闘志を燃やせ?オニーサンスイッチ!
その後も彼らはジェスチャーゲームに白熱していた。次で終わろう、次で終わろうと言っていてもなかなか終われない。というより終わらせたくないようだ。今やったジェスチャーが終わり、くじ引き箱の近くにいた伊勢崎は次は誰かな〜??とくじ引き箱に手を突っ込みかけた、その時だった。備え付けられた時計の鐘の音が部屋全体に響き渡った。
「……今、何時だ?」
そう言いながら、戸上は時計を見た。他の人も目線をそちらに向けた。時計の針が指した時間は、正午12時だった。それを見た戸上たちは驚きのあまり固まってしまった。何かの間違いだろうと思った戸上は、目をこすりもう1度時計を見た。しかし何も変わりはしなかった。そしてポツリと呟いた。
「…マジか……」
「時間の流れって早いんですね…」
佐海は何かを悟ったかのように遠くを見つめた。その時の佐海の目は、なんだか達成感に満ち溢れているようだった。
皆んなが時間に気を取られている一方、不正見逃さないマンの浅桐と斎樹は勝敗結果を見ていた。結果、崖縁チームとラ・クロワチームが2点、白星第一チームと風雲児・愛教チームが3点という結果だった。
「風雲児と愛教が3点とはなァ…」
浅桐は風雲児・愛教の勝敗の部分を、トントンと指で叩いた。
「あぁ…予想してなかった」
2人はこの結果を、言うべきか言わないべきかというので悩むと思ったら、誰かが突っ込まない限り言わないでおこう。と思っていたよりも早くに決まった。斎樹は勝敗の書かれた紙を折りたたみ、ポケットの中へと入れた。これで少しは勝率が上がるだろう?そんな風に微笑んでいた。勉強の出来る人の悪知恵は凄いものだと知った。また、今日1番の不正を犯していることも知った。2人は何事もなかったようにテーブルに置いてある飲み物を飲んだ。そして棒読みにも聞こえる言葉を、少し大きめな声で交わした。
「もう昼かー」
「そうだなー」
「……」
浅桐は目で斎樹に合図を送った。それに気付いた斎樹は、分かったと頷いた。
「…何か食べたいところなんだが、どうしたものか」
「サイキ。ここに最適なのがいるだろ?」
浅桐は佐海の方に目を向けた。斎樹もまた、佐海の方に目を向けた。
「いたな。最適な人が」
佐海はため息をつき、冷蔵庫の方へと向かった。冷蔵庫を開け中身を確認した。そして、
「今日の昼ご飯はオムライスです。あ、拒否権とかないんで」
とにっこり笑った。オムライスという単語に惹かれたのか伊勢崎が豪華だ〜!!!!と喜んでいた。
「良くん、手伝うよ」
「じゃあ僕も」
三津木と久森が昼ご飯作りの手伝いに名乗りを挙げた。
「他の人達はまぁ…そこら辺でわいわいしといて下さい」
「わいわい…」
「戸上さん、深刻そうに考えないで…」
佐海がご飯を作ると言ったことによって、ゲームの結果を忘れさせる作戦だったようだ。おかげで、皆んなはゲーム結果のことを綺麗さっぱり忘れている。斎樹は、世間話や楽しそうな話をしているのを見ながら浅桐に言った。
「…上手くいったな」
「うまくいき過ぎてて、心配になるがな」
「疑おうとする人が少なかったのが、1番の理由だろう」
「たまには人を疑えよなァ」
「本当にな」
すると伊勢崎が2人いる方へと向き、
「真大ちゃんと巡ちゃんもこっちに来なよ〜!!」
と手を振りながら言った。2人は犬みてェだ、コーギーっぽいな、と伊勢崎を犬っぽいと小声で話したあと、伊勢崎たちのいる場所へと向かった。以前と比べると、彼らの仲はより深まったように思えた。