いっぱいの花をあなたに!
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「うぅ、誠に申し訳ないです…………」
「あー、別にもういいですって」
「鬼殺隊士にこんな無体を働くなんて……やだ……申し訳なさで死にそうだし絶対怒られる……」
「俺は別に怒ってないんだけど……?」
しっかりと着物を着た上で脱衣所から出てきた彼は、お風呂の前の廊下で土下座する私を見て、優しげな声をかけてくれた。怒るでもなく。
けれど、もしかしたら呆れられていたのかもしれない。頭を下げていたから、彼の表情は読めなかったし、私は申し訳なさと脳内でめちゃくちゃに怒る実弥さんに挟まれてどうしようもなくなっていたのだ。
「とりあえず、立ち上がってください。あなたも夕餉の前に風呂に入りに来たんでしょう?ならどうぞ、お好きにしてくださいって」
「うっうっ、なんて心の広い……本当どうお詫びしたらよいのか……」
「だーかーら、詫びなんていらないですって」
少し眉根を寄せて、私を許そうとしてくれている目の前の人の手を借りて、よろよろと立ち上がる。
いやでもさ、家族ならともかく、他人に全裸を見られるってどうなの?いや、全部を見たわけじゃないし、男の人のお胸とかなら、その、実弥さんの格好がアレだから変に意識はしないけど!
けど!
見られたら嫌な気はするでしょう~!!
「……いっそ見られても良い関係になればいい…??」
「………はぁ?」
「あっあの!私、あなたの」
「待て待て待て!何を言い出すつもりだ!!」
「? あの、背中でも流す人になりましょうか、と……」
「お、おまえ………」
あ、あれ、何か間違った?
うん、間違ってるなこれは。だって見るからに表情変わってるもん。思いっきり眉根は寄ってるし、すごい目でこっち見てくるもん。
さっきまでの好青年はどこに行ったの……??
「とにかく、俺はそういうのはいらないし、他の人間にも早々、そういうことは言うもんじゃない。
つーかさっさと風呂入れよ。他人に絡む前に。さっさとしねぇと飯の時間になるぞ」
「あっ、はい」
急に変わった雰囲気に、流されるように頷いた。
そうすれば、彼はため息をついて、さっさと廊下を歩いていく。
その背中を眺めたまま、ぱちりと瞬きをして……それで、私は思い出したようにお風呂への扉を開いたのだった。
その後、お夕飯をいただいて、御膳を厨に運んだ。奥さんにはそんなことさせて申し訳ないと言われたけれど、私が好きでしたことだから良いのだと伝えておいた。そうしたら、お礼にっておまんじゅうをもらった。
ここのお家のお菓子美味しいから素直に嬉しい!
おまんじゅうを片手に、月でも見ながら食べようかと、ちょうどいい場所を探す。
すると、ちょうど人ひとり分くらいの影が見えた。もらったおまんじゅうは2つ入り。
もしかしたらおじさんかも!そしたら一緒に食べよ!と私はそちらに忍び寄った。
「こーんばーんはー」
「げっ」
「あれ、」
そこにいたのは、私が無体を働いた本人であって。思いっきり顔をしかめる彼を前に、私の顔からざっと血の気がひいていくのがわかった。
「……今度は何」
「あ、あの、えーと。
あっ、おまんじゅう!おまんじゅうは好きですか!食べませんか!」
「はぁ?」
あたふたとしたけれど、とりあえず腰掛けている彼に視線を合わせるべく、その場に腰を下ろした。
勢いに任せておまんじゅうのことを伝えると、彼は訝しげにこちらを見遣る。へへ、ととりあえず苦笑いで返しておいた。
「やっぱ、いらないですよねー……。お邪魔しました……」
「まぁ、待てよ」
「へ、」
嫌だろうなぁ、と思ってその場を去ろうとしたら、思いの外呼び止められた。
さっきまでの表情は何処へやら、にっこりと笑った彼に、一瞬嫌な予感がする。
それでも向き合って、浮かしかけた腰をまた戻した。
「まんじゅうはもらう。それと、お前は誰だ?」
「あっはいおまんじゅう……。
っひゃあ、無体を働いた相手に名乗っていなかったの、私……!?ごめんなさい本当にごめんなさい!私は#みょうじ##なまえ#と申します!」
「#みょうじ#……この家と違う名前だな?」
「そうですそうです、私はお使いでここにきたので」
「へぇ?」
片眉を上げて続きを促してくる彼に、私は言葉を続ける。
「風柱のお使いで、この家に、藤の花の匂い袋やらを届けに」
「柱!」
彼は、驚いたような、嬉しそうな顔をして、私に向き直る。
そして、ちょっと考えるように空を見上げたあと、にっこりと笑って私に向き直った。
「となると、てめぇが最初に怒られると言っていたのはその風柱が相手だな。
そしてまだ俺はお前に明確な許しを与えていない。わかるな?」
「え、えっと」
「俺の名は獪岳。お前は、俺の下につけ。それで許してやる。
……いやぁ、いいところで繋がりができたな。悪くない」
「ひょえ……?」
「仲良くしてくれよ、#なまえ#チャン?」
一転して、最初に見たときのような爽やかな微笑みに戻った彼──獪岳くん。
うわぁ!すごい!悪知恵がすごいよ!!
