きりちゃんの、もうかりまっか?
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「残念だが、私はそう気が長くない。今すぐ教えてもらおうか」
「これ以上、空さんに心配かけさせたくないですからね」
振り返ってきり丸が眼に入れたのは、猜疑心いっぱいの目で睨みつけてくる半助と利吉だった。
「げっ!土井先生と利吉さん。こ、こんにちは。本日はお日柄も良く~」
「……今日は仏滅だぞ、きり丸」
「土井先生。やっぱり怪しいですよ。私たちの顔を見るなり、大滝の汗を流しているし」
きり丸がギクリとする。
どうやら、この大人二人に後ろめたいことがあるらしい。
(よりにもよってこの二人に出くわすなんてまずいっ。何か話題を逸らさないと……)
「ああっ!!」
きり丸がわざとらしく驚いて見せた。
「どうしたんですか、空さん!?体調悪いんですか?」
「あ、ほんとだ。大丈夫ですか?」
乱太郎、しんべヱも半助に背負われた空を心配しはじめる。
乱きりしん三人組の声に反応したのか、空の瞼がゆっくりと開く。
視界にきり丸をとらえると、表情が曇った。
「きりちゃん……」
空が哀し気に見つめてくる。
ここでようやく、空の哀しみの原因が自分であることにきり丸は気づいた。
だが、思い当たることは何一つもない。
「あ、あの~、空さん、一体どうしたんっすか?」
「……」
空はゆっくりと半助から降りる。
きり丸と目線を合わせるように身を屈め、その肩に手を置いた。
「……本当にやってないよね?」
「はぁ?」
「身体を売るとか……そういうこと……やってないよね?」
「へ!?」
きり丸がキョトンとした。
「きり丸。お前、最近随分と羽振りがいいようだな。空に何度も高級菓子を奢っていると聞いたぞ」
「子どもが短期間で大金を稼ぐなんて、どう考えても怪しすぎる。だから、空さんはお前が売春とか良くないことに手を染めているんじゃないか、って心配されているんだ」
半助と利吉に補足されて、きり丸は理解した。
そして、
「あっはは。な~んだ、そういうことですか!」
きり丸は笑い飛ばした。
そして、表情をキリリと引き締めて言った。
「空さん。ご安心ください。身体を売るなんて一切していません。一年は組の良い子の象徴ともいうべきこのおれが空さんを泣かせるようなこと、するわけがない!」
「……本当?」
「ええ。この摂津のきり丸……貴女のためにここに誓います」
そう言って、きり丸が胸に手を当て美形顔を決めた。
天衣無縫のスマイルに、空もすっかり安心したようだ。
きり丸をぎゅっと抱きしめる。
「良かった!私、ほんとにほんとに心配したんだから……!」
「はは、よくわかんないけど……すんません。でも、これでおれの身の潔白を証明できたようだし、めでたしめでたし。じゃあ、おれは急用を思い出したから、この辺で、」
だが、きり丸の腕を半助が掴んだ。
「ちょっと待て。きり丸。丸く収まったっていう雰囲気に紛れて逃げようとするな。肝心のお前のバイトについてまだ何も聞いていない!」
「ええっ!?べ、別におれが何で儲けようがいいじゃないですか!」
「では、どうして隠す必要があるんだ?私や土井先生に疚しいことがなければ言えるはずだぞ」
「そ、それは……企業秘密ってものがあるんです!」
半助、利吉に詰め寄られても、きり丸は断固として口を割らない。
両者引かない睨み合いが続く。
そのときだった。
ひらり…ときり丸の袖から、一枚の紙が落ちたのだ。
気づいた乱太郎が慌てて拾う。
「きり丸、これ落としたよ」
(ゲゲッ!)
