わたしの軍師さま ~長屋の一日編~
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気を取り直して、空と天鬼は小間物屋に立ち寄った。
だが、ここでも天鬼は女たちの視線を搔っ攫ってしまう。
「あの……どちらのお国からいらしたんですか?」
「せめてお名前だけでも教えてください!」
「初対面で失礼ですが……もし良い人がいなければ、ぜひあなたの恋人に立候補したいです!」
空と同い歳くらいの若い娘たちが次々に天鬼に話しかける。
先程のお姉さま方よりは控えめだが、科 を作り、色目を使い、あわよくば相手を出し抜こうと考えているあざとさを感じられた。
「……」
結局、空はじっくり物色することもできず、天鬼を連れて速やかに店を後にした。
その後も空の受難は続いた。
天鬼のモテっぷりは凄まじく、行く先々で女たちが集ってきては空が追い払う……の繰り返しだった。
これでは、天鬼の恋人というよりも、要人のボディーガードや芸能人の付き人ではないか、と空は思う。
十件目に立ち寄った店で同様のことが起きたとき、空の心は完全に折れてしまった。
結局太陽がまだ中天にいる時間に、逃げるように家へと帰ってきた。
(あ~あ、せっかくのデートが台無し……)
帰り際に買った羊羹を一口食べてみても、甘さを感じられなかった。
そのあとに流し込んだお茶の味は、茶葉の量が多かったのかやたら苦く感じたのに。
(それにしても……)
空は横目で天鬼を見た。
黙々と茶菓子を口に運んでいる。
(知らなかったな……天鬼様があんなに女性に人気があるなんて……)
(半助さんのときはこんなことなかったのに……あ、決して半助さんがモテないってわけじゃないけど……)
空は一人考察し始めた。
天鬼と土井半助。
同一人物なのに、何がふたりの明暗を分けるのかと。
どう考えても、空にはアレしか心当たりがなかった。
(やっぱりあの「眼」よね……それしか違いが思いつかないもん)
空は最初の店で出会った、色っぽいお姉さんたちの会話を思い出した。
『あ~ん、あんたのその眼が素敵だねぇ』
『ほんとほんと。あんたみたいな男に流し目されたら、世の女たちはイチコロだよ』
(確かに、天鬼様の眼は色気が凄いもんね……)
喩えていうなら、某有名漫画パ○リロに出てくる美少年キラー、バン○ランの魔性並みである。
あの切れ長の眼で見つめられたら、たとえ色恋に縁のない女性でも忽ち彼の虜になってしまうだろう。
ウインクなんて飛ばされれば、失神ものである。
「……」
天鬼がふぅっと一息つく。
空の視線が肌を突き刺すように痛かった。
「なに人の顔をジロジロ見てるんだ」
「天鬼様って……女性に人気あるの、今日初めて知りました」
「フン……何を考えているかと思えばくだらない」
天鬼の冷たい物言いには慣れた空でも、このときばかりはカチンと来た。
人の気も知らないで、と。
「どうせ私の考えていることは天鬼様からすればくだらないですよね。失礼しました!」
この温和な娘にしてはいつになく、棘のある言い方だった。
「おい、何を躍起になっている?今日のお前、少し変だぞ!」
「そりゃあ変にもなりますよ!あんな風に私以外の女性とイチャイチャしているところを見せつけられたら!」
「私は何もしていない!寧ろ、被害者だ!鬱陶しい女たちに囲まれてほとほと困っていたのは私のほうだ!」
「ほんとうにそうですか?実は満更でもなかったりして。本当に嫌なら、もっとはっきり態度で示せたはずですが」
「それはだな……!」
何かを言いかけた天鬼だったが、急にフンとそっぽを向いた。
「もういい。今のお前には何を言っても通用しない。私を信用していないのだからな」
天鬼の声がトーンダウンする。
ここにきてようやく自分の言いがかりが天鬼を傷つけていることを知った空だった。
罪悪感が一気に押し寄せてくる。
「あの……天鬼様……」
ごめんなさい。
そう言葉を継ごうとした。
