溶けてもいいかな
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ああ、びっくりした。
僕は顔には出ないタイプだけれど、頬と耳が熱い。
場所は資料室。ファイルの山を整頓し終わった僕は、水筒のお茶で喉を潤した。
ため息が出る。
「楊戩さん汗かいてます?掃除すると暑くなりますよね」
生徒会室に戻り、着席した僕。隣席の椋くんがクーラーの設定を触りに席を立った。
「ああいいよ、気をつかってくれてありがとう」
季節は4月の終わり、ファイル整理はたしかに一汗かいたけどすぐ引くものだ。
席に座り直して、僕は資料室の整理整頓、椋くんは生徒会室の掃除、やっと終わったねと雑談した。
すると椋くんが机の引き出しからお菓子を取り出した。
「楊戩さんこれあげます」
個包装になっている一口サイズのクッキー。
女の子って、お菓子持ってる率高いのかな。
「ありがとう、これさっき資料整理整頓してたら華依にも貰った」
「あ、かぶりましたね」
「姉妹揃って同じお菓子持ってるんだね」
「姉さんがくれたんですけど、けっこう美味しくて好きなんです」
「へえ、あんまり味覚えてないから助かるよ」
「おぼ、覚えてない?え?」
「いや、あはは」
勝手にひとりで喋ってしまったな。お菓子を食べると今度はちゃんと味がした、美味しい。今度買おうかな。
「ねえ椋くん」
「はい」
「キミのお姉さん、やっぱり可愛いね」
「へ?」
1時間前
すこし華依とおしゃべりしたんだ。僕を見つけた華依が部屋に入ってきてくれた。
たくさんのファイルの仕分けをしている僕を見て「もー、また重労働してる」と気にしてくれてた。
これくらいなんとも思ってないけど、華依にかまってもらえるのは大好き。
僕は運んだり、彼女は紙ゴミを集めてくれたり、動きながらただおしゃべりしていた。ほんの少しの間だけど、ふたりでいられるのは嬉しいよね。
部活へ行くからと退室しようとした彼女、何か思い出したような顔をしたあと、ポケットから出てきたのはひとつのお菓子だった。
「これ好きなんだ〜」
「へえ、クッキー?」
「ね、楊戩あーんして」
「へ?」
包装をときながら、言ってくる。子どもに言うようなことを言われた気がする。
あのさ華依、口が"あ"の形になってるけど、それは真似しろって事かい?
年下扱いされるのはちょっと……でも華依が言ってるし……聞いてあげたいよね。
でも、恥ずかしくないかなこれ。
「えと……はいはい、あーん……」
彼女の指から、ころんと口の中に運ばれた焼き菓子。
にこりと微笑む華依。
「ということがあってね」
「あはは、姉さんがやりそうですね」
「ふふ、世話焼きだよね」
椋くんは華依のことを僕より知っているから、軽く聞いて笑ってくれた。
だから、僕もホッとして笑うことができた。
僕の彼女は年上だ。だから、こんなことされると僕のことを「かわいい」だとか「甘やかしたい」って思っているのかなと複雑な気持ちになる。
あーん、の件は、付き合ってあげたとばかりに澄ました顔でお菓子を噛んでいた僕。
もちろん格好つけてるだけ。冷静を保っていたい。
でも、彼女が部屋を出たあとじわじわと来た。
本当は行為がすごく嬉しくかったからだ。
僕は照れてしまった。
次はダメかもしれないな。
彼女の前でなら、可愛くいてもいいかな?って思ってしまった自分がいたから。
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