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TOA

「おい、ティア!」
ティアの名を呼ぶアッシュの声は、焦りを含んだものだった。
他の六神将からの攻防を防ぎつつ、ティアを守るということも同時にこなす彼は、軍人であるティアから見ても剣が上手い部類に入る。
だがそんなアッシュでも、防ぎきれない事もあるのだ。
「わかってるわ」
小さく口内で呟き、相手の死角となる場所まで走って行く。
素早く辺りを見回して、譜歌を詠唱した。
自分の周りを音素が取り囲む馴染み感覚に包まれ、発動出来ると思ったその時。

「させるかよっ」
鋭い声が頭上から聞こえた。
はっとして杖を構え、その上に剣が振り下ろされた。
がきり、と金属がぶつかる甲高い音が響く。
「……くっ」
「へえ、やるじゃないか。女の癖に」
どこか楽しそうな声が発せられた。
そのからかう様な口調に、吐き捨てるように言った。
「女である前に、一人の軍人よ」
「……あっそ」
つまらない、と小さく呟いて握っていた剣に力を込める。
ぐらりと体制が揺れて、ティアはつばぜり合いの状態から飛び退いて後ろに下がる。
ほんの少し力を込められただけで、硬直状態から抜けざるを得ないのだ。
どうしても埋められない、男女の体格差に歯噛みした。
そんなティアの様子を見て、にやりと笑ってに言う。

「師匠の妹って聞いたけど、大したことねーな」

「師匠?まさか、兄さんのこと?」
そして理解した。

「……貴方、もしかして」
驚愕の表情を浮かべたティアをおもしろく思ったのか。
芝居かかった動きで一する。
それは、貴族を思わせるような優雅な動きだった。
そしてもう一度視線をティアに合わせ、言った。

「そうだ。俺はルーク。六神将の一人、灰塵のルークだ」
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