Never let you go....?
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カーン、カーン……
忍術学園全域に、午後の始業を告げる鐘の音が響き渡った。
そして、ここは一年は組の教室。
乱太郎ときり丸が開く気配のない戸をじっと見つめている。
「ねぇ……土井先生遅いと思わない?」
「ほんとほんと。この前の授業で散々うるさく言ってたのに。あまりに遅かったら、土井先生に褌一丁でランニング、やってもらわないとな」
「そういえば、しんべヱもまだ来てないね」
「山田先生の授業が終わってから、医務室に行ったみたいだけど……今日のあいつの鼻炎ひどかったし」
ふたりの話はここで途切れた。
ガラガラっと音を立てた戸の方に、乱太郎以下は組の面々が同時に振り向く。
次の瞬間、全員が目を剥いた。
「……」
胸を張り、威風堂々と半助としんべヱが部屋に入ってくる。
しんべヱが席に着くのを確認してから、半助が口を開く。
「遅くなってすまない。出かけ際、山田先生に呼び止められてしまってな。さぁ、授業を始めるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
いの一番に手を挙げたのは庄左エ門だった。
「授業始めるっていっても……どうしたんですか、その格好!?」
庄左エ門の視線が半助の上から下まで移動する。
あきらかに異常だった。
特に首から下が。
「その格好って言われても……別に普通だ。何ともないぞ。さ、授業に……」
「土井先生、何ともない風で誤魔化さないでください!今日の格好、絶対変ですって!授業を始めるっていうよりも、奇術か二人羽織をやるような装いですよ!!」
伊助の援護射撃に、半助が思わずたじろぐ。
そうなのだ。
見れば、半助の首から足元まですべて、一枚のド派手な赤い布――所々金糸で刺繍が施された、豪奢 な外套 で覆われている。
これを身に着けた者は、忽ちに西洋の王様気分を味わえるだろう。
というような派手で奇抜な格好を目の当たりにして、忍たまたちが怪しく思わないわけがない。
団蔵が胡乱 な目つきで半助を見る。
「どうしてカステイラさんみたいな格好をしているんですか?」
「わ、私だってたまにはこういうお洒落を楽しみたいときだってある!」
「ええ、お洒落!?洗濯物めいっぱいため込んで、着ている服も皺だらけの土井先生が……お洒落!?」
「おい、虎若、失礼だぞ!確かに私はズボラだが……それでも、お洒落を楽しみたいときだってあるんだ!」
「でも、今は授業中ですよ。休日ならまだわかりますが……」
「そ、それはだな……その……要は伝子さんみたいなものだ!山田先生だって、時と場所に関係なく発作的に伝子さんになることだってあるだろう!あれと同じだ!」
「それとはちょっと違うような……」
「うるさーい!」
顔いっぱいに筋を浮かべて全力否定する半助に、兵太夫と三治郎は不思議そうに顔を見合わせる。
その後ろにいる喜三太があることに気づいたようで、眼を大きくしていた。
「はにゃ?土井先生の右側あたり……やけに膨らんでいるような……」
「僕もそう思った。土井先生、その外套の下に何か隠してますよね?」
「な、なにも隠してない!膨らんで見えるのは目の錯覚だろう」
怪しい……。
いつしかしんべヱを除く一年は組の目つきが険しくなっている。
半助は思わず後退った。
「きっとあの外套の下に何か秘密がある!みんな、かかれぇぇぇい!」
庄左エ門の号令とともに、全員が半助に飛び掛かった。
「こら、お前たち!」
間一髪、空中に避けて総攻撃をかわした半助だったが、長すぎる外套の丈が災いした。
外套の裾を乱太郎ときり丸がしっかり掴んでいたのだ。
「し、しまった!」
「行くよ、きり丸!」
「おうともよ!」
二人は阿吽の呼吸で思いっきり外套を引っ張った。
すると、半助の首元で作られた外套の結び目がシュルっとほどけていく。
外套は半助の身体から完全に離れ、翻りながら下へ落ちていく。
その間に着地を決めた半助を見れば、やはりしんべヱを除く一年は組の全員に稲妻のような衝撃がはしった。
「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」
狭い教室に、は組の大合唱が木霊する。
「こ、こんにちは、みんな……お騒がせしてます……」
半助のすぐ脇から、か細い女の声が発せられる。
生徒たちの眼に映っているのは、これ以上ないくらい顔を赤くして身を寄せ合う、空と半助、男女ふたりの姿だった。
***
「一体、どういうことですか、土井先生!?」
そう叫んだ乱太郎と同様、唖然とする一年は組の良い子たちだったが、例外もいる。
彼の相棒であるきり丸は超ご機嫌だ。
笑った口から惜しげもなく八重歯を見せている。
その上、日の丸を描いた扇子まで持ち出して、狂喜の舞を披露していた。
「どういうこともないだろう、乱太郎。土井先生と空さん、ふたりは付き合ってるってことしかないじゃん!授業中までそうしているなんて、仲の良い証拠。いよ、ご両人っ!お熱いですねぇ、ヒューヒュー!」
「ち、違うんだ!これには、その……理由があるんだ!」
「またまた、そんなこと言っちゃってぇ。照れてるだけなんでしょ!」
と過熱するきり丸の勘違いを止めに入る人物がひとりいる。
しんべヱだ。
