四話「鬼」
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「鬼仁会」
「あぁ、そこの組長だけには絶対近づくんじゃねぇぞ。お前には、まだちょっと危険過ぎるヤツだからな」
「ド素人の私が見ただけで分かるわけないじゃないですか…」
「は?人が忠告してやったんだから少しはありがたいと思えよ」
『いくら生意気でも、いい歳した大人の頭に拳骨はないと思うんですよ』…などと、そんなことまでは口にしなかったが、幼い頃に親からくらって久しい拳骨はかなり痛かった。まぁ佐川も本気ではないにしろ痛がってたから、ざまぁみろだ。
それにしても、これまた物騒な名前の組があったものだ。結局のところ佐川は写真を寄越してはくれなかったし、真島さんに探りに行こうにも気軽に会いに行ける間柄ではない。近づくなと言われてしまったからには、会わないようにするには一体全体どうしたものか。とりあえず暫くの間は任された仕事もないようだし、ひっそりと静かに暮らすことぐらいしか…
「おっと!お姉ちゃん、ぼーっと歩いとったら危ないで~」
「あ、すみません」
目の前から来た臙脂色のスーツの男性に受け止められてから、ようやく自分の足取りがフラフラしていたことに気がついた。やっぱり、こんな人通りの多い場所を考え事しながら歩いたらダメだな。
改めて男性に「すみません」と頭を下げ、顔を上げるとバチりと音がしそうなくらい綺麗に目が合った。男性をよくよく見ると、明らかにカタギではないド派手なスーツに何か嫌な予感がして、ちょっとだけ視線を下げてみる。下げた視線の先は、スーツの襟の部分。嫌な予感が当たっていて、もしも彼がヤクザなら大抵ここに代紋が……
「あ」
「ん?どないしたん」
あった、確かに代紋のバッジはあった。そこに刻まれている組の名前が、よく分からない代紋だったりしたら狼狽えることは無かっただろう。そう、忠告されたばかりの組である「鬼仁会」と刻まれていなければの話だ。今度は考え事ではなく、本当に足取りさえもふらつくような目眩がする気分だった。
「…いえ別に、何もないです。ぶつかりそうになっといて何ですが、お兄さんはお怪我はないですか」
声を震わせることのないように笑顔を取り繕えば、いつもの自分になれた気がして少しばかり落ち着いた。だが、現状の打開には何一つ繋がっていないことに殊更焦りを感じてしまう。いかにして無傷、無関係を保ったままこの場から逃げ…いや、離れられるかが問題だ。
「あぁ、そこの組長だけには絶対近づくんじゃねぇぞ。お前には、まだちょっと危険過ぎるヤツだからな」
「ド素人の私が見ただけで分かるわけないじゃないですか…」
「は?人が忠告してやったんだから少しはありがたいと思えよ」
『いくら生意気でも、いい歳した大人の頭に拳骨はないと思うんですよ』…などと、そんなことまでは口にしなかったが、幼い頃に親からくらって久しい拳骨はかなり痛かった。まぁ佐川も本気ではないにしろ痛がってたから、ざまぁみろだ。
それにしても、これまた物騒な名前の組があったものだ。結局のところ佐川は写真を寄越してはくれなかったし、真島さんに探りに行こうにも気軽に会いに行ける間柄ではない。近づくなと言われてしまったからには、会わないようにするには一体全体どうしたものか。とりあえず暫くの間は任された仕事もないようだし、ひっそりと静かに暮らすことぐらいしか…
「おっと!お姉ちゃん、ぼーっと歩いとったら危ないで~」
「あ、すみません」
目の前から来た臙脂色のスーツの男性に受け止められてから、ようやく自分の足取りがフラフラしていたことに気がついた。やっぱり、こんな人通りの多い場所を考え事しながら歩いたらダメだな。
改めて男性に「すみません」と頭を下げ、顔を上げるとバチりと音がしそうなくらい綺麗に目が合った。男性をよくよく見ると、明らかにカタギではないド派手なスーツに何か嫌な予感がして、ちょっとだけ視線を下げてみる。下げた視線の先は、スーツの襟の部分。嫌な予感が当たっていて、もしも彼がヤクザなら大抵ここに代紋が……
「あ」
「ん?どないしたん」
あった、確かに代紋のバッジはあった。そこに刻まれている組の名前が、よく分からない代紋だったりしたら狼狽えることは無かっただろう。そう、忠告されたばかりの組である「鬼仁会」と刻まれていなければの話だ。今度は考え事ではなく、本当に足取りさえもふらつくような目眩がする気分だった。
「…いえ別に、何もないです。ぶつかりそうになっといて何ですが、お兄さんはお怪我はないですか」
声を震わせることのないように笑顔を取り繕えば、いつもの自分になれた気がして少しばかり落ち着いた。だが、現状の打開には何一つ繋がっていないことに殊更焦りを感じてしまう。いかにして無傷、無関係を保ったままこの場から逃げ…いや、離れられるかが問題だ。