盗み聞きにはご用心
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「ふむ。今宵の月は実に見事ですな」
「おお、そうじゃのう」
山田伝蔵は学園長の庵にいた。
夜の帳 が下り、ふたりは望月を肴に盃を傾ける。
その静謐な時間をしばし大人ふたりで愉しんでいたが、ヘムヘムが眼を擦り出したので、やむなくお開きとなった。
熱燗で温まった身体を撫でていく風がひんやりと心地よい。
冬の到来を感じながら、伝蔵は廊下を歩いていく。
長屋に近づくにつれ、賑わいの声が増す。
(そういえば、利吉が訪ねてきていたな……)
おそらく部屋には利吉、半助、空の三人がいる。
今戻っては、せっかくの若者たちの語らいに水を差すだろうと、伝蔵は静かに気配を消し、濡れ縁に腰掛ける。
夜景を眺めながら、部屋の外で待つことにした。
話し声が聞こえる。
「へぇ、それで?ドクタケに侵入した後はどうしたんだい?」
「はい。稗田八方斉の側近である風鬼に化けてやりすごして……」
「ええ!?よく堂々と敵の人間……しかも、八方斎の身近な人に変装できますね。それで?そのあとは?大丈夫だったんですか?」
「ハハッ、もちろん。でなければ、今私はこの場におりません。依頼主の奪われた密書を見つけるなり、すぐに脱出しましたよ」
それを聞いて、空が瞠目する姿が容易に想像された。
「やっぱり利吉さんって凄いですね!こんなに難しいお仕事を一人でこなされるなんて……!」
「凄くない、凄くない。プロなんだからやり切って当然です」
息子の仕事ぶりに、つい伝蔵の口の端が上がる。
(ふふ……若いモン同士盛り上がっている)
利吉と半助は兄弟のように仲が良い。
元々顔を合わせる度に長話になるふたりだけど、そこに女性の空が加わると場が華やぐらしく、男たちの口に益々蓋ができなくなるらしい。
(半助はあのとおり空君に惚れているし、利吉も利吉で空君と良い友人関係を築けているからな……)
青春、大いに結構!
と伝蔵はますます自室へ戻ることが憚られてしまう。
もうしばらくこの場で待機し、若者たちを見守ることにしよう。
そう決め込んだときだった。
「わぁ。土井先生のコレ、すごく大きい……」
聞いてるこっちの心臓が跳ねるような、蕩けた声だった。
――はて。大きい、とは一体……?
伝蔵の心に混乱が生じながらも、会話はお構いなしに続けられる。
戸を隔てていても、半助がもじもじと恥ずかしがっている雰囲気が伝わってきた。
「あはは……でも、いざ堂々と見せるとなると、その……恥ずかしいな」
「私……こんなに大きくて立派なの、初めて見ました……」
「そんな大げさな。男なんて、大体皆こんなもんだと思うけど。なぁ、利吉君」
「そうですね。このくらいは普通でしょう」
「へぇ……でも、すごい……」
「あんまり興味津々に見られると照れるなぁ……そんなに気になるなら触ってみる?」
「え、いいんですか?なら、お言葉に甘えて……」
伝蔵の頭の中が白一色になった。
(むむっ!?なんだ、今の会話は……?卑猥な内容に満ちていたぞ……?)
(き、聞き間違いじゃなければいいが……)
先刻の学園長との付き合いで、酔いが回りすぎているのかもしれない。
今度は正確に聞き取ろうと、伝蔵はじっと耳を凝らした。
「わぁ、すごい……ここ……男の人のコレって、こんなに硬く盛り上がるんですね……」
「空君。あ、あんまり、撫でられると……く、くすぐったい……うっ」
間違いない。
血の気が引いた伝蔵はどうしていいかわからず、思わず顔を覆った。
女のうっとりした声といい、男の身悶える声といい、頭の中でいかがわしい妄想がどんどん展開されていく。
(信じられないが……今、半助は絶対にアレを触らせてるよな?)
(告白もまだだろうに、ましてや接吻をすっ飛ばして……いきなりアレ?い、いまどきの若いモンは順序を踏まんのか!?)
