第1話 調査兵団
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「さ、沢山食べてね」
「あ?」
「あのー、何すか?これ…」
「すっげー!ご馳走じゃん!」
アデリナが3人を連れてきたのは食堂。
誰もおらず、アデリナ達4人だけだった。
「どういうことだ…」
状況が呑み込めないのかリヴァイがアデリナを見る。
「あなた達の歓迎会。あなた達を良く思っていない人達もいるのは事実だし、嫌な思いも沢山させてしまうかもしれない。だけど、少なくとも私は歓迎しているわ」
「…俺達は、そんなもの望んじゃいねぇ」
リヴァイは眉間にシワを寄せるとフイッと顔を背けた。
「あなた達が何を望んでいるのか私には分からないけど、私はあなた達が人類にとっての希望だと信じてる」
「アデリナ、班長…」
いつもと違う、憂いを帯びた笑みにファーランも言葉を詰まらせる。
――3人だけの秘密。
自分達の真の目的は、ある資料の奪還とエルヴィンの命を奪うこと。
そんな依頼を遂行するために入団を決めた自分達に向けられた勝手な望み。
アデリナが勝手に抱いた望みなのに、何故か裏切ってしまったような後ろめたい気持ちにさせられる。
イザベルも同じようなことを考えているのか、下を向いて拳を握りしめている。
地下街でゴロツキと呼ばれた自分達を歓迎してくれた人は初めてだった。
「俺はお前の希望とやらになるつもりはねぇ。俺のやりたいようにやるだけだ」
「…分かってる。それで良いの。だけど、無茶だけはしないでね。どんな形であれ、あなた達はもう私の部下なのだから…」
そう言うと、パッと明るい表情に切り替えたアデリナがイザベルの肩を掴み座らせる。
「さ!今日は特別私の奢りよー。お肉も中々手に入らない物よ。紅茶も良いやつ買ってきちゃった。だからどんどん食べてね!」
「ほ、本当に全部食っても良いのか!?」
よだれを滴しながら目を輝かせるイザベルにアデリナは勿論!と手を合わせる。
「ほら!ファーランもリヴァイも座って!お腹いっぱい食べてちょうだい」
「あ、はい…」
ファーランはリヴァイの様子を伺う。
「兄貴も一緒に食べようぜ!こんなご馳走一生生きてても食えねぇかも知れねぇもん!!」
イザベルのキラキラとした瞳がリヴァイを捉える。
「……ハァ、仕方ねぇ…」
「いやっほーーい!」
「じゃ、遠慮なく。頂きます!!」
ファーランも本当は食べたくて仕方がなかったのだろう。
リヴァイの同意も得られ、飛び付くように席につくとイザベルと並んで食事に手をつけた。
「慌てないでゆっくり食べて」
リヴァイは少し離れた位置の椅子の埃をハンカチで払い腰掛ける。
美味しそうに食事にがっつくファーランとイザベルを優しく見守るアデリナを横目で見た。
「(何を考えているのか、読めねぇ…)」
リヴァイが今まで一度も向けられたことのないその柔らかい笑顔がとてつもなく居心地悪かった。
「リヴァイ。食べないの?」
「…いらねぇ」
「そう。なら、紅茶はどう?」
2つのティーカップに注がれた鮮やかな赤褐色の液体。
爽やかな香りがリヴァイの鼻を擽る。
「はぁ、美味しい…」
アデリナは紅茶で喉を潤すと目を瞑り味と香りを楽しむ。
それを見て、少し悩んでからリヴァイもカップに手を伸ばし、口に含む。
「――悪くねぇ…」
ぼそりと呟いた。
「ぷハッ!何、その持ち方!」
紅茶を吹き出しかけたアデリナがリヴァイの手元を指差す。
「ああ?」
取っ手を持たず、上から淵を掴む独特の飲み方にアデリナは笑いが止まらない様だ。
「ん?そういや昔からだよな」
「兄貴らしさが出てていいじゃねぇか!な、リヴァイの兄貴!」
「…うるせぇ。どう持とうが俺の勝手だろうが」
「勝手だけど、それは、ふふっ!飲みにくいじゃないの!どう考えても!」
笑い転げるアデリナにリヴァイは苛立っているようだったが、ファーランやイザベルが笑っているのを見て、満更でもなさそうだ。
「うるせぇっつてんだろうが。殺すぞ」
「や、ちょっと!照れ隠しに殺すのはやめてちょうだい!ンフフ!」
「あ!?誰が照れ隠しだ!?」
「ちょっ、落ち着けってリヴァイ!らしくねぇよ!」
「兄貴!ほら!これもすっげぇ美味いぜ!」
「オイ!やめろ、イザベル!服が汚れたらどうする!」
「コラ!危ねぇって!2人共大人しくっ…!」
「アハハハ!あなた達本当に仲が良いのね!」
薄暗い部屋の中で、暫く賑やかな声が響き渡っていた。
第1話 了