変な感動をしながら、満足したように、上機嫌でおまんじゅうを頬張る獪岳くんに、私は何か返事を返そうと、はくはくと言葉を紡ぐ。
そして、私の口は見当違いの方向に動くのだ。
「仲良く、って……お友達になるってこと?」
「っ、ごふ、ごほ!」
「うわわ、獪岳くんしっかりー!!」
むせた獪岳くんの背中を慌ててさする。
おまんじゅうを喉につまらせながら、獪岳くんは、私を睨めつけるようにして言うのだ。
「……っ、誰が、トモダチ、だ……!この、愚図……!!
それと、軽々しく、くん、なんて……!!」
「き、気道確保に努めて……!?」
慌ただしさの中で、取れてきた敬語と堅苦しさ。
まだ獪岳くんは「言ってることが伝わってねぇ」とぶつぶつ呟いているが、私としては、私にとって良い方向に進んだので、大変嬉しい。
同い年くらいの子ってなかなか会わないもの!
思わず笑いが漏れれば、また獪岳くんに睨み付けられるのであった。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「引かないでよ!!」
「いや引くだろ。勝手に風呂覗いてきた女が土下座かましてたらドン引くわ。ったく、変な女に関わっちまった……」
「冷たくない……?私たち出会ったばっかだよね……?」
「なんかもうテメェに対して被る猫は逃げ去った」
「なんてことを」
「あー、別にもういいですって」
「鬼殺隊士にこんな無体を働くなんて……やだ……申し訳なさで死にそうだし絶対怒られる……」
「俺は別に怒ってないんだけど……?」
しっかりと着物を着た上で脱衣所から出てきた彼は、お風呂の前の廊下で土下座する私を見て、優しげな声をかけてくれた。怒るでもなく。
けれど、もしかしたら呆れられていたのかもしれない。頭を下げていたから、彼の表情は読めなかったし、私は申し訳なさと脳内でめちゃくちゃに怒る実弥さんに挟まれてどうしようもなくなっていたのだ。
「とりあえず、立ち上がってください。あなたも夕餉の前に風呂に入りに来たんでしょう?ならどうぞ、お好きにしてくださいって」
「うっうっ、なんて心の広い……本当どうお詫びしたらよいのか……」
「だーかーら、詫びなんていらないですって」
少し眉根を寄せて、私を許そうとしてくれている目の前の人の手を借りて、よろよろと立ち上がる。
いやでもさ、家族ならともかく、他人に全裸を見られるってどうなの?いや、全部を見たわけじゃないし、男の人のお胸とかなら、その、実弥さんの格好がアレだから変に意識はしないけど!
けど!
見られたら嫌な気はするでしょう~!!
「……いっそ見られても良い関係になればいい…??」
「………はぁ?」
「あっあの!私、あなたの」
「待て待て待て!何を言い出すつもりだ!!」
「? あの、背中でも流す人になりましょうか、と……」
「お、おまえ………」
あ、あれ、何か間違った?
うん、間違ってるなこれは。だって見るからに表情変わってるもん。思いっきり眉根は寄ってるし、すごい目でこっち見てくるもん。
さっきまでの好青年はどこに行ったの……??
