第1話 調査兵団
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「正直言って屈辱的です!!」
リヴァイ達を引き入れる話を持ち込んだが、やはり素直に頷いてくれるものは少なかった。
過酷な訓練を積み、努力を惜しまずここまで登り詰めた者達にとって、地下街で拾ってきた犯罪者を同じ仲間として受け入れるのは二つ返事で済ませられるものではない。
「私もフラゴンと同意見です。しかも、今度の壁外調査に連れていくなど!」
「君たちの懸念は理解できる。だが、立体起動の腕は私が保証する」
「それに、エルヴィンが考えた新陣形は画期的だ。これまでのいかに巨人を倒すかではなく、いかに巨人と遭遇しないか、そこに重きが置かれている。確実に兵団の被害は減るだろう」
被害を減らすことが出来ると確信していると告げるエルヴィンにアデリナも頷く。
「皆さんも読んだでしょう?素晴らしいアイデアだわ、エルヴィン。陣形くらいなら新人さん達でもすぐに覚えられると思います」
「あとは規律を叩き込むくらいならそう時間はいらんだろう。バカではないらしいからな、エルヴィン」
「はい」
「では、以上だ」
他の者はあまり納得出来ていなさそうだったが、団長が有無を言わさず解散させる。
「エルヴィン、私は必要なかったみたい」
「いいや。そんなことはない。君が賛成の立場にいてくれたことは重要だった」
「ふーん?そうかしら…」
「全員、注目ーー!!今日から我々と共に戦う3人を紹介する!お前達皆に挨拶をしろ」
調査兵団の兵士を集め、その前に立たされたリヴァイ達。
「リヴァイだ」
「リヴァイ…貴様はまず規律を叩き込んでもらえ!次!」
ファーランとイザベルはまだ良いが、リヴァイは腕を組み人を見下す視線を兵士達に向け、到底新入りとは思えない態度だった。
小柄な彼だが、威圧感はある。
兵士たちがざわつくのも仕方がない。
「イザベル マグノリア!よろしく頼むぜ!」
グッと親指を立て自身を指しながら一歩前へ出たイザベル。
「ファーラン チャーチ、です」
間違った敬礼をし、格好つけたファーラン。
特例の入団に兵士達は唖然と見守る他ない。
「フラゴン、3人はお前の隊に入る。面倒を見てやれ」
「は、え…?自分の隊ですか…?」
「不満か?」
「い、いえ…」
反対していたフラゴンが指名され明らかに不満そうだったが、団長には逆らえず言葉を飲む。
「エルヴィンではなく…?」
「彼には全体指揮の補佐を任せる。新兵はお前の担当だ。いいな!」
「はっ!承知しました!」
敬礼をとったもののフラゴンの表情は歪む。
「フラゴン」
「は、はい!!」
解散かと気を抜きかけた時に再び名前を呼ばれ、フラゴンは声を裏返す。
「安心しろ。同じ班にアデリナがいるだろう。教育係として協力させる」
「よろしくお願いします。フラゴン分隊長」
「えっ!あ、ああ…」
どこか楽しそうなアデリナにフラゴンは眉を寄せた。
アデリナは団長に向かって敬礼をした。
リヴァイは興味なさそうに、あらぬ方向を見ている。
その後解散したアデリナは先に兵舎へと戻ったリヴァイ達を追った。
「お邪魔しまーす」
「何だ!?」
突然部屋に入ってきたアデリナを警戒するように構えた3人だったが、アデリナは気にすることなく笑顔のまま手をふった。
「イザベル、だったかしらね。あなた…女の子だから別棟のお部屋よ?」
「し、知ってる!けど、オレもみんなと一緒が良い!」
「あら?なら、私と一緒に寝る?」
駄々をこねたイザベルにアデリナはにっこりと笑顔で言う。
「…あ、い、や、やっぱりやめとく!」
「そう、残念ね。…あなた元気いっぱいで面白いわね、イザベル。ファーラン、あなたは世渡り上手そうね。だけど、相手を選ばないと駄目よ。…リヴァイ、あなたはバカ正直ね」
「あ?」
リヴァイはアデリナを睨み付け一歩踏み出す。
リヴァイよりも少し背は低く、兵団の中でも一二を争うほど小柄なアデリナだが何に対しても怯むということを知らないらしい。
「全部顔や行動に出てる。潔癖症なの?」
先程からリヴァイの視線は部屋のあちこちに向き、時折家具に指を滑らせていたのをアデリナは見逃していなかった。
「けど、無駄よ。あなた達が来る前に、私がお掃除したんだもの。チリひとつないわ」
確かに、リヴァイが滑らした指には埃ひとつ付着していなかった。
ベッドの裏や窓のサッシあらゆる所をアデリナが来るまでも見ていたが、家財は古いものの文句の付け所がないほど綺麗に清掃されていた。
「あなたなら綺麗に使ってくれそう。頑張った甲斐があったというものね」
1人ペラペラと話すアデリナに3人は怪訝な顔をした。
「…何の用だ、クソガキ」
「お、オイ、リヴァイ!」
喧嘩を売るような口調のリヴァイに慌ててファーランが間に割って入る。
「ふふっ、ガキと呼ばれるほどガキではないのだけれど。まぁ、確かにあなたよりは年下かも」
「いやぁ、別に俺たちは年齢とかそんなの気にしてませんから!」
相変わらず睨み付けたままのリヴァイを取り繕うにようにファーランが両手を広げる。
殺気を感じ取ってかイザベルはリヴァイの後ろでウーッと唸っているように見える。
「そうね。私が年下であろうと上司は上司。それが嫌なら登り詰めれば良い。そうでしょ?ここは割りと実力社会なのよ」
「そう、ですね…」
「……改めてよろしくね。教育係にされちゃったし、仲間としてこれから仲良くやっていかなければならないのだから。あまり敵意を剥き出しで来られたら寂しいじゃない」
そう言い残すとアデリナはくるっと向きを変えて部屋の外へ出る。
「イザベルはちゃんと自分のお部屋に帰るのよ?ふふ、じゃあ、またね」
パタンとドアが閉められ、足音が遠ざかる。
その足取りはやはりとても軽いものだった。