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TOA


「ティアはさ、この戦いが終わったらどうするんだ?」
「どうしたの、急にそんなこと」

唐突な話を振られ、ティアは目を瞬かせる。
ルークは少しの間口を閉じ、ばつが悪そうに頭を掻いた。

「いや、こう、なんて言ったら良いかな……将来の夢みたいなこと、ティアにはあるのか?」
「……最初の質問と、変わってるわよルーク」
「わかってるって! でも、なんかきになったから」
「そうね……」
ティアはしばし目を閉じ考えた。

将来の夢。

「……どうだったかしら?今はないし、昔は何になりたかったとか、覚えてないわ。 ルークは?」
「俺はー……アビスレッドかなぁ……」
「……昔の、話よね?」
「当たり前だっつーの! 俺を何だと思ってるんだ!」
「でもあなた、ピオニー陛下に衣装を頂いた時にものすごく嬉しそうじゃなかった?」
「あ、あれは言葉のあやってやつだ!」
「それ、間違ってるわよ」
「だーかーらーっ、嬉しそうなふりだよ!ふり!」
「わかったわ、ふりね」
くすくすと、楽しそうに笑みを零すティアとは対照的に、うーと呻り声を上げるルーク
だが、ふと真面目な顔をしてティアに向き直った。
「最初に戻るけど、ティアは戦いが終わったら、どうする?」
「私は……」
口を閉ざし、しばし考えるティア。
「私は…… やっぱり、考えられないわ」
「じゃあ、俺が考えていい?」
「え?」
素っ頓狂な声を上げてルークを見るティアに、押し殺した笑いが届いた。
「……どうして、そんなに笑うの?」
「いや、ティアがあんまりにもびっくりしてたから、おかしくって。
「えーと、そうだなあ。全部終わって、平和になって。
ナタリアはキムラスカで元気に王国でも作ってて、毎日忙しそうにしてる。
ガイはグランコクマに居るだろうから毎日ピオニー陛下に構われてるか、ブウサギの散歩だな。
ジェイドも其処に一緒に居るだろうから、大変なんだろうな。
アニスはー……まだダアトにいるか? でもあいつの事だから、なんか金儲けの旅に世界中飛び回ってそうだよな」
ひとしきり語ると、ルークはふぅと溜め息を吐いた。
その横で、ティアが少し不満げに呟く。
「私のこと、全然話してくれないじゃない」
そんなティアに苦笑いを零す。
小言も多い彼女は、自分よりもはるかに年上に見えることがあるが、やはり自分と同じ子どもなのだ。
「これから話すんだって。
 ティアはー……どこ住んでんだろうな。全然想像つかねえ。クリフォトに居るかもしんねーけど、案外エンゲーブだったりって思うんだよな。 ほら、あそこチーグルの森から近いだろ?ティアはミュウが好きだからなー」
そして一度言葉を切る。
「そこで、楽しそうに笑うんだ。可愛いミュウとかブウサギとかに囲まれて、幸せいっぱいの生活!」
へへへ、と照れくさそうにルークは笑った。
「毎日、毎日が幸せで。ティアは笑って過ごすんだ」
それを語る瞳はどこまでも優しい光を映している。
ティアはぐっと唇を噛み締めた。
「……それは、良いわね」
声色に気づかれないように平静を必死で保った。
気づかれてはいけない。

「でも、それじゃあ、幸せにはなれないわ」
「どうして?」
ティアは口を噤んだ。
「貴方が気づくまで、言わない」

私の幸せは、貴方が隣にいないと。
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