
「……はあ?何それ。どういう事?」
「ちょっと最後にお願いがあるんです。」
俺の質問は無視か。
それでも返事をした手前、無視する事は出来ないし、したくない。
「……何?」
「殺して下さい。」
まるで日常会話をしている様な何でもない口振りで放たれた言葉は、俺の常識のはるか斜め上をいくような言葉だった。
「嫌だよ」
反射的に返す。
最後のお願いだと言うから、お金が沢山必要になっても叶えてやろう。という俺の男らしい決意は一瞬のうちに無くなった。
「経済的負担ゼロで細やかな願い事を断るのは何故ですか?」
不満げに眉を寄せる姿に、俺は声を荒げて言った。
「当たり前だ!お金がかからないのは個人的に嬉しいけど、人殺しなんかお断りだ!大体……」
「大体?」
「お前死んじゃったら、髑髏どうなるんだよ?」
「死ぬでしょうね。僕らは二人で一人です。運命共同体ですよ」
「……その運命共同体についてはスルーするよ。つーか、髑髏の意志はどうなってんだよ!」
「骸様が望むなら…と。了承済みです」
「巻き込むのか?」
「巻き込まざるを得ない、ですかね」
「だったら死ななきゃいい!」
「でも、疲れました」
その一言に恐る恐る顔色を伺うと、穏やかな笑みを返される。
こんな骸は見た事が無い。知らない顔をしている。
「……何、に?」
それを言うだけなのにからからの喉と、ばくばくと煩い心臓に泣きたくなる。
「全てに」
余りにも短い、そして簡潔な答え。
それでも俺に骸のおかしな状態を知らせるには十分だった。
「言っただろ。人殺しにはなりたくない」
「君は背負わなければならない」
「何を」
「命の重みを」
なんかこいつ電波っぽい。いや元からやばかったけど。
俺が押し黙っていると、骸は目を細めて笑った。
急に立ち上げって俺の腕を掴んだかと思うと、そのまま後ろに倒れこんだ。
二人分の重みを受けて、パイプベッドがぎしり、と耳障りな音を立てる。
俺の手は骸によって首へと回されている。
「何で?」
主語の無い問いかけ。それでも骸は答えた。
「貴方には憎まれている僕の方が殺りやすいでしょう?」
「憎んでるって……」
「僕がした事を、忘れてはいけません」
さあ、と促される。
が、手に力は入れなかった。当たり前だ。
そんな俺を、青い眼が見つめる。
その色にじっとりと嫌な汗をかいた。
すると今迄ただ首に添えていただけの手が徐々に絞まっていく。
呆然とする俺を尻目に笑う瞬間に、右目がまるで熱を持ったかの様に赤く見えた。
「……骸っ、お前……!」
気付いた時にはもう遅い。
自身の言う事を聞かずに握力を込める。
ぐ、とくぐもった声を出したのは俺か、骸か。
骸の唇が動く。声にはならない。
「 」
俺は固く固く目をつぶった。
これ以上何も見ないように。
ひゅっと空気を吸う音がして、その後に咳き込んでいるのが聞こえた。
「………あ」
骸は生きていた。急激に入った酸素の為か、未だに咳を続けているが。
「……良かっ、た」
緊張の糸が切れたのだろうか。俺の両腕はあいも変わらず骸の首に手を掛けたまま動かない。
「……良くないですよ。死にそびれちゃいました」
「……その方が、ずっと良いよ」
ふう、と深呼吸して骸の隣へ倒れ混む。
驚くほど顔が近い。
ゆっくりと頬に手を伸ばしてみると温かい体温が伝わる。
「……どうかしましたか?」
「俺は、人殺しに、なりたく、ない。」
そう言って俯いた俺を、骸は何も言わず背中を撫でた。