Never let you go....?
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話を聞き終えた一年は組の生徒たちは納得顔で頷いていた。
「なるほど……しんべヱの鼻水によって、土井先生と空さん、二人の身体がくっついてしまったというわけですね」
「しんべヱの鼻水、へたな糊より強力だからな……」
「そう、強力すぎてまいってるんだ。剥がそうと思っても一筋縄ではいかないし……おまけに次の授業が差し迫っていたものだから……ほら、前回の授業で私、遅刻に関して口すっぱくして注意してしまっただろう?その手前、どうしても遅刻するわけにもいかず……」
「だから、外套で空さんを隠して現れたというわけですね」
「なぁ~んだ。ちぇっ」
きり丸が悔しそうに舌打ちする。
「おい、きり丸。そんなにがっかりしなくても」
「だって……土井先生と空さんが付き合ってるんじゃなかったんだって思うと、そりゃあがっかりしますよ」
「私も」
「僕も」
「俺も」
乱太郎や金吾に団蔵……しまいには、一年は組全員がきり丸に同意するものだから、半助と空は同時に顔を赤く染めた。
このときほど生徒たちが愛おしいと感じたことはない――半助はそう実感したという。
(きり丸、乱太郎、それにみんな……こんなに私の幸せを願ってくれているとは……!)
思わずジーンと涙ぐむ。
実のところ、半助はこの状況に真に頭を痛めている……というわけではない。
惚れに惚れた女とくっついて離れない――男なら、こんなレアで幸運なハプニング、出くわして嬉しくないわけがない。
口では困る……なんて言う裏で、スキップしそうに舞い上がっているのも事実だった。
半助から見た今の空の表情は、距離が近すぎるゆえに必然的に上目遣いになっていて、しかも困り顔。
それが妙に色っぽくて、下を向く度にドキドキする。
他にも、絹のような艶髪からは香を焚いたような上品な香りがするし、線の細い身体はいざ触れてみると想像以上に肉感があって柔らかい。
空の体の輪郭はこんな感じかな~なんて、つい頭の中で思い描いてしまったほどだ。
とにかく五感が目ざとく空について発見しようとする。
困るといえば、周りの視線と自身の煩悩くらいだった。
(ああ、こんな史上最高のハプニング……よりにもよって、どうしてせわしい日中に起こってしまったんだ!?)
(せめて休日中に起こってくれたらよかったのになぁ……例えば、そうそう、こういうシチュエーションが理想的だな……)
半助の目が遠くなる。
今度は半助が妄想の世界に突入してしまった。
***
休日の忍術学園の爽やかな朝。
澄んだ青空に向かって半助が両腕を伸ばしている。
「ああ、なんて気持ちのいい朝なんだ……珍しく三人組 の補習授業はないし、今日は一日のんびりできるぞ~」
そう思った矢先のこと。
後ろから何かから逃げるように走ってきた空が、やにわに抱きついてきた。
「土井先生、助けてください!」
「空君どうした!?一体何があったんだ!」
「ア、アレです!アレがずっと追いかけてくるんです……!」
青ざめた空が指さしたのは、四肢のない身体をくねらせる生物。
三年い組、伊賀崎孫兵の溺愛するペットである毒マムシことジュンコ(♀)だった。
とある事件を契機に、ジュンコは空が大のお気に入りなのだ。
「ジュンコ。お前まだ脱走したんだな!ちゃんと伊賀崎のところへ戻れ!しっし!」
半助がひと睨みして手で払うと、ジュンコは瞬く間に退散した。
「もう大丈夫だよ、空君」
「土井先生、ありがとうございます……」
半助は泣き止みつつある空から離れようとしたときだった。
二つの体の合間に粘っこい液体があることに気づく。
空が申し訳なさそうに言った。
「す、すみません……ジュンコに追われる前にしんべヱ君の鼻水を被っちゃって……」
「そうだったのか……しかし、困ったぞ。しんべヱの鼻水のせいで身体がくっついて離れない」
(どうしよう……)
どうやったらこの鼻水が取れるかと半助が真剣に考えているときだった。
急に空がフフっと笑いだす。
「ん?何かいい考えでも浮かんだのか?」
「い、いえ……違うんです。その……助けを求めて飛びついた先が土井先生でよかったな、て……」
「空君……?」
「男の人とこうして密着するなんて嫌ですけど……何故か土井先生は嫌じゃないんです」
「えっ」
「だって、それは……土井先生が私にとって特別な人だから……」
そう言って、空が潤んだ瞳を向けてきた。
朱色に染まった頬。
紅を指してないのに、光沢を纏った赤い唇。
至近距離に迫る空の顔に、半助の心臓が早鐘を打ち始めた。
「ま、まいったな。空君……その……そんな嬉しいことを言われたら、いくら私でも勘違いしてしまいそうになるよ」
「勘違いなんかじゃありませんっ。私は土井先生が……!」
極度の緊張を感じたのか、空の言葉がそこで詰まってしまう。
「……」
沈黙が広がる。
その間に、しんべヱの鼻水によって繋がれた身体を解く必要はないのだと、半助は悟った。
確認するように熱っぽい眼で空を見つめれば、ふたりの間に漂う甘い雰囲気が濃くなっていく。
やがて、返事とばかりに顔を近づけると、空は静かに瞼を伏せて――
「なるほど……しんべヱの鼻水によって、土井先生と空さん、二人の身体がくっついてしまったというわけですね」
「しんべヱの鼻水、へたな糊より強力だからな……」
「そう、強力すぎてまいってるんだ。剥がそうと思っても一筋縄ではいかないし……おまけに次の授業が差し迫っていたものだから……ほら、前回の授業で私、遅刻に関して口すっぱくして注意してしまっただろう?その手前、どうしても遅刻するわけにもいかず……」
「だから、外套で空さんを隠して現れたというわけですね」
「なぁ~んだ。ちぇっ」
きり丸が悔しそうに舌打ちする。
「おい、きり丸。そんなにがっかりしなくても」
「だって……土井先生と空さんが付き合ってるんじゃなかったんだって思うと、そりゃあがっかりしますよ」
「私も」
「僕も」
「俺も」
乱太郎や金吾に団蔵……しまいには、一年は組全員がきり丸に同意するものだから、半助と空は同時に顔を赤く染めた。
このときほど生徒たちが愛おしいと感じたことはない――半助はそう実感したという。
(きり丸、乱太郎、それにみんな……こんなに私の幸せを願ってくれているとは……!)
