第4話 心の変化
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「アデリナ、仲直りできたかい?」
「ハンジ…。うん。ありがとう」
食事の席で会ったのはハンジ。
いや、会いに来てくれたのだろう。
アデリナの横に座るとハンジは顔を覗き込んだ。
「目が真っ赤だよ」
「ウソ…、泣いたのバレるかしら」
「まあ、割りと大勢の兵士に見られてたからみんな納得するくらいじゃない?」
「……そうだったわね。役職がつくと小さな事でも目立つから嫌だわ」
ムスッと頬を膨らませたアデリナを見てハンジは軽快に笑い飛ばす。
それくらいの方がアデリナの心は救われる。
「エルヴィンと仲直りする直前にリヴァイに会ったの」
「へぇ、それはまた嫌なタイミングだね。気まずかったろう?」
パンを貪りながらハンジは肩を竦めた。
「そうね。だから逃げようとしたのだけど、彼がそれを知るはずもないから引き留められたの」
「え?リヴァイが?」
驚いた様子のハンジにアデリナは頷き返すと、少し考えるようにしてパンを飲み込んだ。
「何て言うか…意外だったよ。人に干渉しないっていうか、したがらない感じだし」
「私もそう思ってた。ファーランは愛想振り撒くのは上手じゃない?イザベルも好き嫌いは激しいけど活発だからそれなりに人と交流はしているわ。けど、リヴァイってそうじゃないから…」
「馴れてきたんじゃない?君も随分献身的にやってるみたいだし」
「…そう、だと嬉しいわね」
照れるようにはにかむアデリナを見てハンジも微笑んだ。
それが本当ならきっとそれだけで彼女は報われた気持ちになる。
「今日も彼らの訓練に入るんでしょ?」
「ええ。彼らの訓練のお陰で私も良い訓練になるわ」
「そっか。まあ、良い関係じゃないか。他の2人も懐いてきてるみたいだし」
ほら、とハンジが指をさす方向に目を向けると窓越しにイザベルが手を振っていた。
その後ろに困ったように頭を掻きながら頭を軽く下げるファーランもいた。
「あらぁ、お迎えまであるとは思わなかったわ」
眉を下げたアデリナだったが、どこか嬉しそうだった。
「じゃあ、お先」
「うん。頑張っておいでよ」
ひらひらと手を振るハンジに見送られてアデリナは2人が待つ外へ出る。
窓越しに合流したアデリナを見てハンジは笑みを溢す。
「ねえ、モブリット。アデリナってちょっと変わったと思わないかい?」
近くに座っていたモブリットに問いかけると、モブリットはイザベルの頭を撫でるアデリナを眺めて首をかしげた。
「うーん、そうですかね…?元々明るくて気立ての良い方ですし」
「まあ、そうなんだけど。前はもっとこう、浮き足だったような足取りもずっと笑顔なのも、彼女が人を一定以上近づけない様にするためのものなんじゃないかなーって思ってたんだよね」
「あー…、確かにアデリナ班長って可愛らしい跳ねるような歩き方ってされますね」
あまり気にしていませんでした。とモブリットは考えるようにして答える。
「本人は身を隠すのに便利だからとか言ってたけどね」
「本人に聞いたんですか…」
呆れたように呟くモブリットにハンジはだって気になるだろう!?と興奮気味に答えた。
「どういう意味だったんですか?それって」
「特徴的な音が聞こえてたものが突然ピタって止んだら不思議に思わない?」
「ああ、確かに気になりますね」
「その瞬間その人は注意散漫になるんだって。その隙を狙えるらしいよ。あと、足音で誰かなのかある程度判断つくようになってると不意にやめられるとアデリナ本人なのか分からなくなって翻弄にも使えるってさ」
へぇーとモブリットは頷くが、正直本当なのかどうか分からない。
あくまでアデリナの個人的見解らしい。
「けどさ、彼女、訓練や実践になると普通の歩き方に戻るんだよ。むしろ普通の人より静かだよ」
「え?そうなんですか?知りませんでした…」
「多分それが本来の歩き方なんだと思う。貴族出身の彼女があんな歩き方するはずがないからね」
ハンジは硬いパンを噛りきりながら、すでにアデリナの姿はなくなっている窓に目を向けた。
「確かにそうですね」
モブリットも同じようにして窓に目を向けた。