人生を過ごしていく内に人間というのは、必ず一度は後悔をするものだ。
「あの時、こうすれば良かった」
「あの日、こうしなければ良かった」
「そうしたら、こうならなかったのに」
私はあの日、あの男の声に振り返らなければ死ねたのかも知れない。だが、それに対する後悔という唯一残された人間らしさが日に日に薄れていくことの方が、私はよっぽど怖いと思っている。だから、後悔をしながら重苦しい思いを抱えて生きていくことは悪いことではないと、私は身をもって証明したい。
「…私は貴方のことが好きでした」
　私が涙を流しながら、こう呟くまでの前日譚を語ろうと思う。