(しかも、我が息 子の前で……)
どうか夢であってほしい。
そんな逃避思考に陥った伝蔵に現実は容赦なく、鈍器で殴られたような衝撃が次々と襲いかかってきた。
「あっ。利吉さんのも……すごく大きいっ……!」
「ほんっと、空さんってば、もう……大げさに反応するんだから」
「だって……こんなの見たことないから……でも、土井先生のとどっちが大きいでしょうか?見たところ、同じくらいだけど……」
「気になるなら、両方触って比べてみればいいじゃないですか。いいですよね、土井先生」
「ああ」
「それでは、お二方とも失礼します……」
思わず悲鳴を上げそうになった。
(ちょ、ちょ、ちょ、両方って!!!空君、やる気満々なの!?)
(利吉もどうしてふたりに混じるんだ!?おい、利吉、せめてお前だけでも戻ってこぉぉぉい!)
だが、心の叫びもむなしく、聞くだけで赤面ものの会話がまだまだ続いた。
「やだ……二人とも……こんな……山のように膨らんでて……すごく固い……」
「ああ、空さん……触り方が、なんかじれったいです……堪えるのが、つらい……」
「空君、遠慮しなくていい。もっと……もっと大胆に触ってくれ……くっ」
お前ら、女のフェザータッチで恍惚へと導かれるなんて、早漏にも程があるぞ!もっと堪えんかい!とつい別目線で男二人を叱咤してしまう伝蔵だった。
(しかし、困った……)
眩暈で倒れそうなほどの衝撃に堪えつつも、伝蔵は思考していた。
どうやら三人は、身体の秘めやかな部分を見せることに抵抗がないほど、抜き差しならない関係だった。
俄かには信じがたい話である。
(まさか私の目を盗んで、半助と空君ができていたとは……)
(でも、普段のやり取りがあんなにも初々しいふたりが……信じられん……)
(特に空君なんて貪欲にアレに興味を示して……清楚な顔をして意外にも好色とは。人は見かけによらぬものだ……)
(利吉も利吉だ!二人を止めるどころが、さも当然のようにふたりの傍に居て、その上「ぷれい」にまで混ざるとは……)
利吉、半助、空。
息子の利吉は言うまでもないが、過去に命を助けた半助は既に家族同然だし、忍術学園で健気に働く空にだって、陰ながら心を砕いてきた。
そんな心を許した三人が、まさか人知れぬところで淫らに戯れているとは……。
裏切り、失望感、無念さ……それらに打ちひしがれている伝蔵に追い打ちをかけるように、例の会話が続く。
「さ、今度は空さんが見せる番ですよ」
「え、見せるも何も、私にはないのにっ」
「そんなの知っているよ。でも、さっきのお返しをしないとな」
「や、やだ……」
空が身を捩る気配がした。
(おのれ……!)
だんだんと腹が立ってきた。
人がこうもショックを受けているのに、三人は知る由もなく、尚も淫蕩な享楽に耽ようとしているのだ。
しかもそこは、自分の部屋でもあるというのに。
(ここは忍術学園……曲がりなりにも教育の場だぞ!)
(人知れず逢瀬を重ねるならともかく、周りの目を気にせずに快楽に溺れるとは、言語道断!)
(特に利吉と半助には、今一度忍者の三禁を口酸っぱく教え込む必要がある!)
