TOS
いいお湯だったなぁと浸り、割り当てられた自室へと戻ろうとリビングを横切ろうとしたときに、ゼロスを見つけた。
「あれ、ゼロス。どうしたの?こんなところで」
「やあコレットちゃん。風呂上がりかー」
ソファに腰掛け、にこやかに手を降るゼロスにコレットは近づいた。
「うん。お風呂、こーんなに広かったよ!やっぱりゼロスってすごいんだねー!」
興奮した様子で話すコレットに、ゼロスは優しく笑いかけた。
「喜んでもらえて嬉しいねえ。なんならプールでも作ろうか?」
「わあ、それも楽しそうだね!」
はしゃぐコレットを見ながら、ゼロスはふと思い立った。
「そうだ。コレットちゃん、髪乾かしてやるよ」
「ええっ、いいよー別に」
「いいからいいから」
手をとってやや強引にソファへと座らせて、手馴れた手つきでコレットの髪を乾かし始めた。
「気持ちいいねー」
ふーと目を閉じて間の抜けた声を出すコレットを、まるで猫のようだと思いながら作業を進めていく。
「コレットちゃん、髪綺麗だな」
「そんなこと言われたの、初めて」
こちらからは表情が見えないが、どうやら照れているのだろう。
くっくっと笑いをかみ殺すゼロスに、不思議そうにコレットは振り向いた。
「コレットちゃん、耳真っ赤……っ!」
「ええっ!!」
わたわたと慌て始めるコレットについ噛み殺せず笑いが漏れた。
「もー……」
「ごめん、ごめん」
「でも、ほんと、お姫様になったみたい」
幸せそうに微笑むコレットを見て、ふと思った。
この子は、神子と言う宿命を背負いながら、どうしてこんなにも笑えるんだろうか
しかしその思いをすぐに切り替えて、いつもの様に笑った。
「そんなに喜んでもらえると思ってなかったから、こっちも嬉しいぜ~。なんなら、明日も乾かそうか?」
「え、ほんと?」
「本当だぜ~?俺様、綺麗な人に嘘はつかないからな」
「もう、ゼロスったら」
くすくすと笑うコレットに、自分も笑みを浮かべた。
いまは、これでいいのだ。
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