一触即発⁉な家庭訪問
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出した料理はほとんどが平らげられている。
腕によりをかけて作った料理が功を奏したのか、訳もなく不機嫌だった客人は、今ではよく通る声できり丸たちと会話している。
「そのときな、ちょうど杭瀬村にある人物が現れてのう……」
「それで、それで?」
きり丸と空は熱心に大木の話に耳を傾けている。
身振り手振りを使いながら、杭瀬村で起こった出来事を大木は表情豊かに話す。
どうやら彼には天性の話術の才能があるらしく、人を飽きさせない。
つい一個前の話、大木の元同僚かつ宿敵にあたる二年い組の担任、野村雄三のらっきょうの早食い失敗の話なんて腹が痛くなるほどに笑わかしてもらった。
「大木先生、勿体ぶらないで教えてくださいよ。その人物って一体誰なんですか?」
「フフン、誰だと思う?」
「えーと、花房牧之介ですか?」
「はずれだ、きり丸」
「じゃあ、派遣忍者の北石照代さんとか」
「残念、それもはずれだ、空」
「……もしかして、その人物って伝子さんですか?」
ついきり丸たちのように回答してしまった。
一瞬、ポカンとする大木に、余計なことをしたかと焦ってしまう。
だが、
「そうだ。正解だ、土井先生。ワシの前に現れたのはあの山田伝子さんだ!」
と屈託のない笑顔を返してくれた。
それを切欠に、大木との間に存在していた、目に見えない壁が急速に薄まるのを感じた。
今でこそ農夫の大木だが、元は忍者。
しかも同じ職場。
共通点が多ければ多いほど話は弾む。
ことに忍者の話題となれば、他の二人を差し置いてしまうほどに。
「最近のタソガレドキはどうだ?」
「はい。今のところ戦を起こす動きはないようで」
いつしか話題が堅苦しいものへ移行すると、空ときり丸は何とはなしに食器を下げ始めた。
大人ふたりの話に水を差さないようにと、静かに土間へ降りていく。
大木の話に頷きながら、半助は思った。
それにしても、大木はここへ何しにきたのだろう?
こんな話なら、忍術学園に立ち寄った際にいくらでもできるはずだ。
今にも疑問をぶつけたいのだが、大木の舌は絶好調で聞き手を務めるのが精一杯である。
「ふたりとも、お話が弾んでて何よりです。ところで、お酒はいかがですか?」
空が徳利と猪口を盆にのせて戻ってきた。
ご丁寧に酒のアテ、冷奴まで用意されている。
「おぉ、気が利くなぁ!」
大木は手早く猪口を受け取ると、空が徳利を傾けるのを今か今かと待っている。
(妙なんだよな……)
昔は空に対して、やれ「どこんじょーが足りない!」だの「もっと気合を入れろ!」だのやたら当たりが強かったが、自分が散々注意したのが聞いたのか、はたまた食堂のおばちゃんとともに杭瀬村で交流を深めているからか、随分柔らかくなった。
少し前だって、空の作った料理を辛口評価したかと思えば、すぐに撤回するような発言をしたし。
今も、空から酌をされて、どことなく鼻の下を伸ばしているようにも見える。
(待てよ……)
急に半助の中である不安が大きくなった。
恋人への意地悪が減ったのがいいが、こうも露骨だと、ある可能性が浮上してくる。
ひょっとして、大木は空に気があるのだろうか?
思い過ごしならいいが、そうでなければ……
「はい、半助さんも」
半助の猪口に並々と酒を注ぐと、これ以上お酌には付き合えませんから、と申し訳なさそうに一礼し、空は再び洗い場に戻っていった。
「空、ありがとな」
そう言って、空にお酌された酒を心底嬉しそうに呑む大木の姿が不安を一層強くした。
腕によりをかけて作った料理が功を奏したのか、訳もなく不機嫌だった客人は、今ではよく通る声できり丸たちと会話している。
「そのときな、ちょうど杭瀬村にある人物が現れてのう……」
「それで、それで?」
きり丸と空は熱心に大木の話に耳を傾けている。
身振り手振りを使いながら、杭瀬村で起こった出来事を大木は表情豊かに話す。
どうやら彼には天性の話術の才能があるらしく、人を飽きさせない。
つい一個前の話、大木の元同僚かつ宿敵にあたる二年い組の担任、野村雄三のらっきょうの早食い失敗の話なんて腹が痛くなるほどに笑わかしてもらった。
「大木先生、勿体ぶらないで教えてくださいよ。その人物って一体誰なんですか?」
「フフン、誰だと思う?」
「えーと、花房牧之介ですか?」
「はずれだ、きり丸」
「じゃあ、派遣忍者の北石照代さんとか」
「残念、それもはずれだ、空」
「……もしかして、その人物って伝子さんですか?」
ついきり丸たちのように回答してしまった。
一瞬、ポカンとする大木に、余計なことをしたかと焦ってしまう。
だが、
「そうだ。正解だ、土井先生。ワシの前に現れたのはあの山田伝子さんだ!」
と屈託のない笑顔を返してくれた。
それを切欠に、大木との間に存在していた、目に見えない壁が急速に薄まるのを感じた。
今でこそ農夫の大木だが、元は忍者。
しかも同じ職場。
共通点が多ければ多いほど話は弾む。
ことに忍者の話題となれば、他の二人を差し置いてしまうほどに。
「最近のタソガレドキはどうだ?」
「はい。今のところ戦を起こす動きはないようで」
いつしか話題が堅苦しいものへ移行すると、空ときり丸は何とはなしに食器を下げ始めた。
大人ふたりの話に水を差さないようにと、静かに土間へ降りていく。
大木の話に頷きながら、半助は思った。
それにしても、大木はここへ何しにきたのだろう?
こんな話なら、忍術学園に立ち寄った際にいくらでもできるはずだ。
今にも疑問をぶつけたいのだが、大木の舌は絶好調で聞き手を務めるのが精一杯である。
「ふたりとも、お話が弾んでて何よりです。ところで、お酒はいかがですか?」
空が徳利と猪口を盆にのせて戻ってきた。
ご丁寧に酒のアテ、冷奴まで用意されている。
「おぉ、気が利くなぁ!」
大木は手早く猪口を受け取ると、空が徳利を傾けるのを今か今かと待っている。
(妙なんだよな……)
昔は空に対して、やれ「どこんじょーが足りない!」だの「もっと気合を入れろ!」だのやたら当たりが強かったが、自分が散々注意したのが聞いたのか、はたまた食堂のおばちゃんとともに杭瀬村で交流を深めているからか、随分柔らかくなった。
少し前だって、空の作った料理を辛口評価したかと思えば、すぐに撤回するような発言をしたし。
今も、空から酌をされて、どことなく鼻の下を伸ばしているようにも見える。
(待てよ……)
急に半助の中である不安が大きくなった。
恋人への意地悪が減ったのがいいが、こうも露骨だと、ある可能性が浮上してくる。
ひょっとして、大木は空に気があるのだろうか?
思い過ごしならいいが、そうでなければ……
「はい、半助さんも」
半助の猪口に並々と酒を注ぐと、これ以上お酌には付き合えませんから、と申し訳なさそうに一礼し、空は再び洗い場に戻っていった。
「空、ありがとな」
そう言って、空にお酌された酒を心底嬉しそうに呑む大木の姿が不安を一層強くした。