いくら愛の形が自由だろうと、男女三つ巴でくんずほぐれつは、流石に度を越している。
伝蔵は腹を括った。
ふしだらな悦楽にのめり込んでしまった三人を正しい道へと更生させよう、と。
伝蔵は勢いよく戸を開けた。
「こぉらぁぁあ!お前たち、一体何をしている!!」
「「「!?」」」
いかなる弁明をしようが、こんな不埒な真似は断じて許さない。
そう心を鬼にした伝蔵だったが、目の前に広がる光景を見れば、奇妙に両眉を歪ませた。
「あ、あれ……?」
利吉も半助も下半身を露出していない。
そればかりか、誰一人衣服は乱れておらず、足をぴったりと折り揃えて正座している。
普通にお喋りを楽しんでいたとしか思えないほどに。
「……」
拍子抜けしている伝蔵に、利吉たちが怪訝な視線を寄越してきた。
「ち、父上……?どうなされたのですか?私たちは、ただ雑談していただけですが……ねぇ、空さん」
「ええ。山田先生が部屋を退出されてから、今の今までずーっと三人でお話してたんですけど……そうだ。山田先生、これ見てください!」
そう言うと、空は童のようにはしゃぎながら半助の手を取った。
「ほら、土井先生の手マメ……すっごく固くて大きいんですよ!こんなに盛り上がった大きなマメってなかなか見たことなかったから、もうビックリしちゃって、」
「はは。苦無や短刀……日頃からそういう武器を扱うからな」
――手マメ?
それを聞けば、全身の毛穴からどっと嫌な汗が噴き出した。
「利吉さんだって、ほらこんなにマメが。指で押しても後戻りしないし……忍者の皆さんってよっぽど鍛練を積まれてるんですね」
「だから、空さん、その触り方くすぐったいですって……!」
利吉の手に触れながら、感心したように言う空からは「淫靡」のいの字も感じられない。
純心そのものだった。
「山田先生の手にも、きっと同じくらいの大きなマメがあるんですよね?」
空が好奇で輝く瞳を向けてくる。
(利吉たちが語っていたのはアレではなくて手マメ……単なる自分の早とちり……)
カーと頭に血が巡る。
穢れていたのは三人ではなく自分の方だった。
そうとわかれば、全身を焦がし尽くすほどの羞恥が伝蔵を苛んだ。
「うぉぉぉ!私は……なんて愚か者なんだぁぁぁ!!」
怒鳴り声をひっさげて伝蔵が戻ってきたかと思えば、すぐに走り去ってしまった。
残された人間たちは、何度も目を瞬かせている。
「一体どうしたんでしょうか、父上。あんなに顔を赤くして……」
「さぁ?学園長とお酒飲み過ぎたのかな?」
「何だか様子が変でしたね……」
三人は呆然と伝蔵の消えた方角を見つめていた。
「おお、そうじゃのう」
山田伝蔵は学園長の庵にいた。
夜の
その静謐な時間をしばし大人ふたりで愉しんでいたが、ヘムヘムが眼を擦り出したので、やむなくお開きとなった。
熱燗で温まった身体を撫でていく風がひんやりと心地よい。
冬の到来を感じながら、伝蔵は廊下を歩いていく。
長屋に近づくにつれ、賑わいの声が増す。
(そういえば、利吉が訪ねてきていたな……)
おそらく部屋には利吉、半助、空の三人がいる。
今戻っては、せっかくの若者たちの語らいに水を差すだろうと、伝蔵は静かに気配を消し、濡れ縁に腰掛ける。
夜景を眺めながら、部屋の外で待つことにした。
話し声が聞こえる。
「へぇ、それで?ドクタケに侵入した後はどうしたんだい?」
「はい。稗田八方斉の側近である風鬼に化けてやりすごして……」
「ええ!?よく堂々と敵の人間……しかも、八方斎の身近な人に変装できますね。それで?そのあとは?大丈夫だったんですか?」
「ハハッ、もちろん。でなければ、今私はこの場におりません。依頼主の奪われた密書を見つけるなり、すぐに脱出しましたよ」
それを聞いて、空が瞠目する姿が容易に想像された。
「やっぱり利吉さんって凄いですね!こんなに難しいお仕事を一人でこなされるなんて……!」
「凄くない、凄くない。プロなんだからやり切って当然です」
息子の仕事ぶりに、つい伝蔵の口の端が上がる。
(ふふ……若いモン同士盛り上がっている)
利吉と半助は兄弟のように仲が良い。
元々顔を合わせる度に長話になるふたりだけど、そこに女性の空が加わると場が華やぐらしく、男たちの口に益々蓋ができなくなるらしい。
(半助はあのとおり空君に惚れているし、利吉も利吉で空君と良い友人関係を築けているからな……)
青春、大いに結構!
