しつこいアイツ
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がつがつと弁当をかきこむ牧之介を見て、三人はげんなりとした。
「まさか牧之介に施す羽目になるとはな」
「私のせいで、すみません……」
「空さんは全然悪くないっすよ!牧之介にちゅうされそうになったら、誰だってパニクりますよ。昼飯はまた後で買いましょう!」
「そうだな。これだけ与えれば、アイツも満足だろう。余計な時間をくってしまった。さ、急ごう」
空一行は再び歩き出す。
だが、秒の速さで弁当を食べ終えた牧之介が再度通せんぼをする。
とうとう半助の堪忍袋の緒が切れた。
「おいっお前しつこいぞ!こっちの弁当あげたじゃないか。まだ何か用があるのか!?」
「フッ……俺はただ空に話があるだけだ。この前作った『貸し』のお礼をしてもらおうってな……」
「「貸し?」」
三人の声が重なる。
「貸しって言われても……私、何か牧之介さんに助けてもらいましたっけ?」
「とぼけるな!俺とお前が初めて会った時、相談に乗ってあげたことを忘れてしまったのか?」
「相談!?空が……牧之介に?」
「ないない、絶対ない。こんな剣術の腕八流の牧之介に相談事なんて、冗談もいいとこですよ。ねぇ、空さん」
半助ときり丸の視線が空に集中する。
次の瞬間、二人は驚愕する。
意外にも、空の顔が燃えるように赤くなっていたのだ。
空は狼狽丸出しでまくしたてた。
「でも、そのときって、確か行き倒れていた牧之介さんに食べ物を与えたから、そのお礼にって話だったじゃないですか!?それをどうして今更!」
「へっ。確かにあのとき俺はそう言った。しかし、俺は思い直したのだ。この天下の大剣豪からの相談料がたったのおむすびとお団子だけでは安すぎるとな!」
「そ、そんな……」
「問答無用!さぁ、空。礼としてこの俺に向こう一年分の忍術学園の食券代を渡すのだ!」
ペシッ
「いてぇ!」
つけあがる牧之介の頭を半助が叩いた。
「いい加減にしろ!黙って聞いていれば、完全にイチャモンつけてるだけじゃないか。それよりも、空……。あのときって、私たちが二人で町に買い物に行ったときのことだろ?何か悩んでいたことでもあったのか?」
「え、ええ!?そ、それは……」
空ははっきりと憶えていた。
牧之介に何を相談したか――それはまだ片思い中の頃、半助との恋を諦めた方がいいのではないかと悩んでいたことだ。
(あの頃は、想いが深まっていくことに怯えていたんだっけ……いつか、半助さんが自分の元を離れてしまう……お父さんとお母さんの影を半助さんに重ねてしまってたんだよね……現状から一歩踏み出すことが怖くて怖くて……)
きり丸が未だに信じられない、といった顔で言う。
「ほんっとうに牧之介に相談したんですか?」
「えっと……その……それは……」
「本当なら教えてくれ。一体、あのとき君が何を思いつめていたのか、私は知りたい」
きり丸と半助が距離を詰める。
空に関することは、是が非でも知っておきたいらしい。
だが、空としては、いくら終わったこととはいえ、当時の複雑な心境全てを語るのは勘弁してほしい。
それに、これ以上蒸し返されたくない。
「な、なんでもないんです……ほんとに」
「でも、今の君の態度は明らかに……」
半助は訝しるが、空はもじもじと口ごもってそれ以上言おうとしない。
痺れをきらした牧之介が煽りをかける。
「土井半助にきり丸!そんなに教えてやりたいならこの俺が教えてやるぞ。それはだな~」
「きゃあっ、やめて、やめてってば!」
「実は空は~」
「やめて、やめて、やめてくださーい!」
完全に動転した空はその場にいたたまれなくなる。
半べそをかきながら、全速力で逃亡した。
「あ、空さんっ!」
きり丸が慌てて追いかける。
半助が牧之介の胸ぐらを掴んだ。
「おいっ、牧之介!何もあそこまで追い詰めることはないだろう!それにしても、一体お前が空から何の相談を受けたというのだ?」
「はっ知りたいか……それならば、土井半助ぇ、お前が空の肩代わりをしろ。忍術学園の食券一年分で手をうってやろうじゃないか」
「なっ!?」
「食券一年分……お前なら安いもんだろう。さぁ、払うんだっ」
(チョロい、チョロい。これでしばらくは忍術学園に厄介になれる!!)
