第4話 心の変化
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「壁外調査の日は差し迫ってきているわ。そろそろ本腰を入れないとね」
腰に手を当ててにっこりと微笑むアデリナの顔をイザベルがまじまじと見つめる。
「どうしたの?イザベル」
「え?あ、いや……。何でもない」
慌てて目を反らしたイザベルにそう、と返したアデリナは再び3人を見渡した。
「乗馬、立体起動、巨人の倒しかた、長距離索敵陣形。これまで色々と短時間で詰め込んできてしまったけど、3人とも良くやったわ」
本当に素晴らしいと拍手を送るアデリナにイザベルとファーランは誇らしげに顔を見合わせる。
「とても筋が良いからどんどん訓練をして精度を磨いていくともっと成長すると思うわ。鍛えて損はないからね」
「あー!外に出るのが楽しみだぜ!」
空を見上げてイザベルが叫ぶ。
「ふふ、そうね。早くあなたたちにも壁外の空気を吸わせてあげたい。でもね、一つだけ約束してちょうだい」
スッと真剣モードの表情に切り替わったアデリナに3人の表情も強ばる。
「絶対に生きて帰ること。無理をしちゃダメ。自分の力を過大評価してはダメよ。前にも言ったけど、それは自分も仲間も殺すことになる。あなたたち含め今年入団した人たちは本物の巨人を見たこともない」
正直言って3人ともあまり危機感を感じていないように思えた。
本物の巨人を目にして、目の前で仲間を喰われた事もあった。
そうした経験のない3人がアデリナたちと同じような緊張感を持てと言うのは難しい話なのかもしれない。
ましてや、この3人は地下街出身で教科書上での人類がいかに巨人の驚異に晒されていたのかという歴史すらまともに知らないはず。
「巨人は待ってくれない。見境なく人間を補食するわ。新人であろうと玄人であろうと関係ないの」
いつにもなく真剣に伝えるアデリナを見て、3人にもその緊張感は少なからず伝わったようだった。
「私とあなたたちが別の配置になることはほぼ正式に決まっているみたい。壁外に出てしまったら助けに行くことが出来ない。勿論、フラゴン分隊長や班のメンバーがいるからフォローはしてくれるけれどね」
「お前はどこに配置されている?」
リヴァイが口を開く。
「五列中央よ。エルヴィン分隊長や団長と共に指揮を執る位置にいる」
「……そうか」
何を考えているのかは分からないが、行動を起こすのなら今度の壁外調査の時がチャンスとでも思っているのだろう。
出来れば余計なことは考えずに壁外調査だけに集中してほしいのだが、そうは行かないらしい。
少し寂しそうに眉を下げるとアデリナはイザベルの頭を優しく撫でる。
イザベルは恥ずかしそうに笑った。
「さあ、今日の訓練を始めましょう」
アデリナが立体起動で飛ぶと、それを追ってリヴァイたちも飛ぶ。
連携を意識してチームで行動することがいかに大切であるかをアデリナは教えておきたかった。
1人でも多くの人間を生き残らせるために。
「イザベルは左足!ファーランうなじ!」
「はああ!」
「よっしゃ!」
「右に2体いるわ!リヴァイとファーランは2時の方向仕留めて!イザベルは私と4時の方向!」
アデリナの指示通り、無駄な動きなく次々と模型の巨人を倒していく。
満足そうに微笑むと、アデリナは地面に着地する。
「いいわ、ばっちりよ。次はリヴァイ。あなたが指揮をとってちょうだい。私は離れたとこから見てるから」
「あ?」
「新兵が指揮を執ることはまだないけど、万が一があるから。やっておいて損はないわ」
そう言ってリヴァイの背中を小気味良い音をたてて叩いた。
リヴァイは一瞬驚いた様子だったがすぐにチッ、と舌打ちをした。
そんなことはお構いなしにアデリナはアンカーを射出し飛び立った。
その後暫く訓練は続いた。