初めての感情


あの感情がなんなのか。どうしても気になった俺は、正義に相談することにした。正義を探すのに時間は掛からなかったが、内容を伏せることには結構難しかった。互いの時間の都合に合わせて集合し、一連の流れを話した。一通り話し終えると、正義はあぁ〜っっと言わんばかりの顔をしてこちらを見てきた。
「あのな、宗一郎くん」
「なんだその呼び方は」
軽い突っ込みをいれると、すまんすまんと笑いながら謝った。そして改めて話し始めた。
「要するに、その感情はなんだってことだよな?」
「そうだ」
そういうと、正義は言いづらそうな顔をした。答えてしまったらどうなるか、わかっているんだろう。俺はそんな気がして、思いっきり来いと正義を見て頷いた。正義も決心がついたようで、重そうな口を開けて話してくれた。
「……宗一郎、それは『恋』ってやつだと思うぞ」
「…恋……?」
正直びっくりした。浅桐を見てから、ずっと止まなかった高鳴りがまさか恋だとは。考えもつかなかった。そう思うとなんだが笑えてきた。人を好きになる感情が、こういう感じなのだと実感出来た。
「これが恋、か……」
「意外か?」
「あぁ、意外だ」
「…スッキリした顔してんなぁ」
と言いながらも笑っていた、嬉しそうに。
正義はお役に立てたんなら良いよと言って、自分の部屋へと戻って行った。そして俺も部屋へと戻って行った。その足取りは軽く感じた。


もしこれが恋だと言うならば、俺にとっての初恋はどうやら案外近くに居たようだ。もう一度、あの高鳴りが聴けるとき、俺はどうしているんだろうか。
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