利吉さんの子守りバイト奮闘記
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(なんて安請け合いしたけど、無謀だったのだろうか……)
開始早々、利吉は子守の手痛い洗礼を受けていた。
今、通算五回目のおしめの洗濯中。
まだ数時間しか経っていないが、その時間の濃厚なこと。
利吉にとって、知らないことの連続だった――
『きり丸、おしめの交換これでいいか?』
『げげっ。こんな綺麗にちょうちょ結びなんかしなくてもいいっすよ。それに、もっと巻き付けないと、布がもったいないじゃないですか!』
『きり丸、飴湯持ってきたぞ―』
『利吉さん。確認しますけど、それ……お湯で薄めましたか?』
『いや』
『(ガクッ)』
『ほーら、高い高いっ』
『わわわ、利吉さん、やめてください!そんなことしちゃダメっすよ!その子、まだ首座ってないじゃないっすか!ああ、もう貸してくださいっ!』
思い起こせば、自分の無知さに顔から火が出るほど恥ずかしくなる。
一流忍者の肩書がついてる分、余計に。
八つも下のきり丸が頼もしく感じるほどだった。
(ま、まぁ、今日は初日だし……肩慣らし期間だな。すぐに要領を得て、明日にはちゃちゃっとこなせるはずだ!)
利吉がすっくと立ちあがった。
「よーし、洗濯終わり。ささっと干して、きり丸の助太刀をするぞ!」
利吉はそう言うと、たらい一杯に積んだおしめを持って、颯爽と駆け出した。
その日の晩。
「つ、疲れた……」
まるで身体に碇を繋げられたような、重い疲労感に利吉は襲われていた。
隣のおばちゃんから山盛りの白米を受け取りながら、きり丸が言う。
「今日はお疲れさんでした。最初どうなるかと思ったけど、おしめの取り替え方はマシになってきましたね」
「そ、それはよかった……」
「でも、利吉さんにも苦手なことがあるってびっくりしました。子どもが泣き出すと、すぐにおれにバトンタッチするんですもん」
「言うな、きり丸……」
利吉が赤い顔を押さえる。
きり丸の言う通りで、赤子が泣くとパニックに陥ってしまった。
早く泣きやませないといけないのに、泣いている理由がわからない。
ずっと泣き続けられると、イライラと罪悪感が募ってしまって、お手上げ状態になるのだった。
「ハハッ。とにかく、明日もよろしくお願いします。でも、遊びに来てくれたのに、申し訳ないとは思ってるんですけどね……せめて土井先生が元気だったら、利吉さんに迷惑かけなかったのになぁ」
「半助は子守上手だものね。あの人数でも難なく面倒見ることができるし」
「そうそう」
きり丸と隣のおばちゃんが何気なく言う。
しかし、彼らの言葉がナイフのように胸に突き刺さっていた。
半助と比較して、自分は戦力にもならない――そう聞こえてしまったのだ。
劣等感に苛まれる。
と同時に、あることに対して危機感が生まれていた。
利吉の目の前に、空と半助が立っている。
空の瞳には落胆の色が浮かんでいた。
「利吉さんって子守苦手なんですね……何でもそつなくこなせると思ってたから、私がっかりしました」
「これでわかっただろう、空。君を幸せにできるのは私だけだ」
「はい。私結婚するなら、やっぱり半助さんがいいです。だって、子どものお世話がとっても上手だもん」
「フフッ、子守だけじゃないぞ。炊事も掃除も何でも任せてくれ」
そう言って、半助は空の肩を抱く。
勝ち誇った笑みを残し、空とともに去っていった――
ひとしきり妄想を終えると、利吉のこめかみには青筋が立っていた。
(よーし!一流忍者の名において、絶対に子守をマスターするぞ!あの土井先生にだってできるんだ。この私にできないことはない!!!)