と伝蔵はますます自室へ戻ることが憚られてしまう。
もうしばらくこの場で待機し、若者たちを見守ることにしよう。
そう決め込んだときだった。
「わぁ。土井先生のコレ、すごく大きい……」
聞いてるこっちの心臓が跳ねるような、蕩けた声だった。
――はて。大きい、とは一体……?
伝蔵の心に混乱が生じながらも、会話はお構いなしに続けられる。
戸を隔てていても、半助がもじもじと恥ずかしがっている雰囲気が伝わってきた。
「あはは……でも、いざ堂々と見せるとなると、その……恥ずかしいな」
「私……こんなに大きくて立派なの、初めて見ました……」
「そんな大げさな。男なんて、大体皆こんなもんだと思うけど。なぁ、利吉君」
「そうですね。このくらいは普通でしょう」
「へぇ……でも、すごい……」
「あんまり興味津々に見られると照れるなぁ……そんなに気になるなら触ってみる?」
「え、いいんですか?なら、お言葉に甘えて……」
伝蔵の頭の中が白一色になった。
(むむっ!?なんだ、今の会話は……?卑猥な内容に満ちていたぞ……?)
(き、聞き間違いじゃなければいいが……)
先刻の学園長との付き合いで、酔いが回りすぎているのかもしれない。
今度は正確に聞き取ろうと、伝蔵はじっと耳を凝らした。
「わぁ、すごい……ここ……男の人のコレって、こんなに硬く盛り上がるんですね……」
「空君。あ、あんまり、撫でられると……く、くすぐったい……うっ」
間違いない。
血の気が引いた伝蔵はどうしていいかわからず、思わず顔を覆った。
女のうっとりした声といい、男の身悶える声といい、頭の中でいかがわしい妄想がどんどん展開されていく。
(信じられないが……今、半助は絶対にアレを触らせてるよな?)
(告白もまだだろうに、ましてや接吻をすっ飛ばして……いきなりアレ?い、いまどきの若いモンは順序を踏まんのか!?)
(しかも、我
どうか夢であってほしい。
そんな逃避思考に陥った伝蔵に現実は容赦なく、鈍器で殴られたような衝撃が次々と襲いかかってきた。
「あっ。利吉さんのも……すごく大きいっ……!」
「ほんっと、空さんってば、もう……大げさに反応するんだから」
「だって……こんなの見たことないから……でも、土井先生のとどっちが大きいでしょうか?見たところ、同じくらいだけど……」
「気になるなら、両方触って比べてみればいいじゃないですか。いいですよね、土井先生」
「ああ」
「それでは、お二方とも失礼します……」
思わず悲鳴を上げそうになった。
(ちょ、ちょ、ちょ、両方って!!!空君、やる気満々なの!?)
(利吉もどうしてふたりに混じるんだ!?おい、利吉、せめてお前だけでも戻ってこぉぉぉい!)
だが、心の叫びもむなしく、聞くだけで赤面ものの会話がまだまだ続いた。
「やだ……二人とも……こんな……山のように膨らんでて……すごく固い……」
「ああ、空さん……触り方が、なんかじれったいです……堪えるのが、つらい……」
「空君、遠慮しなくていい。もっと……もっと大胆に触ってくれ……くっ」
お前ら、女のフェザータッチで恍惚へと導かれるなんて、早漏にも程があるぞ!もっと堪えんかい!とつい別目線で男二人を叱咤してしまう伝蔵だった。
(しかし、困った……)
眩暈で倒れそうなほどの衝撃に堪えつつも、伝蔵は思考していた。
どうやら三人は、身体の秘めやかな部分を見せることに抵抗がないほど、抜き差しならない関係だった。
俄かには信じがたい話である。
(まさか私の目を盗んで、半助と空君ができていたとは……)
(でも、普段のやり取りがあんなにも初々しいふたりが……信じられん……)
(特に空君なんて貪欲にアレに興味を示して……清楚な顔をして意外にも好色とは。人は見かけによらぬものだ……)
(利吉も利吉だ!二人を止めるどころが、さも当然のようにふたりの傍に居て、その上「ぷれい」にまで混ざるとは……)
利吉、半助、空。
息子の利吉は言うまでもないが、過去に命を助けた半助は既に家族同然だし、忍術学園で健気に働く空にだって、陰ながら心を砕いてきた。
そんな心を許した三人が、まさか人知れぬところで淫らに戯れているとは……。
裏切り、失望感、無念さ……それらに打ちひしがれている伝蔵に追い打ちをかけるように、例の会話が続く。
「さ、今度は空さんが見せる番ですよ」
「え、見せるも何も、私にはないのにっ」
「そんなの知っているよ。でも、さっきのお返しをしないとな」
「や、やだ……」
空が身を捩る気配がした。
(おのれ……!)