今や完全に優位に立っていると、牧之介は驕っている。
だが、
「嫌だっ!お前になんか、びた一文も払わん!」
と背を向けられる。
完全に目論見が外れ、牧之介は地面に突っ伏してしまった。
「くっ……何故だ何故だ何故だぁっ!あいつが俺に相談したこと、知りたくないのか!?」
「そりゃあ、知りたいよ。でも、大金はたいてまでお前の口から聞く必要はない。空から直接聞けばいい」
「へっ!?」
牧之介がポカンとする。
その間抜けな顔の牧之介に向かって、半助は自信たっぷりに言った。
「たとえ、私に言いにくいことでも、恥ずかしいことでも……じっくりと辛抱強く構えていれば、空はきっと話してくれる」
「……」
「私と空はもう……何よりも強い絆で結ばれているからな!」
そう言い放つと、半助は一目散に空たちの後を追った。
「……」
一人残された牧之介はしばらく呆然としていたが、やがて我に返った。
「ケッ、な~にが「何よりも強い絆で結ばれてる」だ!クッサい台詞だな。おえーっ……ん、待てよ……!」
牧之介がハッとした表情で言う。
「あの感じだと二人はもうデキてるってことだよな?となると……それはぜ~んぶ俺の人生相談のおかげってことじゃねえか!それなら、空だけでなく土井半助……両方から成功報酬をたっぷり頂かないとな」
そうと決まったら、と牧之介が半助の後を追う。
駆けながら、卑しい笑みを浮かべた。
(グヒヒッ……このネタで当分空と土井半助をつけ回してやるぜ~~!!)
やっぱりしつこい牧之介なのだった。
「まさか牧之介に施す羽目になるとはな」
「私のせいで、すみません……」
「空さんは全然悪くないっすよ!牧之介にちゅうされそうになったら、誰だってパニクりますよ。昼飯はまた後で買いましょう!」
「そうだな。これだけ与えれば、アイツも満足だろう。余計な時間をくってしまった。さ、急ごう」
空一行は再び歩き出す。
だが、秒の速さで弁当を食べ終えた牧之介が再度通せんぼをする。
とうとう半助の堪忍袋の緒が切れた。
「おいっお前しつこいぞ!こっちの弁当あげたじゃないか。まだ何か用があるのか!?」
「フッ……俺はただ空に話があるだけだ。この前作った『貸し』のお礼をしてもらおうってな……」
「「貸し?」」
三人の声が重なる。
「貸しって言われても……私、何か牧之介さんに助けてもらいましたっけ?」
「とぼけるな!俺とお前が初めて会った時、相談に乗ってあげたことを忘れてしまったのか?」
「相談!?空が……牧之介に?」
「ないない、絶対ない。こんな剣術の腕八流の牧之介に相談事なんて、冗談もいいとこですよ。ねぇ、空さん」
半助ときり丸の視線が空に集中する。
次の瞬間、二人は驚愕する。
意外にも、空の顔が燃えるように赤くなっていたのだ。
空は狼狽丸出しでまくしたてた。
「でも、そのときって、確か行き倒れていた牧之介さんに食べ物を与えたから、そのお礼にって話だったじゃないですか!?それをどうして今更!」
「へっ。確かにあのとき俺はそう言った。しかし、俺は思い直したのだ。この天下の大剣豪からの相談料がたったのおむすびとお団子だけでは安すぎるとな!」
「そ、そんな……」
「問答無用!さぁ、空。礼としてこの俺に向こう一年分の忍術学園の食券代を渡すのだ!」
ペシッ
「いてぇ!」
つけあがる牧之介の頭を半助が叩いた。
「いい加減にしろ!黙って聞いていれば、完全にイチャモンつけてるだけじゃないか。それよりも、空……。あのときって、私たちが二人で町に買い物に行ったときのことだろ?何か悩んでいたことでもあったのか?」