「負けない、負けない、負けないぞ!最後は、この私が勝つ!!」
めらめらと闘志を燃やしながら、利吉は手付かずだった飯を一気にかきこんでいく。
「はて?」
きり丸と隣のおばちゃんは不思議そうに顔を見合わせた。
開始早々、利吉は子守の手痛い洗礼を受けていた。
今、通算五回目のおしめの洗濯中。
まだ数時間しか経っていないが、その時間の濃厚なこと。
利吉にとって、知らないことの連続だった――
『きり丸、おしめの交換これでいいか?』
『げげっ。こんな綺麗にちょうちょ結びなんかしなくてもいいっすよ。それに、もっと巻き付けないと、布がもったいないじゃないですか!』
『きり丸、飴湯持ってきたぞ―』
『利吉さん。確認しますけど、それ……お湯で薄めましたか?』
『いや』
『(ガクッ)』
『ほーら、高い高いっ』
『わわわ、利吉さん、やめてください!そんなことしちゃダメっすよ!その子、まだ首座ってないじゃないっすか!ああ、もう貸してくださいっ!』
思い起こせば、自分の無知さに顔から火が出るほど恥ずかしくなる。
一流忍者の肩書がついてる分、余計に。
八つも下のきり丸が頼もしく感じるほどだった。
(ま、まぁ、今日は初日だし……肩慣らし期間だな。すぐに要領を得て、明日にはちゃちゃっとこなせるはずだ!)
利吉がすっくと立ちあがった。
「よーし、洗濯終わり。ささっと干して、きり丸の助太刀をするぞ!」
利吉はそう言うと、たらい一杯に積んだおしめを持って、颯爽と駆け出した。
その日の晩。
「つ、疲れた……」
まるで身体に碇を繋げられたような、重い疲労感に利吉は襲われていた。
隣のおばちゃんから山盛りの白米を受け取りながら、きり丸が言う。
「今日はお疲れさんでした。最初どうなるかと思ったけど、おしめの取り替え方はマシになってきましたね」
「そ、それはよかった……」
「でも、利吉さんにも苦手なことがあるってびっくりしました。子どもが泣き出すと、すぐにおれにバトンタッチするんですもん」
「言うな、きり丸……」
利吉が赤い顔を押さえる。
きり丸の言う通りで、赤子が泣くとパニックに陥ってしまった。
早く泣きやませないといけないのに、泣いている理由がわからない。
ずっと泣き続けられると、イライラと罪悪感が募ってしまって、お手上げ状態になるのだった。
「ハハッ。とにかく、明日もよろしくお願いします。でも、遊びに来てくれたのに、申し訳ないとは思ってるんですけどね……せめて土井先生が元気だったら、利吉さんに迷惑かけなかったのになぁ」
「半助は子守上手だものね。あの人数でも難なく面倒見ることができるし」
「そうそう」
きり丸と隣のおばちゃんが何気なく言う。
しかし、彼らの言葉がナイフのように胸に突き刺さっていた。
半助と比較して、自分は戦力にもならない――そう聞こえてしまったのだ。
劣等感に苛まれる。
と同時に、あることに対して危機感が生まれていた。
利吉の目の前に、空と半助が立っている。
空の瞳には落胆の色が浮かんでいた。
「利吉さんって子守苦手なんですね……何でもそつなくこなせると思ってたから、私がっかりしました」
「これでわかっただろう、空。君を幸せにできるのは私だけだ」
「はい。私結婚するなら、やっぱり半助さんがいいです。だって、子どものお世話がとっても上手だもん」
「フフッ、子守だけじゃないぞ。炊事も掃除も何でも任せてくれ」
そう言って、半助は空の肩を抱く。
勝ち誇った笑みを残し、空とともに去っていった――
ひとしきり妄想を終えると、利吉のこめかみには青筋が立っていた。
(よーし!一流忍者の名において、絶対に子守をマスターするぞ!あの土井先生にだってできるんだ。この私にできないことはない!!!)
「負けない、負けない、負けないぞ!最後は、この私が勝つ!!」
めらめらと闘志を燃やしながら、利吉は手付かずだった飯を一気にかきこんでいく。
「はて?」
きり丸と隣のおばちゃんは不思議そうに顔を見合わせた。