第1話 杖の導き
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………見ない顔ですね
………禁じられた森の近くに…
………いったいどこから…
………君たちはもう、戻り…
「っ…」
うっすらと感じた人の気配にリョウは身動いだ。
ゆっくりと体を起こすと、自分がベッドに寝ていたことを知る。
そして足元には5人の老若男女がリョウを見つめていた。
現状を理解できないリョウも5人を見つめ返すしか出来ない。
「…あの……」
沈黙に耐えられなかったのはリョウの方だった。
「君は何者かね?」
白髪の長い髪と髭を蓄えた老父がリョウの瞳を見る。
半月型眼鏡の奥の青い瞳はこの世の全てを見透かしているかのようで、何だか居心地が悪い。
「…翔廻、…凌羽です………」
何者か、その意味はわからなかったがとりあえず何か答えないと、という衝動に駆られ名前を告げる。
「ここの生徒ではないですね。どうやってここに入ったのですか?」
老父の隣に立つ全身を黒い服で身を包んだ女性が半分捲し立てるように聞いてきたが、その意味も理解できなかった。
「あの、ごめんなさい。ここはどこですか?どうやって入ってきちゃったのか私もわからないんですけど、気がついたらここにいて…」
白いエプロンドレスを来た女性が何か言おうとしたのを遮る形でリョウは必死にアピールした。
なぜなら、5人は皆外国人であり、日本人に囲まれるより恐怖していたから。
言葉が通じるだけ幸いした。
「あー、ここは、ホグワーツ魔法魔術学校……だよね……?」
赤毛の少年が周りの顔を伺いながら自信なさげに答えた。
赤毛の子の隣にいた眼鏡の少年も深く頷く。
「さよう。ここはホグワーツ魔法魔術学校じゃ。ここの関係者以外決して入れぬのじゃ。誰かが手引きせん限りの」
5人の目がリョウを探り見る。
「ま、魔法?ホグワーツ、ですって?」
現実世界に魔法なんてあるわけがない。
何かの宗教団体?
ホグワーツ?
ハリポタのファンの集い?
それとも夢を見ているだけ?
「答えによっては只ではすみませんよ!」
「そ、そんな…手引きをするだなんて、私はただこれを!……これを…手にしたら………?」
咄嗟に差し出した手には1本の棒切れが握られている。
良く見ると桜の花びらの彫刻が散りばめられてあることがわかる。
「これは!」
「まさかっ!」
大人たちの顔色が変わる。
「これをどこで手にいれたのじゃ。どこじゃ!答えよ!」
「か、帰り道に……落ちて……」
「オリバンダーじゃ。オリバンダーにこの杖を見てもらうのじゃ」
黒ずくめの女性が駆けていった。
リョウは何故か、やっぱり杖だったんだと納得をする。
少年2人は状況をつかめていないのか顔を見合わせている。
「あなたたちは寮にお戻りなさい。さあ!早く!」
「あとはわしらの仕事じゃ」
「「はい、先生」」
少年たちはチラチラとリョウを振り返りながら、少し駆け足で部屋を後にした。
「それを、渡しなさい。校長に渡すのです!」
2人がいなくなったのを確認してから、エプロンドレスの女性が別の棒をリョウに向けて急かした。
リョウにはそれが武器なのか何なのかは分からなかったが、震えた手で慌てて老父に手にあった杖を渡した。
「ポートキーじゃ。これをミネルバに。至急オリバンダーに届けるよう」
「はい!」
部屋に残されたのはリョウと老父だけ。
「リョウと言ったかね」
「は、はい」
「これは自ら作ったのか?」
「いえ、違います…。そんな技術私には……」
老人の言う"作った"はポートキーを作成したということだが、リョウの言う"作った"は杖を作成したという意味で捉えた。
どちらにせよ本当の事。
泳いでいるはずの瞳は何故かその老人から離せない。
「たまたま拾っただけで、家に帰る途中に落ちてて、それで…」
「家はどこなのじゃ?」
「東京の、」
「トーキョーじゃと?まさか、日本かの?」
リョウが頷くと老父はさらに不審そうな顔をした。
その時、リョウの服のポケットからブーブーと音が鳴った。
震えているスマートフォンを取り出し確認すると、メールが1件届いていた。
時を越え
過ぎた時間は
甦り
新たな力を以て
世界を変えなん
送り主のわからないメールにはそう書かれていた。
「どういう、意味?」
待受画面に戻したところで老父がスマートフォンを覗き見た。
「なんじゃ、それは?」
「スマホですけど…」
そう答えたリョウを老父は訝しげに見た。
「アルバス!これはやはり例の物だと…」
先程走って行った女性2人が駆け戻ってきた。
「わかった。ありがとう。…彼女をホグワーツの管理下に置くこととする。知恵と力を付け、その時に備えるのじゃ。よいな」
「ええ……わかりました…」