五話「日々」
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「佐川さん、仕事ないですか」
「今は無いっての」
ここ一週間近く同じ返事しか聞いていないのだが、この仕事をくれない雇い主を一体どうしてくれようか。いや、極道の業務に対して一般人の成り上がりである私ができることなんて何もないのだが。…だが、それにしたって暇すぎる。私だってタダ働きをするつもりはないから、こうやって喧しく思われながらも仕事を要求しているというのに。
捨てる筈の命を勝手に拾われた身のため、佐川の下で養われている形になる。養われているということは、衣食住を支えられて生きているということ。以前住んでいたアパートは「何かに巻き込まれると後味悪いから」とよく分からない理由とともに解約されて、新しく貰った部屋で寝泊まりしている。残りの衣と食については、少しばかりもて余すほどの給料で賄っている。
「佐川さんだって、私のパトロンになりたくて拾った訳じゃないでしょう」
「はっ。チンチクリンは今どきウケねぇからな」
「確かにこの体じゃボディコンは似合わないですね!」
開き直って営業スマイルを浮かべて見せると、下手な想像をさせるんじゃねぇ、と言わんばかりに佐川の顔が顰められた。それを尻目にしてやったりと笑っていると、私のジャケットに入れてたポケベルが微かに鳴り、自然と彼から視線が向けられた。
「何、お前。友達なんて居たの?」
「…いや、友達ではないですね」
脳裏をよぎる臙脂色のジャケットに若干顔を引き攣らせながら「これが終わったら直帰します」と残し、事務所の玄関をくぐった。
「良いんですか、親父」
「は?アイツ確か成人済みだろ?行き先聞かなきゃ心配なくらいのガキじゃねーよ」
「そうですか」
それにしては弥生が出て行った瞬間から貧乏揺すりとか、煙草の吸い方が雑になったな…と一人の部下は思ったが、その後があまりにも恐ろしいため口を出さないことにした。
「今は無いっての」
ここ一週間近く同じ返事しか聞いていないのだが、この仕事をくれない雇い主を一体どうしてくれようか。いや、極道の業務に対して一般人の成り上がりである私ができることなんて何もないのだが。…だが、それにしたって暇すぎる。私だってタダ働きをするつもりはないから、こうやって喧しく思われながらも仕事を要求しているというのに。
捨てる筈の命を勝手に拾われた身のため、佐川の下で養われている形になる。養われているということは、衣食住を支えられて生きているということ。以前住んでいたアパートは「何かに巻き込まれると後味悪いから」とよく分からない理由とともに解約されて、新しく貰った部屋で寝泊まりしている。残りの衣と食については、少しばかりもて余すほどの給料で賄っている。
「佐川さんだって、私のパトロンになりたくて拾った訳じゃないでしょう」
「はっ。チンチクリンは今どきウケねぇからな」
「確かにこの体じゃボディコンは似合わないですね!」
開き直って営業スマイルを浮かべて見せると、下手な想像をさせるんじゃねぇ、と言わんばかりに佐川の顔が顰められた。それを尻目にしてやったりと笑っていると、私のジャケットに入れてたポケベルが微かに鳴り、自然と彼から視線が向けられた。
「何、お前。友達なんて居たの?」
「…いや、友達ではないですね」
脳裏をよぎる臙脂色のジャケットに若干顔を引き攣らせながら「これが終わったら直帰します」と残し、事務所の玄関をくぐった。
「良いんですか、親父」
「は?アイツ確か成人済みだろ?行き先聞かなきゃ心配なくらいのガキじゃねーよ」
「そうですか」
それにしては弥生が出て行った瞬間から貧乏揺すりとか、煙草の吸い方が雑になったな…と一人の部下は思ったが、その後があまりにも恐ろしいため口を出さないことにした。
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