第1話 杖の導き
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あなたは……に来ては………
……こ――れる――……
……早く――帰って――でないと………
……――――生かしてはおけぬ―――………
―――時を越えて今再び…―――
「懐かしいの読んでるね」
「……う、ん…?」
友人に声かけられてリョウはボヤける視線を上げた。
授業の合間に眠ってしまっていたらしい。
広げたままの本に視線を移してリョウは笑った。
「あはは、そうだね。図書館で見つけて久しぶりに読んでみようと思って」
「ハリーポッターねぇ。私映画しか見たことないや」
「昔好きで良く読んでたんだけど、久しぶりに読んでみると結構忘れてるもんだね」
字がいっぱいで読むの大変そう~、友人は眉を潜めた。
「もともと児童書だし、読みやすいけどね。でも、今日返さなきゃなんないんだよねぇ」
「そっか、また1日おいて借りれば良いよ」
「そうだね。…あ、もうこんな時間だったんだ。バイト行かなきゃ。ごめんね、図書館よって帰るから先に行くね」
リョウは荷物を抱え、手を振りながら学校を後にした。
「また、あの夢……」
17歳を過ぎた頃から何度も見るようになった夢。
切羽詰まったように誰かに急かされる夢。
懐かしく、悲しく辛い気持ちが残る。
起きた頃には途切れ途切れになった内容なのだが、頬に涙が流れた跡があることもあった。
夢の中身を思い出そうとするが、やはりはっきりしない。
リョウは足元に落ちる何かを蹴飛ばしかけて、不自然な形で足を止めた。
それが何なのか視線を下げると木製の棒切れが1本転がっていた。
棒切れといっても先が細くなって持ち手もしっかり作り込まれていた。
使い込まれたような感じではあるが、磨きあげられ美しい彫刻も顕在しているようだった。
「綺麗な杖――(え、杖?)」
――ドクン!!
「うぐっ!?」
棒切れに伸ばしかけた手が、突然襲ってきた頭を締め付けるような痛みのせいで止まる。
――時を…――
ドクン――
「ハァっ…!うっ…!」
頭を抱える。
視界がボヤける。
立っているのが辛い。
ドクン――
――超えて…――
「……な、何を……言って……」
ドクンッ!!!
「は、ぐっ!!」
ガクリと膝から崩れ落ちる。
鞄の中身が地面にぶちまけられ、ハリーポッターの小説がリョウの目の前に滑り出る。
パラ、パラララ……
風もないのに本のページが勝手に捲られていく。
―――――今再び―――――
頭が割れそう。
体を支えるためにリョウの手が地面に降りる。
先程拾おうとした棒切れに手が触れた。
その瞬間、リョウの頭の中がぐるりと捻れる感覚に襲われる。
それに激しい頭痛も相まって吐き気を覚える。
藁にもすがる思いで棒切れを握りしめたままリョウの姿は跡形もなく消えていった。
数分だったのか、もしくは何時間も経っていたのか、気がつけば吐き気を抱えたままリョウの身体はいつの間にか土の上にあった。
土から生える草が頬を撫でる。
「ハァ、ハァ……」
激しい頭痛はなくなっていたが、残り香のように頭の中が疼く。
「(起き上がれない……)」
「おい!あそこに人が倒れてるぞ!」
誰かの声が耳に届く。
助けを請うように手を伸ばそうしたが、肘から先が少し浮いただけでパタリと力が抜け落ちる。
そしてそのままリョウは意識を手放した。
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