らーめんとアイス
ラーメン食べに行こうぜ、と豊前が言うから、皆でラーメンを食べに行くことになった。
篭手切が、それならどうしても行きたいラーメン屋があります!と言い出して、わざわざ主に許可取って、時間遡行。この時代は確かに、色んなものがあって楽しいけど、こんな理由で許可を出すうちの主はゆる過ぎると思う。そのうち、政府とやらに怒られるんじゃないかなあ。
偶然、6席並んでカウンターが空いたから、6振横並びで座った。
ラーメンは好きだけど、猫舌の俺には辛い食べ物。ふうふう冷ましながら、少しずつすすったり、れんげの上に麺を乗せて冷ましたり、試行錯誤が要求される。
でも、苦労してでも食べたいくらいおいしい。モヤシがいっぱい入った、みそラーメン。篭手切が食べたいって言うだけあるなあ。いつもどこから情報を仕入れてくるんだろう。篭手切は美味しいものや、楽しいもの、めずらしいものもよく知っていて、俺たちにも教えてくれるんだ。
俺が悪戦苦闘してる間に、豊前と桑名は食べ終わったらしくて、ごちそうさま、と店の人に声をかけて早々に出ていく。入れ替わりで、他の客が入ってきた。狭いラーメン屋で、長居は禁物。とはいえ、あまりのスピードに、正直ちょっと引いた。
なんとか食べ終えて、四人で外に出た。なかなかボリュームもあって、お腹いっぱい。後でお腹痛くなりそうだなあって、ちょっと不安だ。
雨さんと、おいしかったねと話してたら、隣のコンビニの前で桑名と豊前がアイスを食べていた。
桑名はバニラモナカ、豊前はガリガリくん。
今さっき山盛りのラーメンを食べたばかりなのに、この2人は本当によく食べる。
呆れていたら、松井がそれを見て、僕も食べようかな、と言い出したから、びっくりした。
おぅ、買ってこいよ、と豊前が言ったけど、どうせならサーティワンのアイスにするよって松井が言うから、みんなでサーティワンまで行くことにした。
ついてみたら、豊前は何も見ないでもう注文してるし、しかもダブルだし、桑名も少しメニュー見てから迷いなくダブルで注文するし、信じられない。見てるこっちがお腹痛くなる。
篭手切と松井は真剣にメニュー表とにらめっこしてから頼んでいた。篭手切は期間限定フレーバーで、松井は悩んだ割にいつも通りのチョコミント。豊前のベリーベリーストロベリーをひと口もらったみたい。
結局みんなアイス食べてる。いいなぁ。胃腸が強い人達はさ。
「雲さんは何にしますか」
雨さんが、メニュー表を示しながら聞いてくれるけど、お腹痛くなりそうだから、やめておくと伝えた。
「では、私の分を少しもらってくれませんか。一人で食べるには多いので」
雨さんはそう言って、俺の大好きなホッピングシャワーを買ってきてくれた。うれしいのだけど、なんだかじーんとしてしまって、うまく言葉には言い表せなくて、ありがとうとだけ言ったら、雨さんはちょっと笑ってた。
主へのお土産にアイスを買って帰った。なぜか俺が渡しに行くことになって、俺以外が渡した方が主も喜ぶんじゃないかと思いつつ、ピンク色の袋を差し出した。
村雲の色だねと主が言って、もしかしてそれでみんな俺に行けって言ったのかな?と思う。
楽しかった?と聞かれて、うん、と答えた。めずらしく、皮肉めいた言葉は出てこなくて、自分でも、今日1日が楽しかったんだなと気付く。
そう、よかったと、主が微笑んだ。どうして俺が楽しかっただけなのに、こんなに嬉しそうなんだろう。
もしかしたら、主もサーティワンのアイスが好きなのかもしれない。またこういう機会があったら、買ってこようかなと思った。
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