「あのね、きり丸。盛り上がってるところ申し訳ないんだけど、実はね……」
この騒動を作り出した張本人が、バツの悪い顔で事の顛末を語り出した。
忍術学園全域に、午後の始業を告げる鐘の音が響き渡った。
そして、ここは一年は組の教室。
乱太郎ときり丸が開く気配のない戸をじっと見つめている。
「ねぇ……土井先生遅いと思わない?」
「ほんとほんと。この前の授業で散々うるさく言ってたのに。あまりに遅かったら、土井先生に褌一丁でランニング、やってもらわないとな」
「そういえば、しんべヱもまだ来てないね」
「山田先生の授業が終わってから、医務室に行ったみたいだけど……今日のあいつの鼻炎ひどかったし」
ふたりの話はここで途切れた。
ガラガラっと音を立てた戸の方に、乱太郎以下は組の面々が同時に振り向く。
次の瞬間、全員が目を剥いた。
「……」
胸を張り、威風堂々と半助としんべヱが部屋に入ってくる。
しんべヱが席に着くのを確認してから、半助が口を開く。
「遅くなってすまない。出かけ際、山田先生に呼び止められてしまってな。さぁ、授業を始めるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
いの一番に手を挙げたのは庄左エ門だった。
「授業始めるっていっても……どうしたんですか、その格好!?」
庄左エ門の視線が半助の上から下まで移動する。
あきらかに異常だった。
特に首から下が。
「その格好って言われても……別に普通だ。何ともないぞ。さ、授業に……」
「土井先生、何ともない風で誤魔化さないでください!今日の格好、絶対変ですって!授業を始めるっていうよりも、奇術か二人羽織をやるような装いですよ!!」
伊助の援護射撃に、半助が思わずたじろぐ。
そうなのだ。
見れば、半助の首から足元まですべて、一枚のド派手な赤い布――所々金糸で刺繍が施された、
これを身に着けた者は、忽ちに西洋の王様気分を味わえるだろう。
というような派手で奇抜な格好を目の当たりにして、忍たまたちが怪しく思わないわけがない。
団蔵が
「どうしてカステイラさんみたいな格好をしているんですか?」
「わ、私だってたまにはこういうお洒落を楽しみたいときだってある!」
「ええ、お洒落!?洗濯物めいっぱいため込んで、着ている服も皺だらけの土井先生が……お洒落!?」
「おい、虎若、失礼だぞ!確かに私はズボラだが……それでも、お洒落を楽しみたいときだってあるんだ!」
「でも、今は授業中ですよ。休日ならまだわかりますが……」
「そ、それはだな……その……要は伝子さんみたいなものだ!山田先生だって、時と場所に関係なく発作的に伝子さんになることだってあるだろう!あれと同じだ!」
「それとはちょっと違うような……」
「うるさーい!」
顔いっぱいに筋を浮かべて全力否定する半助に、兵太夫と三治郎は不思議そうに顔を見合わせる。
その後ろにいる喜三太があることに気づいたようで、眼を大きくしていた。
「はにゃ?土井先生の右側あたり……やけに膨らんでいるような……」
「僕もそう思った。土井先生、その外套の下に何か隠してますよね?」
「な、なにも隠してない!膨らんで見えるのは目の錯覚だろう」
怪しい……。
いつしかしんべヱを除く一年は組の目つきが険しくなっている。
半助は思わず後退った。
「きっとあの外套の下に何か秘密がある!みんな、かかれぇぇぇい!」
庄左エ門の号令とともに、全員が半助に飛び掛かった。
「こら、お前たち!」
間一髪、空中に避けて総攻撃をかわした半助だったが、長すぎる外套の丈が災いした。
外套の裾を乱太郎ときり丸がしっかり掴んでいたのだ。
「し、しまった!」
「行くよ、きり丸!」
「おうともよ!」
二人は阿吽の呼吸で思いっきり外套を引っ張った。
すると、半助の首元で作られた外套の結び目がシュルっとほどけていく。
外套は半助の身体から完全に離れ、翻りながら下へ落ちていく。
その間に着地を決めた半助を見れば、やはりしんべヱを除く一年は組の全員に稲妻のような衝撃がはしった。
「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」
狭い教室に、は組の大合唱が木霊する。
「こ、こんにちは、みんな……お騒がせしてます……」
半助のすぐ脇から、か細い女の声が発せられる。
生徒たちの眼に映っているのは、これ以上ないくらい顔を赤くして身を寄せ合う、空と半助、男女ふたりの姿だった。
***
「一体、どういうことですか、土井先生!?」
そう叫んだ乱太郎と同様、唖然とする一年は組の良い子たちだったが、例外もいる。
彼の相棒であるきり丸は超ご機嫌だ。
笑った口から惜しげもなく八重歯を見せている。
その上、日の丸を描いた扇子まで持ち出して、狂喜の舞を披露していた。
「どういうこともないだろう、乱太郎。土井先生と空さん、ふたりは付き合ってるってことしかないじゃん!授業中までそうしているなんて、仲の良い証拠。いよ、ご両人っ!お熱いですねぇ、ヒューヒュー!」
「ち、違うんだ!これには、その……理由があるんだ!」
「またまた、そんなこと言っちゃってぇ。照れてるだけなんでしょ!」
と過熱するきり丸の勘違いを止めに入る人物がひとりいる。
しんべヱだ。
「あのね、きり丸。盛り上がってるところ申し訳ないんだけど、実はね……」
この騒動を作り出した張本人が、バツの悪い顔で事の顛末を語り出した。