「とにかく、俺はそういうのはいらないし、他の人間にも早々、そういうことは言うもんじゃない。
つーかさっさと風呂入れよ。他人に絡む前に。さっさとしねぇと飯の時間になるぞ」
「あっ、はい」
急に変わった雰囲気に、流されるように頷いた。
そうすれば、彼はため息をついて、さっさと廊下を歩いていく。
その背中を眺めたまま、ぱちりと瞬きをして……それで、私は思い出したようにお風呂への扉を開いたのだった。
その後、お夕飯をいただいて、御膳を厨に運んだ。奥さんにはそんなことさせて申し訳ないと言われたけれど、私が好きでしたことだから良いのだと伝えておいた。そうしたら、お礼にっておまんじゅうをもらった。
ここのお家のお菓子美味しいから素直に嬉しい!
おまんじゅうを片手に、月でも見ながら食べようかと、ちょうどいい場所を探す。
すると、ちょうど人ひとり分くらいの影が見えた。もらったおまんじゅうは2つ入り。
もしかしたらおじさんかも!そしたら一緒に食べよ!と私はそちらに忍び寄った。
「こーんばーんはー」
「げっ」
「あれ、」
そこにいたのは、私が無体を働いた本人であって。思いっきり顔をしかめる彼を前に、私の顔からざっと血の気がひいていくのがわかった。
「……今度は何」
「あ、あの、えーと。
あっ、おまんじゅう!おまんじゅうは好きですか!食べませんか!」
「はぁ?」
あたふたとしたけれど、とりあえず腰掛けている彼に視線を合わせるべく、その場に腰を下ろした。
勢いに任せておまんじゅうのことを伝えると、彼は訝しげにこちらを見遣る。へへ、ととりあえず苦笑いで返しておいた。
「やっぱ、いらないですよねー……。お邪魔しました……」
「まぁ、待てよ」
「へ、」
嫌だろうなぁ、と思ってその場を去ろうとしたら、思いの外呼び止められた。
さっきまでの表情は何処へやら、にっこりと笑った彼に、一瞬嫌な予感がする。
それでも向き合って、浮かしかけた腰をまた戻した。
「まんじゅうはもらう。それと、お前は誰だ?」
「あっはいおまんじゅう……。
っひゃあ、無体を働いた相手に名乗っていなかったの、私……!?ごめんなさい本当にごめんなさい!私は#みょうじ##なまえ#と申します!」
「#みょうじ#……この家と違う名前だな?」
「そうですそうです、私はお使いでここにきたので」
「へぇ?」
片眉を上げて続きを促してくる彼に、私は言葉を続ける。
「風柱のお使いで、この家に、藤の花の匂い袋やらを届けに」
「柱!」
彼は、驚いたような、嬉しそうな顔をして、私に向き直る。
そして、ちょっと考えるように空を見上げたあと、にっこりと笑って私に向き直った。
「となると、てめぇが最初に怒られると言っていたのはその風柱が相手だな。
そしてまだ俺はお前に明確な許しを与えていない。わかるな?」
「え、えっと」
「俺の名は獪岳。お前は、俺の下につけ。それで許してやる。
……いやぁ、いいところで繋がりができたな。悪くない」
「ひょえ……?」
「仲良くしてくれよ、#なまえ#チャン?」
一転して、最初に見たときのような爽やかな微笑みに戻った彼──獪岳くん。
うわぁ!すごい!悪知恵がすごいよ!!
変な感動をしながら、満足したように、上機嫌でおまんじゅうを頬張る獪岳くんに、私は何か返事を返そうと、はくはくと言葉を紡ぐ。
そして、私の口は見当違いの方向に動くのだ。
「仲良く、って……お友達になるってこと?」
「っ、ごふ、ごほ!」
「うわわ、獪岳くんしっかりー!!」
むせた獪岳くんの背中を慌ててさする。
おまんじゅうを喉につまらせながら、獪岳くんは、私を睨めつけるようにして言うのだ。
「……っ、誰が、トモダチ、だ……!この、愚図……!!
それと、軽々しく、くん、なんて……!!」
「き、気道確保に努めて……!?」
慌ただしさの中で、取れてきた敬語と堅苦しさ。
まだ獪岳くんは「言ってることが伝わってねぇ」とぶつぶつ呟いているが、私としては、私にとって良い方向に進んだので、大変嬉しい。
同い年くらいの子ってなかなか会わないもの!
思わず笑いが漏れれば、また獪岳くんに睨み付けられるのであった。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「引かないでよ!!」
「いや引くだろ。勝手に風呂覗いてきた女が土下座かましてたらドン引くわ。ったく、変な女に関わっちまった……」
「冷たくない……?私たち出会ったばっかだよね……?」
「なんかもうテメェに対して被る猫は逃げ去った」
「なんてことを」