「え、ええ!?そ、それは……」
空ははっきりと憶えていた。
牧之介に何を相談したか――それはまだ片思い中の頃、半助との恋を諦めた方がいいのではないかと悩んでいたことだ。
(あの頃は、想いが深まっていくことに怯えていたんだっけ……いつか、半助さんが自分の元を離れてしまう……お父さんとお母さんの影を半助さんに重ねてしまってたんだよね……現状から一歩踏み出すことが怖くて怖くて……)
きり丸が未だに信じられない、といった顔で言う。
「ほんっとうに牧之介に相談したんですか?」
「えっと……その……それは……」
「本当なら教えてくれ。一体、あのとき君が何を思いつめていたのか、私は知りたい」
きり丸と半助が距離を詰める。
空に関することは、是が非でも知っておきたいらしい。
だが、空としては、いくら終わったこととはいえ、当時の複雑な心境全てを語るのは勘弁してほしい。
それに、これ以上蒸し返されたくない。
「な、なんでもないんです……ほんとに」
「でも、今の君の態度は明らかに……」
半助は訝しるが、空はもじもじと口ごもってそれ以上言おうとしない。
痺れをきらした牧之介が煽りをかける。
「土井半助にきり丸!そんなに教えてやりたいならこの俺が教えてやるぞ。それはだな~」
「きゃあっ、やめて、やめてってば!」
「実は空は~」
「やめて、やめて、やめてくださーい!」
完全に動転した空はその場にいたたまれなくなる。
半べそをかきながら、全速力で逃亡した。
「あ、空さんっ!」
きり丸が慌てて追いかける。
半助が牧之介の胸ぐらを掴んだ。
「おいっ、牧之介!何もあそこまで追い詰めることはないだろう!それにしても、一体お前が空から何の相談を受けたというのだ?」
「はっ知りたいか……それならば、土井半助ぇ、お前が空の肩代わりをしろ。忍術学園の食券一年分で手をうってやろうじゃないか」
「なっ!?」
「食券一年分……お前なら安いもんだろう。さぁ、払うんだっ」
(チョロい、チョロい。これでしばらくは忍術学園に厄介になれる!!)
今や完全に優位に立っていると、牧之介は驕っている。
だが、
「嫌だっ!お前になんか、びた一文も払わん!」
と背を向けられる。
完全に目論見が外れ、牧之介は地面に突っ伏してしまった。
「くっ……何故だ何故だ何故だぁっ!あいつが俺に相談したこと、知りたくないのか!?」
「そりゃあ、知りたいよ。でも、大金はたいてまでお前の口から聞く必要はない。空から直接聞けばいい」
「へっ!?」
牧之介がポカンとする。
その間抜けな顔の牧之介に向かって、半助は自信たっぷりに言った。
「たとえ、私に言いにくいことでも、恥ずかしいことでも……じっくりと辛抱強く構えていれば、空はきっと話してくれる」
「……」
「私と空はもう……何よりも強い絆で結ばれているからな!」
そう言い放つと、半助は一目散に空たちの後を追った。
「……」
一人残された牧之介はしばらく呆然としていたが、やがて我に返った。
「ケッ、な~にが「何よりも強い絆で結ばれてる」だ!クッサい台詞だな。おえーっ……ん、待てよ……!」
牧之介がハッとした表情で言う。
「あの感じだと二人はもうデキてるってことだよな?となると……それはぜ~んぶ俺の人生相談のおかげってことじゃねえか!それなら、空だけでなく土井半助……両方から成功報酬をたっぷり頂かないとな」
そうと決まったら、と牧之介が半助の後を追う。
駆けながら、卑しい笑みを浮かべた。
(グヒヒッ……このネタで当分空と土井半助をつけ回してやるぜ~~!!)
やっぱりしつこい牧之介なのだった。