思わずジーンと涙ぐむ。
実のところ、半助はこの状況に真に頭を痛めている……というわけではない。
惚れに惚れた女とくっついて離れない――男なら、こんなレアで幸運なハプニング、出くわして嬉しくないわけがない。
口では困る……なんて言う裏で、スキップしそうに舞い上がっているのも事実だった。
半助から見た今の空の表情は、距離が近すぎるゆえに必然的に上目遣いになっていて、しかも困り顔。
それが妙に色っぽくて、下を向く度にドキドキする。
他にも、絹のような艶髪からは香を焚いたような上品な香りがするし、線の細い身体はいざ触れてみると想像以上に肉感があって柔らかい。
空の体の輪郭はこんな感じかな~なんて、つい頭の中で思い描いてしまったほどだ。
とにかく五感が目ざとく空について発見しようとする。
困るといえば、周りの視線と自身の煩悩くらいだった。
(ああ、こんな史上最高のハプニング……よりにもよって、どうしてせわしい日中に起こってしまったんだ!?)
(せめて休日中に起こってくれたらよかったのになぁ……例えば、そうそう、こういうシチュエーションが理想的だな……)
半助の目が遠くなる。
今度は半助が妄想の世界に突入してしまった。
***
休日の忍術学園の爽やかな朝。
澄んだ青空に向かって半助が両腕を伸ばしている。
「ああ、なんて気持ちのいい朝なんだ……珍しく
そう思った矢先のこと。
後ろから何かから逃げるように走ってきた空が、やにわに抱きついてきた。
「土井先生、助けてください!」
「空君どうした!?一体何があったんだ!」
「ア、アレです!アレがずっと追いかけてくるんです……!」
青ざめた空が指さしたのは、四肢のない身体をくねらせる生物。
三年い組、伊賀崎孫兵の溺愛するペットである毒マムシことジュンコ(♀)だった。
とある事件を契機に、ジュンコは空が大のお気に入りなのだ。
「ジュンコ。お前まだ脱走したんだな!ちゃんと伊賀崎のところへ戻れ!しっし!」
半助がひと睨みして手で払うと、ジュンコは瞬く間に退散した。
「もう大丈夫だよ、空君」
「土井先生、ありがとうございます……」
半助は泣き止みつつある空から離れようとしたときだった。
二つの体の合間に粘っこい液体があることに気づく。
空が申し訳なさそうに言った。
「す、すみません……ジュンコに追われる前にしんべヱ君の鼻水を被っちゃって……」
「そうだったのか……しかし、困ったぞ。しんべヱの鼻水のせいで身体がくっついて離れない」
(どうしよう……)
どうやったらこの鼻水が取れるかと半助が真剣に考えているときだった。
急に空がフフっと笑いだす。
「ん?何かいい考えでも浮かんだのか?」
「い、いえ……違うんです。その……助けを求めて飛びついた先が土井先生でよかったな、て……」
「空君……?」
「男の人とこうして密着するなんて嫌ですけど……何故か土井先生は嫌じゃないんです」
「えっ」
「だって、それは……土井先生が私にとって特別な人だから……」
そう言って、空が潤んだ瞳を向けてきた。
朱色に染まった頬。
紅を指してないのに、光沢を纏った赤い唇。
至近距離に迫る空の顔に、半助の心臓が早鐘を打ち始めた。
「ま、まいったな。空君……その……そんな嬉しいことを言われたら、いくら私でも勘違いしてしまいそうになるよ」
「勘違いなんかじゃありませんっ。私は土井先生が……!」
極度の緊張を感じたのか、空の言葉がそこで詰まってしまう。
「……」
沈黙が広がる。
その間に、しんべヱの鼻水によって繋がれた身体を解く必要はないのだと、半助は悟った。
確認するように熱っぽい眼で空を見つめれば、ふたりの間に漂う甘い雰囲気が濃くなっていく。
やがて、返事とばかりに顔を近づけると、空は静かに瞼を伏せて――