レン×カイト
最近になって急に冷え込んだんだ。
眠りから覚めて、レンは腹にかけられているタオルケットを見てぼんやりと思う。
「あ、レンくん。おはよー」
ひょっこりとミクが覗き込んで言った。
くくられたツインテールの先が顔に僅かにかかる。柔らかな感覚がくすぐったい。
「……おはよう。……今何時?」
「四時だよ。暗くなって来たから電気点けたの。多分、それで目が覚めちゃったんだねー」
二時間程眠り込んでいた様だ。リンが居たら何を言われるか。
「寝るか本読むかしかしないんすか?」
きっとこんな所だろう。自分の想像のリアルさに乾いた笑いを立て、ふと気づいた。
……リンが居たら?
「他の皆は?」
明かりが点いている所はリビングしかなく、他の部屋は暗い。
「お姉ちゃんとリンちゃんはマスターとお買い物に行ったよー。今日の晩ごはん、オムライスだって!」
「ミクも行けば良かったのに」
ミクの嬉しそうな声とは違い、レンの返事は短く、そっけない。
突き放したとも取れる言い方だろう。
しかしミクにはレンの性格が良くわかっていた。それ故に気分を害する事もなく、ソファに座っているレンに視線を合わせて言う。
「だって、目が覚めてリビングに一人ぼっちなんて、さみしいでしょ?」
「……別に」
そっぽを向いてぶっきらぼうに言う姿にミクは微笑む。
こんな風に好意を寄せられるのは気恥ずかしい。でも、不快ではなかった。
「あ、そうだ。お兄ちゃん起こしてきてくれない?」
「……わかった」
一度大きく伸びをして、それからカイトの部屋へと向かう。
青い。誰かからカイトの印象を尋ねられたとして、答えるとすればそれだろう。
家具が少なく、生活感があまり無いこの部屋。
それでもその少ない家具は、青系統で統一されている。
カイトの趣味なのか、それともマスターのイメージか。
ラックに一つだけ置かれているミニチュアを気にしてから、ベッドへ近寄った。
リンが買い物という機会にカイトの存在を置いて出る筈が無いと思っていたが、これでは置いていかざるを得ないだろう。
ご丁寧に青の布団カバーをかけて眠るカイトは、普段より一層人形の様に見える。
ベットの近くに膝を立て、頬ををつつく。
白い肌を見て、陶器の様な硬さを連想したが、柔らかな感触が伝わった。
「兄さん、起きてよ」
呼びかけてみるが返事は無い。身動きもしない。
「起きてってば」
今度は少し強めに呼びかける。それでも反応無しだ。
どうすれば起きるのか、大声を出せばさすがに起きるだろう。しかし、そんな事で大声なんて出せない。小さなプライドがレンの行動を妨げた。
その時、騒がしい声と共に玄関の扉が開いた。
「たっだいまー!」
「おかえりなさーい」
どうやらリンたちが帰宅したようだ。寒かっただのを口にしながらリビングへと入っていく。
「微妙に寒くなってきたわねー。今日、オムライスじゃなくて鍋にしない?」
「ああ、それも良いかもなあ」
一気に家が騒々しくなる。
リンの能天気な声と、慶介たちのぼやきが聞こえてくが、それでもカイトは目を覚まさない。
どうしたものかと腕を組んで唸っていると、慶介が部屋へと入って来た。
「お、何だ。そんな所で仁王立ちして。闇討ちか?」
「馬鹿。兄さんが全然起きてくれないんだよ」
「へー」
そう言ってベッドへ近づく。
「こいつが寝ると、ますます機械っぽいな」
「……そうだね」
「んじゃ、さっさと起こすか。おい、飯だぞー。起きろ、カイト」
「そんな簡単に」
起きるわけがないだろ。と言い掛けた言葉は飲み込まれる。
またベッドへと戻りそうなくらいの緩慢な動きであるが、カイトは上体を起こしていた。
「……………」
「おう、起きたか」
「……」
「ほら、飯だ。さっさとリビング行け」
ゆっくりと頷いてみせると、そのままふらふらとリビングへ歩いていく。
その後姿を見て、レンは呟く。
「何で、マスターだと起きるんだよ」
「そりゃ愛の力だろ」
「……」
「嘘だって。そんな目で見るなよ」
不機嫌さを出して睨んでくる連に向かって、ひらひらと慶介は手を振る。
「どうしたんだよ、嫉妬か?」
「……別に」
そのままリビングへと歩いていく姿を見て、慶介は苦笑いを零して、後を追った。
眠りから覚めて、レンは腹にかけられているタオルケットを見てぼんやりと思う。
「あ、レンくん。おはよー」
ひょっこりとミクが覗き込んで言った。
くくられたツインテールの先が顔に僅かにかかる。柔らかな感覚がくすぐったい。
「……おはよう。……今何時?」
「四時だよ。暗くなって来たから電気点けたの。多分、それで目が覚めちゃったんだねー」
二時間程眠り込んでいた様だ。リンが居たら何を言われるか。
「寝るか本読むかしかしないんすか?」
きっとこんな所だろう。自分の想像のリアルさに乾いた笑いを立て、ふと気づいた。
……リンが居たら?
