第1話 調査兵団
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パカラパカラッ
「イザベル合格」
「へへ!やったぜ!」
「ファーランも大丈夫ね。合格」
「よっし!」
「リヴァイも問題ないわ。合格よ」
「……」
乗馬は誰が教えるでもなく、3人とも見事乗りこなして見せた。
「あなた達は物怖じしないから、馬も安心するのでしょうね。彼らは繊細な動物だから、乗り手が不安がると馬も不安になる」
アデリナは自分の馬を連れて馬小屋に繋ぐ。
首元を撫でてやると馬も顔を擦り寄せてきた。
「あなた達も馬を繋いで。次は立体起動について教えるわ」
アデリナに着いていき、与えられた立体起動装置を手早く装着する。
「それがこれからあなた達が使う専用の立体起動装置よ。大事に使いなさいね。よく、見よう見まねでエルヴィンを唸らせるほど使いこなしたわね。素直に尊敬するわ」
ベルトの微調整を行っている3人を褒めれば、イザベルだけが鼻高々嬉しそうに笑った。
「まあ、俺たちも必死だったし…なぁ、リヴァイ」
「……ああ」
「あなた達、刃の使用をしたことは?」
アデリナは腕をクロスさせ操作装置に刃を差し込むと引き抜いて見せた。
「おお!」
イザベルが目を輝かせる。
「いや、ない」
「そう。あなた達が上手に使いこなしていたこの操作装置、この先に刃を装着するの。このスイッチを押せば取り外し出来る」
各々、アデリナの説明通り、やって見せる。
「なるほど」
「巨人と戦うことになればこの素早い操作が必要になるわ。常に刃を刺しっぱなしと言うわけにはいかないこともあるし、刃も消耗品。戦いの途中で交換しなければならないこともあるからね」
アデリナは開けた場所から木々の生い茂る場所へ移動する。
それに大人しく続く3人。
「なぁ…まさかあの女が直々に教えにくるなんてな…」
ファーランがリヴァイに囁くように声をかける。
「あれだろ、班長だろ?」
班の中では2番目に偉いんだよな、とイザベルが言う。
「ああ。こういうのは下っ端の奴らにやらせそうじゃん」
リヴァイは自分の前を歩くアデリナに視線を向ける。
自分達が来たときから変わらない跳ねるような軽やかな足取りが妙に腹立たしい。
「名ばかりのお偉いさんもいるようだがな」
随分離れた位置から不満そうな表情を浮かべたまま、腕を組みこちらを見ているフラゴンを横目にリヴァイは言った。
「確かにそうだよな。けど、ターゲットは分隊長だろ?」
「オイ、イザベル。ターゲットと呼ぶな、俺達は今――」
「何の話をしているの?」
「「「…!!!」」」
ぬっと3人の間に顔を突きだしてきたアデリナにゴロツキの時の癖かサッと距離を取り構える。
「何をそんなに怯えているの?」
「ハッ!怯えるだと?てめぇ、あまり――」
「よせ、リヴァイ!す、すみません。ちょっと地上に出て浮かれちゃって」
ゆっくりとアデリナに向かって踏み出していったリヴァイの肩を掴みファーランが引き留める。
「班長!は、早く行こうぜ!」
イザベルが早く立体起動をしたいと先を指差す。
「…そうね。行きましょう」
アデリナは再びくるっと向きを変えると元目指していた方角へと歩いていく。
「リヴァイ、あいつ、近づいてきたのに気づいたか?」
「……いや、いくら話し込んでいたとはいえ、足音さえ聞こえなかった」
「最初に会った時から、あの女が苦手だぜ…」
さっきの話を聞かれていたのか、はたまたそうではなかったのかはわからないが、アデリナは機嫌良く鼻唄を歌いながらまたあの足取りで進んでいく。
「(あの、妙な歩き方はそのため、か?)」
「この辺でいいかなー」
アデリナの歩みが止まり、ほとんど森と呼べる場所へたどり着いた。
あらゆる場所に巨人の模型が配置されており、そこが訓練場であることが分かる。
「巨人は大体3m~15mくらいの身長があるのだけど、どれもみんな弱点はうなじ。後頭部より下のうなじにかけての縦1m幅10cmを削ぎ落とせばいい」
「うわっ!」
アデリナはイザベルの背後に回ると、イザベルのうなじにスッと爪を這わせた。
「や、やめろよ!気持ち悪いだろ!!」
「ふふ、ごめんなさいね」
全く悪びれる様子なくアデリナは微笑んだ。
「あの、それ以外のところを切っても死なないのか?」
「死ぬどころか、暫くすれば再生する。だけど、一時的に動きを封じるために足を落としたり、腕を落としたり、目を潰したりすることもあるわ」
「うげぇ!」
気色が悪いな、とイザベルはベーッと舌を出す。
「そう言うけど、これからは当たり前にやらなければならないのよ」
笑顔のまま中々グロテスクな話をするアデリナだが、リヴァイ達も血生臭い世界を生きてきた。
「別に躊躇なんざしねぇよ」
「そうね、人間を相手にするより少し気持ちは楽かしら」
アデリナがそう言うとリヴァイは鋭い瞳を向けた。