長編

「朝とひーるとと夜にオハヨーハヨー」

その歌を聞いて、慶介が首をひねる。
「あれ、これって初音ミクの曲じゃねえの?」
「うん。でもお兄ちゃんが歌ったほうが可愛いかなって」
「可愛いって……」
その言葉に慶介は苦笑いをこぼした。それを見てミクが頬を膨らませる。
「えーっ、マスターはおにいちゃんを可愛いって思わないの?」
「いや、仮にも男相手に可愛いとは……向こうも屈辱なんじゃね?」
「そうなのかなあ……レン君はどう?」
突如ふられたレンが、ぎくりと体をこわばらせる。
「え。あー…………ない、んじゃないか」
「もう! みんな冷たいんだから!」
「いや冷たいって事はないでしょう」
「おいー。 自分ばっか食うなよ」
「えー、いいじゃん別に! 食べたきゃレンも食べたらいいっすよ」
「食うよ! けど俺らの分も残せ」
「私は別にいらないわよ」
「ねえねえ、お姉ちゃん。後でアイス食べようよー」
「あらいいわね。どれにしようかしら」






「なあお前ら。俺の歌ちゃんと聞いてんの?」

「聞いてる聞いてる」
「思ったより上手いよね」
「最近の曲知ってるじゃない。それでもちょっと古いけど」
「マラカスの出番なくて良かったねー」
「聞いた事のない曲です 分析は不可能かと」

「……いいよ。もう好き勝手に過ごしてくれ」
少しの落胆が滲んだ声に、即座にレンが返した。
「元からそのつもりだけど」
「なんかすっごい楽しかったね!」
「そうっすねー。また行きたいなー。歌う曲仕入れとかなきゃ!」
「ああいうところのアイスって美味しくないものばっかりだと思ってたわ」
「まあ、ストレス発散にはなったよ」

各々好きな事を話しながら帰路につく。
その姿を後ろから眺めながら、慶介は溜め息交じりに呟いた。

「好き勝手に過ごしてそれか……」

「……マスター」

隣を歩いているカイトの呼びかけに、そちらを向く。

「ん?」
「……また 行きたいです」
「……そうか。楽しかったしな」
「……楽しい」
「もう一回行きたい。って思うのが、楽しいって事だ」
「……今日は 楽しかったです」

呟いて立ち止まる。
そんなカイトに、慶介は手を差し伸べて答えた。

「そりゃ良かった。また行こうな」
「……はい」
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