「他の皆は?」
明かりが点いている所はリビングしかなく、他の部屋は暗い。
「お姉ちゃんとリンちゃんはマスターとお買い物に行ったよー。今日の晩ごはん、オムライスだって!」
「ミクも行けば良かったのに」
ミクの嬉しそうな声とは違い、レンの返事は短く、そっけない。
突き放したとも取れる言い方だろう。
しかしミクにはレンの性格が良くわかっていた。それ故に気分を害する事もなく、ソファに座っているレンに視線を合わせて言う。
「だって、目が覚めてリビングに一人ぼっちなんて、さみしいでしょ?」
「……別に」
そっぽを向いてぶっきらぼうに言う姿にミクは微笑む。
こんな風に好意を寄せられるのは気恥ずかしい。でも、不快ではなかった。
「あ、そうだ。お兄ちゃん起こしてきてくれない?」
「……わかった」
一度大きく伸びをして、それからカイトの部屋へと向かう。
青い。誰かからカイトの印象を尋ねられたとして、答えるとすればそれだろう。
家具が少なく、生活感があまり無いこの部屋。
それでもその少ない家具は、青系統で統一されている。
カイトの趣味なのか、それともマスターのイメージか。
ラックに一つだけ置かれているミニチュアを気にしてから、ベッドへ近寄った。
リンが買い物という機会にカイトの存在を置いて出る筈が無いと思っていたが、これでは置いていかざるを得ないだろう。
ご丁寧に青の布団カバーをかけて眠るカイトは、普段より一層人形の様に見える。
ベットの近くに膝を立て、頬ををつつく。
白い肌を見て、陶器の様な硬さを連想したが、柔らかな感触が伝わった。
「兄さん、起きてよ」
呼びかけてみるが返事は無い。身動きもしない。
「起きてってば」
今度は少し強めに呼びかける。それでも反応無しだ。
どうすれば起きるのか、大声を出せばさすがに起きるだろう。しかし、そんな事で大声なんて出せない。小さなプライドがレンの行動を妨げた。
その時、騒がしい声と共に玄関の扉が開いた。
「たっだいまー!」
「おかえりなさーい」
どうやらリンたちが帰宅したようだ。寒かっただのを口にしながらリビングへと入っていく。
「微妙に寒くなってきたわねー。今日、オムライスじゃなくて鍋にしない?」
「ああ、それも良いかもなあ」
一気に家が騒々しくなる。
リンの能天気な声と、慶介たちのぼやきが聞こえてくが、それでもカイトは目を覚まさない。
どうしたものかと腕を組んで唸っていると、慶介が部屋へと入って来た。
「お、何だ。そんな所で仁王立ちして。闇討ちか?」
「馬鹿。兄さんが全然起きてくれないんだよ」
「へー」
そう言ってベッドへ近づく。
「こいつが寝ると、ますます機械っぽいな」
「……そうだね」
「んじゃ、さっさと起こすか。おい、飯だぞー。起きろ、カイト」
「そんな簡単に」
起きるわけがないだろ。と言い掛けた言葉は飲み込まれる。
またベッドへと戻りそうなくらいの緩慢な動きであるが、カイトは上体を起こしていた。
「……………」
「おう、起きたか」
「……」
「ほら、飯だ。さっさとリビング行け」
ゆっくりと頷いてみせると、そのままふらふらとリビングへ歩いていく。
その後姿を見て、レンは呟く。
「何で、マスターだと起きるんだよ」
「そりゃ愛の力だろ」
「……」
「嘘だって。そんな目で見るなよ」
不機嫌さを出して睨んでくる連に向かって、ひらひらと慶介は手を振る。
「どうしたんだよ、嫉妬か?」
「……別に」
そのままリビングへと歩いていく姿を見て、慶介は苦笑いを零して、後を追った。