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その他

時計の針も深夜一時を回ろうとする遅い時間にも関わらず、誰も自室で寝ようとせず各々好きなことをしながら時間を潰していた。
メイコは小さなテーブルをリビングの中央に置いて、いつもと同じく酒を飲む。
カイトはそのお酌をしている。
リンは寝転んだままテレビに釘付けになり、ミクは時折舟を漕ぎながらも、リンと同じくテレビを見つめている。
リン達にソファを奪われたレンは、クッションを身体に挟み、一人本を読む。
どれぐらいそうしていただろうか。
不意に、鍵を回す音が聞こえた。

「マスター、帰って来たー…」
体を起こし、眠い目を擦りながらミクは玄関へととことこ歩いて行く。
「ただいまー」
「お帰りなさい、マスター」
「お帰りっすー」
「お疲れ様」
「オカエリナサイ」
幾分か疲れた表情を滲ませる慶介に、性格がでる迎え方をした。
「ほら、お前ら一ヶ月お疲れさん。土産だ」
そう言うと紙袋をテーブルの上へ置く。

「うわ、今回は何すか?」
寝転がりテレビを見ていたリンが、嬉しそうに声を上げながら紙袋を漁る
が、声を張り上げた。
「っつーか、わたしのどれっすかー? しかもなんかいつもより多くないっすか。何で?」
慶介は缶ビールのプルトップを開けながら答える
「えーとな、カプセルがあるだろ?それの青いほうだよ」
目当てのものを見つけたのだろう。
リンが歓声を上げてそのカプセルを開けた。
「またダブリっすよ……」
「まあ、そういう日もあるだろ」
「これ、5個目っすよ。マスタークジ運悪いんじゃないっすか?」
「うっせー。俺にケチつけんな」

「ねえ、マスター私のはー?」
空になったであろう瓶を振り回しつつ、上機嫌にメイコは聞いた。
「メイコにはこれな」
取り出したものを放り投げる。難なくそれを受け取ったメイコは、パッケージを見て少々不満げな声を上げた。
「なーに、またこの商品?」
「それは俺も好きなんだよ、つまみにも良いし。何より安い!」
「安いけど、中身すっかすかじゃない。ま、この際贅沢は言わないけど……」
そう言うとぱん、と軽快な音を立てて袋を破り、食べ始めた。

「マスター、俺のは?」
ぱたんと小さな音を本を閉じると、振り返って聞く。
「あー、言われた通りにタイトルだけで選んだが、こんな選び方で良いのか? それに古本だし」
そう言いながら、レンへ本を手渡した。
視線を本へと落として、ぱらぱらとめくりながら答える。
「タイトルだけで惹かれる本ってあるからさ。あと、本なんか新刊で買ったら高いだろ」
「ま、俺はお前が良いなら何も言わないけどさ……
はい、出迎えご苦労さん。ミクにはこれだ」
「ふぁ……マスター、ありがとー」
堪えきれず欠伸をしながらお礼を言うミクの頭を乱暴に撫でる。

「ほら、カイト、こっち来い」
手招きをされて、慶介の近くへと歩み寄る。
「手、出せ」
「……」
言われたままに手を出すと、そこに袋を置かれた。
「それやる。食え」
「あーっ、カイト兄、ずるい!アイスだー!」
リンが自分のカプセル放り出して傍による。
「……アイス」
「うん、アイスっす。カイト兄アイス食べたことないっすか?」
「……ナイデス」
「じゃあ、いい機会じゃないっすか。ちょうど今暑いし、アイスがおいしい季節っすよー」
にこにこと嬉しそうにするリンに促され、もそもそとアイスを租借する。
「美味いか、カイト?」
「……ウマイ トハ」
「美味しいかってことだよ。美味しいってのは……そうだなあ……美味しいってのは……」
そういって呻りだした慶介を一瞥して、レンが口を開いた。
「もう一度食べたくなる味かどうかってことじゃないの?」
「うーん、まあそんな感じかなあ……」
「で、カイト兄、どうっすか?」
「……オイシイ デス」
「よっしゃ!」
何故かガッツポーズをとる慶介を冷ややかに見つめるレン。
だが慶介がその視線に気づくことはなかった。

「そうだカイト、もうちょっとリンみたいに喋ってみないか?」
「……これ以上煩いのが増えると困るんだけど」
「ちょ、うるさいってなんすか! レン!」
「……言葉通りだよ」
そう言うとレンは再び読書へと没頭する。
そんなレンを見てリンは頬を膨らませるが、突然表情を変えた。
「……そうだ! 私がカイト兄の発音を教える先生ってのはどうっすか?」
「あぁ?」
「えー」
「ちょっ、何なんすか二人して。文句あるんっすか!」
苛立ちを隠さずに本格的に怒り始めるリンを見て、苦笑いで慶介は返す。
「いや、別に……」
「ただ、~~っすって口癖がうつらないようにしろよ」
「それはもうバッチりっす! 多分!
「……不安なんだけど」
「レンは黙ってて! ってことで、これからよろしくね!カイト兄!」
「……ヨロシク」
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