第2話 それぞれの思惑
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「お待たせ。はい、これ資料ね」
「はぁーー…今日は実地訓練じゃないのかよー…」
机に突っ伏し両手をなげだしイザベルが退屈そうに言った。
その隣にはリヴァイとファーランも座っているが、全員やる気がなさそう。
「うわぁー何か難しそう」
資料を手にしたファーランが溜め息をこぼした。
「まぁ、そう言わずに。1度理解できればそんなに難しい話ではないのよ」
その理解までが大変なんだよなぁーとイザベルはさらに悪態をつく。
「ハイハイ。次の壁外調査まであまり時間がないんだから。あなた達にはどんな手段を使ってでも叩き込んで貰わないと困るの」
アデリナは手を叩くと集中するよう促した。
黒板を使い、分かりやすいよう図解し、口頭で補足しながら説明を行う。
面倒そうにしながらも一応は話を聞いているようだ。
「何かここまで質問は?」
「ハーイ!」
「はい、イザベル」
手を上げたイザベルを指差す。
「オレ達も一番前行ったりするの?」
「いいえ。まだ、配置については協議中だけど、新平を初列には配置しないはずよ。巨人と遭遇する確率で言うと絶対的に高いからね」
ふーんそうなんだ、とイザベルは両手を頭の後ろに組む。
あまり危機感を感じていないようだった。
「じゃあ、班長は俺達と一緒に次列以降のどっかに入るんですか?」
今度はファーランが右手を軽く上げて質問をした。
アデリナの実力が兵団の中でも一目置かれていることは何となく理解していた。
「同じ隊だから本来は私もあなた達やフラゴン分隊長と同じ配置になるはずだったんだけど、もしかすると私だけ中央に配置される可能性が濃厚なの」
「ならお前は壁外では俺達と行動を共にしねぇんだな」
珍しくリヴァイが口を開く。
「そうね。フラゴン分隊長が見てくれるはずだから心配はいらないわ。それとも、私がいなくて都合がよかったと思った?」
フラゴン分隊長より口煩いものね。とアデリナが笑うとイザベルはネチネチ言うあいつよりはマシだぜ!と答えた。
「班長レベルの人なら初列で巨人相手にする方が良いんじゃないっすか?」
「買い被りすぎよ。まあ、だとしても私はこの長距離策的陣形の指揮を取るエルヴィン分隊長の補佐として入る予定だからそこに配置される事はないわ」
長距離策的陣形の見取り図を指してこの辺りね、と伝える。
「ふーん」
「あと、この陣形は通常種にしか対応できないの。奇行種は予測できない行動を取る。くれぐれも注意するのよ」
「奇行種…って何だっけ?」
チラッとファーランを見たイザベル。
ファーランは苦笑を溢しながら奇行種について説明する。
「すごいじゃない。ファーラン大正解!」
「あ、あざっす…」
笑顔で拍手をしてたたえるアデリナにファーランは少し照れたように頭をかいた。
リヴァイが横でフンッと鼻を鳴らすと、ファーランは気まずそうに口をつぐんだ。
「リヴァイからは何か質問はない?」
「ねぇよ」
「そう。ならいいわ。じゃあ、今度は信煙弾の説明するわね。これは最も重要なことだからしっかり覚えておくのよ」
再びチョークを手にしたアデリナは信煙弾の説明をさらさらと黒板に書き出して説明した。
「はい、じゃあ問題!前から15m級の巨人が走ってきました。明らかに団体を狙っています。何色の信煙弾を打ち上げますか?イザベル答えて頂戴」
「えっと、巨人が来たら…赤だ!」
指をアデリナに向けて勢い良く答える。
どうだ、あってるだろう!?と分かりやすく顔に書かれている。
「正解よ」
アデリナが指で丸を作って見せるとアデリナはガッツポーズをした。
「では、南から赤い信煙弾が上がりました。間もなくして緑の信煙弾が南から西に向かって上がりました。さて、ファーランはどう判断してどう行動をする?」
「南から巨人が向かって来た合図を見て多分エルヴィン分隊長が緑の信煙弾を撃ったんだ。で、西向きに緑の信煙弾だから俺達は西に進行方向を変えるんだな!」
「惜しいわね。1つ行程を飛ばしてるわ」
「ええー!何だ!?」
ファーランは何だっけ?と首を傾ける。
「分かる?リヴァイ」
「……俺達も西に向かって緑の信煙弾を撃たなきゃならねぇ」
「そうリヴァイの言う通り。この陣形はこの図案で見るより遥かに広範囲での行動になるから、進行方向を示すこの煙弾は見たら自分達も撃ってあげないと以降の班に見えなくなってしまう可能性があるわ。そうすると陣形は乱れ、死者が増えるかもしれない」
「あー!そっか!そうだった!」
いっぺんに色々考えなきゃならねぇから難しいぜ、と言うファーランにイザベルがオレは分かったけどな!とどや顔で言う。
「最後にもう1個リヴァイに簡単な問題。巨人が1体走ってやって来ました。ですが、自分達を無視してさらに先へ走っていきます。何色の信煙弾を上げますか?」
「黒だろ」
興味がなさそうにしながらもきっちりと答えるリヴァイにアデリナは笑顔を浮かべる。
「大正解!ついでに言うと奇行種を見つけたら基本的にその場で戦闘することになると思ってて。殺られる前に殺るのよ。…今度他の新兵も交えて長距離策的陣形の実践的訓練があるからそれまでにしっかり叩き込んでてね」
質問ならいつでも受け付けるわよ!とアデリナは黒板の文字を消しながら言った。