短編
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今日も今日とてお団子屋さんでのお手伝い。
近所にある此処は老夫婦が経営しており、客足はちまちま。だがこの町で愛されている団子屋だ。
「珈琲ちゃん、そろそろ休憩入って良いわよ〜」
おばあさんから団子と共に受け取った言葉をありがたく思い、店の片隅にある長椅子に座る。
休憩時間はいつも賄いの団子と決まっているのだ。…これ目当てで手伝いをしている節は半分ぐらいある。
早速いただきます、と行儀良く団子を口に運びかけた時だった。隣に誰かが座った気配がして、思わず咄嗟に団子を腰まで下げる。ゆっくりと隣を向くと、そこにはよく見る常連さんがいたので、私は固くなっていた肩を緩めて、話しかけることにした。
「月彦さん、今日はお早いんですね」
「…今日は少し貴女に用事がありまして」
「…私に、ですか?」
いつもは日が落ちる時間帯にしか来ない彼が、こんな時間に来たかと思えば、私に用事だと。…少し驚き、返答に時間がかかったが、なんとか返すことができた。
「これを貴女に渡したくて」
月彦さんが胸元から取り出したものを、団子を置き両手で受け取る。手元をじっくり見てみるものの、いまいち実感がわかなく、少し放心状態になる。
月彦さんから渡されたものは簪だった。
「こ、こんな高価そうなもの受け取れません…!」
普通の簪ならまだしも、手元にある簪はあまり知識のない私でも高価なものだとわかる品物だ。流石に受け取れないと、月彦さんに返そうとするが、手で制されてしまった。
「先日のお礼ですので、受け取ってもらわないと困ります」
「…先日のって、でも、あれは私のおかげじゃないです」
先日のというと、おそらく月彦さんが酔っ払いに絡まれていた事だろう。私はただ警官を呼んだだけで、直接助けた訳じゃないのだが、ここまでお礼を言われるとは…。
「あの、簪は大丈夫です! 私、そんな大層な事はしてないし…」
「…ではどうしましょう。私としては、何か貴女にお礼をしたいのですが…」
「…そこまで言うんだったら…」
月彦さんの悲しげな表情に胸を打たれた私は、そのまま手に持っていた簪を頭につける。
「…どう、ですかね」
少々不安げに月彦さんに問うてみる。…似合っていなかったら凄く恥ずかしいが。
「…やはり私の目に狂いは無かったようですね、似合っていますよ」
そう言いながら月彦さんが私の額に口付けをした。
「つつ、月彦さん?」
「…全く、大変愛らしいですね、貴女は」
近所にある此処は老夫婦が経営しており、客足はちまちま。だがこの町で愛されている団子屋だ。
「珈琲ちゃん、そろそろ休憩入って良いわよ〜」
おばあさんから団子と共に受け取った言葉をありがたく思い、店の片隅にある長椅子に座る。
休憩時間はいつも賄いの団子と決まっているのだ。…これ目当てで手伝いをしている節は半分ぐらいある。
早速いただきます、と行儀良く団子を口に運びかけた時だった。隣に誰かが座った気配がして、思わず咄嗟に団子を腰まで下げる。ゆっくりと隣を向くと、そこにはよく見る常連さんがいたので、私は固くなっていた肩を緩めて、話しかけることにした。
「月彦さん、今日はお早いんですね」
「…今日は少し貴女に用事がありまして」
「…私に、ですか?」
いつもは日が落ちる時間帯にしか来ない彼が、こんな時間に来たかと思えば、私に用事だと。…少し驚き、返答に時間がかかったが、なんとか返すことができた。
「これを貴女に渡したくて」
月彦さんが胸元から取り出したものを、団子を置き両手で受け取る。手元をじっくり見てみるものの、いまいち実感がわかなく、少し放心状態になる。
月彦さんから渡されたものは簪だった。
「こ、こんな高価そうなもの受け取れません…!」
普通の簪ならまだしも、手元にある簪はあまり知識のない私でも高価なものだとわかる品物だ。流石に受け取れないと、月彦さんに返そうとするが、手で制されてしまった。
「先日のお礼ですので、受け取ってもらわないと困ります」
「…先日のって、でも、あれは私のおかげじゃないです」
先日のというと、おそらく月彦さんが酔っ払いに絡まれていた事だろう。私はただ警官を呼んだだけで、直接助けた訳じゃないのだが、ここまでお礼を言われるとは…。
「あの、簪は大丈夫です! 私、そんな大層な事はしてないし…」
「…ではどうしましょう。私としては、何か貴女にお礼をしたいのですが…」
「…そこまで言うんだったら…」
月彦さんの悲しげな表情に胸を打たれた私は、そのまま手に持っていた簪を頭につける。
「…どう、ですかね」
少々不安げに月彦さんに問うてみる。…似合っていなかったら凄く恥ずかしいが。
「…やはり私の目に狂いは無かったようですね、似合っていますよ」
そう言いながら月彦さんが私の額に口付けをした。
「つつ、月彦さん?」
「…全く、大変愛らしいですね、貴女は」
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