その他
「ねっ。ひかるちゃんにプレゼントしたからプレイしてよ~」
机の上に表示させた液晶パネルから女性の声が流れている。
「……このゲーム、そんなにおもしろいの?」
「おもしろいよ! たぶん!」
明るい返事。
だがその中身のなさに、久嶋ひかるは軽く息を吐いた。
パネルに写るのは、彼女の姉--久嶋詩奈だ。
「でも、なんでゲーム?」
「だって、ひかるちゃん出かけてくれるけどいっつも私ばっかり買うじゃない。それに、服選びのなにがいいかわからないって言うし……」
「それは……」
「最近一緒にでかけてもくれないし」
わずかに頬を膨らませた映像を見てぼんやりと、ああお姉ちゃん可愛いなあ。と思う。
お姉ちゃんが可愛いから、一緒に歩くのが嫌なんだよ。とは、いえない。
「だから、ゲームで慣れてこ! ね!」
ぱっと笑顔を浮かべると「お姉ちゃん待ってるからね!」と続ける。
「ひかるちゃん昔お人形遊び一緒にしてたし、絶対おもしろいと思うから!」
「あ、ちょっと!」
引き留めようと思わず身を乗り出すが、詩奈はその慌てぶりを気にせず手を振って通話を終わらせてしまった。
今度こそ大きなため息をつき、椅子の背もたれにぐっと背を押しつける。
ちらりと机のはしに目をやった。そこに置かれている小包は破られていて、中身はベッドの上に置かれていた。
最新のフルダイブゲームデバイスとソフトのパッケージ。
最初送られてきたときは、ゲームに関心の無い姉からなぜこれが?と首を傾げたが、パッケージをしげしげと眺めて納得がいった。
洋服を選んでいる、少女漫画よりは年齢が高そうな女性のイラスト。
「ファッションドリーマー」と書かれている。
「ジャンル違いにもほどがある……」
ダウンロード販売が主流の今、パッケージはもはやゲーマーのコレクターアイテムとなっている。当然マニュアルなどついているはずもなく、ひかるはネットでゲームを調べた。
てっきり詩奈のような普段ゲームをやらなさそうなタイプに向けたコミュニケーション重視のゲームかと思ったが、思いの外様々な層に人気があった。
彼女が使っているSNSでは実際のブランドとコラボしたことを喜ぶ人、自分を模したアバターで洋服を試着して購入したりと現実と同じ使い方をしているといった印象だ。
ひかるが使用しているSNSではもっぱら推しを再現した、というスクリーンショットが多く見られた。
開発陣がどういった層を想定していたのかはわからないが、どちらにせよ好意的に遊ばれているようだ。
いつかはこのゲーム機がほしいと思っていたが、まさかタダもらえるとは。興味のないゲームもついてきてしまったが。
わざわざお金を出して買って送ってくれたのだ。
あまり文句も言えない。
楽しめると良いけど……。
と少しの不安を胸に、ひかるはマニュアルを見ながら機器の設定していき、電源をつけた。
机の上に表示させた液晶パネルから女性の声が流れている。
「……このゲーム、そんなにおもしろいの?」
「おもしろいよ! たぶん!」
明るい返事。
だがその中身のなさに、久嶋ひかるは軽く息を吐いた。
パネルに写るのは、彼女の姉--久嶋詩奈だ。
「でも、なんでゲーム?」
「だって、ひかるちゃん出かけてくれるけどいっつも私ばっかり買うじゃない。それに、服選びのなにがいいかわからないって言うし……」
「それは……」
「最近一緒にでかけてもくれないし」
わずかに頬を膨らませた映像を見てぼんやりと、ああお姉ちゃん可愛いなあ。と思う。
お姉ちゃんが可愛いから、一緒に歩くのが嫌なんだよ。とは、いえない。
「だから、ゲームで慣れてこ! ね!」
ぱっと笑顔を浮かべると「お姉ちゃん待ってるからね!」と続ける。
「ひかるちゃん昔お人形遊び一緒にしてたし、絶対おもしろいと思うから!」
「あ、ちょっと!」
引き留めようと思わず身を乗り出すが、詩奈はその慌てぶりを気にせず手を振って通話を終わらせてしまった。
今度こそ大きなため息をつき、椅子の背もたれにぐっと背を押しつける。
ちらりと机のはしに目をやった。そこに置かれている小包は破られていて、中身はベッドの上に置かれていた。
最新のフルダイブゲームデバイスとソフトのパッケージ。
最初送られてきたときは、ゲームに関心の無い姉からなぜこれが?と首を傾げたが、パッケージをしげしげと眺めて納得がいった。
洋服を選んでいる、少女漫画よりは年齢が高そうな女性のイラスト。
「ファッションドリーマー」と書かれている。
「ジャンル違いにもほどがある……」
ダウンロード販売が主流の今、パッケージはもはやゲーマーのコレクターアイテムとなっている。当然マニュアルなどついているはずもなく、ひかるはネットでゲームを調べた。
てっきり詩奈のような普段ゲームをやらなさそうなタイプに向けたコミュニケーション重視のゲームかと思ったが、思いの外様々な層に人気があった。
彼女が使っているSNSでは実際のブランドとコラボしたことを喜ぶ人、自分を模したアバターで洋服を試着して購入したりと現実と同じ使い方をしているといった印象だ。
ひかるが使用しているSNSではもっぱら推しを再現した、というスクリーンショットが多く見られた。
開発陣がどういった層を想定していたのかはわからないが、どちらにせよ好意的に遊ばれているようだ。
いつかはこのゲーム機がほしいと思っていたが、まさかタダもらえるとは。興味のないゲームもついてきてしまったが。
わざわざお金を出して買って送ってくれたのだ。
あまり文句も言えない。
楽しめると良いけど……。
と少しの不安を胸に、ひかるはマニュアルを見ながら機器の設定していき、電源をつけた。
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