だんだんと腹が立ってきた。
人がこうもショックを受けているのに、三人は知る由もなく、尚も淫蕩な享楽に耽ようとしているのだ。
しかもそこは、自分の部屋でもあるというのに。
(ここは忍術学園……曲がりなりにも教育の場だぞ!)
(人知れず逢瀬を重ねるならともかく、周りの目を気にせずに快楽に溺れるとは、言語道断!)
(特に利吉と半助には、今一度忍者の三禁を口酸っぱく教え込む必要がある!)
いくら愛の形が自由だろうと、男女三つ巴でくんずほぐれつは、流石に度を越している。
伝蔵は腹を括った。
ふしだらな悦楽にのめり込んでしまった三人を正しい道へと更生させよう、と。
伝蔵は勢いよく戸を開けた。
「こぉらぁぁあ!お前たち、一体何をしている!!」
「「「!?」」」
いかなる弁明をしようが、こんな不埒な真似は断じて許さない。
そう心を鬼にした伝蔵だったが、目の前に広がる光景を見れば、奇妙に両眉を歪ませた。
「あ、あれ……?」
利吉も半助も下半身を露出していない。
そればかりか、誰一人衣服は乱れておらず、足をぴったりと折り揃えて正座している。
普通にお喋りを楽しんでいたとしか思えないほどに。
「……」
拍子抜けしている伝蔵に、利吉たちが怪訝な視線を寄越してきた。
「ち、父上……?どうなされたのですか?私たちは、ただ雑談していただけですが……ねぇ、空さん」
「ええ。山田先生が部屋を退出されてから、今の今までずーっと三人でお話してたんですけど……そうだ。山田先生、これ見てください!」
そう言うと、空は童のようにはしゃぎながら半助の手を取った。
「ほら、土井先生の手マメ……すっごく固くて大きいんですよ!こんなに盛り上がった大きなマメってなかなか見たことなかったから、もうビックリしちゃって、」
「はは。苦無や短刀……日頃からそういう武器を扱うからな」
――手マメ?
それを聞けば、全身の毛穴からどっと嫌な汗が噴き出した。
「利吉さんだって、ほらこんなにマメが。指で押しても後戻りしないし……忍者の皆さんってよっぽど鍛練を積まれてるんですね」
「だから、空さん、その触り方くすぐったいですって……!」
利吉の手に触れながら、感心したように言う空からは「淫靡」のいの字も感じられない。
純心そのものだった。
「山田先生の手にも、きっと同じくらいの大きなマメがあるんですよね?」
空が好奇で輝く瞳を向けてくる。
(利吉たちが語っていたのはアレではなくて手マメ……単なる自分の早とちり……)
カーと頭に血が巡る。
穢れていたのは三人ではなく自分の方だった。
そうとわかれば、全身を焦がし尽くすほどの羞恥が伝蔵を苛んだ。
「うぉぉぉ!私は……なんて愚か者なんだぁぁぁ!!」
怒鳴り声をひっさげて伝蔵が戻ってきたかと思えば、すぐに走り去ってしまった。
残された人間たちは、何度も目を瞬かせている。
「一体どうしたんでしょうか、父上。あんなに顔を赤くして……」
「さぁ?学園長とお酒飲み過ぎたのかな?」
「何だか様子が変でしたね……」
三人は呆然と伝蔵の消えた方角を見つめていた。