だが、謝罪のチャンスは天鬼にへし折られてしまう。
「先程の外出……実に不愉快な時間だった」
そう冷たく言い捨てて、家を出て行ってしまった。
だが、ここでも天鬼は女たちの視線を搔っ攫ってしまう。
「あの……どちらのお国からいらしたんですか?」
「せめてお名前だけでも教えてください!」
「初対面で失礼ですが……もし良い人がいなければ、ぜひあなたの恋人に立候補したいです!」
空と同い歳くらいの若い娘たちが次々に天鬼に話しかける。
先程のお姉さま方よりは控えめだが、
「……」
結局、空はじっくり物色することもできず、天鬼を連れて速やかに店を後にした。
その後も空の受難は続いた。
天鬼のモテっぷりは凄まじく、行く先々で女たちが集ってきては空が追い払う……の繰り返しだった。
これでは、天鬼の恋人というよりも、要人のボディーガードや芸能人の付き人ではないか、と空は思う。
十件目に立ち寄った店で同様のことが起きたとき、空の心は完全に折れてしまった。
結局太陽がまだ中天にいる時間に、逃げるように家へと帰ってきた。
(あ~あ、せっかくのデートが台無し……)
帰り際に買った羊羹を一口食べてみても、甘さを感じられなかった。
そのあとに流し込んだお茶の味は、茶葉の量が多かったのかやたら苦く感じたのに。
(それにしても……)
空は横目で天鬼を見た。
黙々と茶菓子を口に運んでいる。
(知らなかったな……天鬼様があんなに女性に人気があるなんて……)
(半助さんのときはこんなことなかったのに……あ、決して半助さんがモテないってわけじゃないけど……)
空は一人考察し始めた。
天鬼と土井半助。
同一人物なのに、何がふたりの明暗を分けるのかと。
どう考えても、空にはアレしか心当たりがなかった。
(やっぱりあの「眼」よね……それしか違いが思いつかないもん)
空は最初の店で出会った、色っぽいお姉さんたちの会話を思い出した。
『あ~ん、あんたのその眼が素敵だねぇ』
『ほんとほんと。あんたみたいな男に流し目されたら、世の女たちはイチコロだよ』
(確かに、天鬼様の眼は色気が凄いもんね……)
喩えていうなら、某有名漫画パ○リロに出てくる美少年キラー、バン○ランの魔性並みである。
あの切れ長の眼で見つめられたら、たとえ色恋に縁のない女性でも忽ち彼の虜になってしまうだろう。
ウインクなんて飛ばされれば、失神ものである。
「……」
天鬼がふぅっと一息つく。
空の視線が肌を突き刺すように痛かった。
「なに人の顔をジロジロ見てるんだ」
「天鬼様って……女性に人気あるの、今日初めて知りました」
「フン……何を考えているかと思えばくだらない」
天鬼の冷たい物言いには慣れた空でも、このときばかりはカチンと来た。
人の気も知らないで、と。
「どうせ私の考えていることは天鬼様からすればくだらないですよね。失礼しました!」
この温和な娘にしてはいつになく、棘のある言い方だった。
「おい、何を躍起になっている?今日のお前、少し変だぞ!」
「そりゃあ変にもなりますよ!あんな風に私以外の女性とイチャイチャしているところを見せつけられたら!」
「私は何もしていない!寧ろ、被害者だ!鬱陶しい女たちに囲まれてほとほと困っていたのは私のほうだ!」
「ほんとうにそうですか?実は満更でもなかったりして。本当に嫌なら、もっとはっきり態度で示せたはずですが」
「それはだな……!」
何かを言いかけた天鬼だったが、急にフンとそっぽを向いた。
「もういい。今のお前には何を言っても通用しない。私を信用していないのだからな」
天鬼の声がトーンダウンする。
ここにきてようやく自分の言いがかりが天鬼を傷つけていることを知った空だった。
罪悪感が一気に押し寄せてくる。
「あの……天鬼様……」
ごめんなさい。
そう言葉を継ごうとした。
だが、謝罪のチャンスは天鬼にへし折られてしまう。
「先程の外出……実に不愉快な時間だった」
そう冷たく言い捨てて、家を出て行ってしまった。