差し出された紙を見て、きり丸の身体から血の気が失せていく。
余程見られてはまずいものらしい。
この狼狽ぶりに、利吉はピンときた。
「土井先生、きっとこれがバイトの秘密ですよ。貸せ、乱太郎!」
「え?あ?」
乱太郎から取り上げると、利吉はもどかしそうに四つ折りの紙を開いた。
「利吉君、一体何が書いてあるんだ?」
「ええっと……まずは一番上に「売上集計表」と題名があって……その下には、表があります」
「表?」
「はい。半、利、仙、伊、久……という文字が縦の列に書いてあって、横には正の字と金額が」
「どういうことだ、きり丸?」
そう言って、半助がきり丸をギロリと睨んだ。
「どうもこうも。物を売ったら売上を数えるなんて商売の基本中の基本、当たり前のことじゃないですか?」
「じゃあ、その物というのは一体何なんだ?」
「うっ。そ、それは……」
半助に詰め寄られて、きり丸が後退りする。
だが、逃すまいと利吉がきり丸の後ろをとった。
「もうこれで逃げられないぞ。観念しろ、きり丸。何のバイトをやってるのか、吐くんだ」
「グズッ……ひどいですぅ。土井先生に利吉さぁん……二人がかりで幼気な少年を追い詰めて、良い大人が恥ずかしくないんですかぁ?」
「「恥ずかしくない!」」
「ありゃりゃ」
哀車の術が大失敗し、ウソ泣きしていたきり丸はずっこける。
そのときだった。
きり丸の袖から、またもやある物がすべり落ちてきたのだ。
はがきサイズの紙が、複数枚。
運の悪いことに、それは緩やかな風に乗って、全部半助と利吉の手元に渡った。
「ん?なんだこれは……ああ!」
半助が愕然と声を上げては、硬直してしまう。
利吉もまた同じ反応だ。
「え、何々?土井先生に利吉さん、私たちにも見せてください!」
勢い込んだ乱太郎としんべヱは、それぞれの紙を見て、顔を見合わせた。
「これ以上、空さんに心配かけさせたくないですからね」
振り返ってきり丸が眼に入れたのは、猜疑心いっぱいの目で睨みつけてくる半助と利吉だった。
「げっ!土井先生と利吉さん。こ、こんにちは。本日はお日柄も良く~」
「……今日は仏滅だぞ、きり丸」
「土井先生。やっぱり怪しいですよ。私たちの顔を見るなり、大滝の汗を流しているし」
きり丸がギクリとする。
どうやら、この大人二人に後ろめたいことがあるらしい。
(よりにもよってこの二人に出くわすなんてまずいっ。何か話題を逸らさないと……)
「ああっ!!」
きり丸がわざとらしく驚いて見せた。
「どうしたんですか、空さん!?体調悪いんですか?」
「あ、ほんとだ。大丈夫ですか?」
乱太郎、しんべヱも半助に背負われた空を心配しはじめる。
乱きりしん三人組の声に反応したのか、空の瞼がゆっくりと開く。
視界にきり丸をとらえると、表情が曇った。
「きりちゃん……」
空が哀し気に見つめてくる。
ここでようやく、空の哀しみの原因が自分であることにきり丸は気づいた。
だが、思い当たることは何一つもない。
「あ、あの~、空さん、一体どうしたんっすか?」
「……」
空はゆっくりと半助から降りる。
きり丸と目線を合わせるように身を屈め、その肩に手を置いた。
「……本当にやってないよね?」
「はぁ?」
「身体を売るとか……そういうこと……やってないよね?」
「へ!?」
きり丸がキョトンとした。
「きり丸。お前、最近随分と羽振りがいいようだな。空に何度も高級菓子を奢っていると聞いたぞ」
「子どもが短期間で大金を稼ぐなんて、どう考えても怪しすぎる。だから、空さんはお前が売春とか良くないことに手を染めているんじゃないか、って心配されているんだ」
半助と利吉に補足されて、きり丸は理解した。
そして、
「あっはは。な~んだ、そういうことですか!」
きり丸は笑い飛ばした。
そして、表情をキリリと引き締めて言った。
「空さん。ご安心ください。身体を売るなんて一切していません。一年は組の良い子の象徴ともいうべきこのおれが空さんを泣かせるようなこと、するわけがない!」
「……本当?」
「ええ。この摂津のきり丸……貴女のためにここに誓います」
そう言って、きり丸が胸に手を当て美形顔を決めた。
天衣無縫のスマイルに、空もすっかり安心したようだ。
きり丸をぎゅっと抱きしめる。
「良かった!私、ほんとにほんとに心配したんだから……!」
「はは、よくわかんないけど……すんません。でも、これでおれの身の潔白を証明できたようだし、めでたしめでたし。じゃあ、おれは急用を思い出したから、この辺で、」
だが、きり丸の腕を半助が掴んだ。
「ちょっと待て。きり丸。丸く収まったっていう雰囲気に紛れて逃げようとするな。肝心のお前のバイトについてまだ何も聞いていない!」
「ええっ!?べ、別におれが何で儲けようがいいじゃないですか!」
「では、どうして隠す必要があるんだ?私や土井先生に疚しいことがなければ言えるはずだぞ」
「そ、それは……企業秘密ってものがあるんです!」
半助、利吉に詰め寄られても、きり丸は断固として口を割らない。
両者引かない睨み合いが続く。
そのときだった。
ひらり…ときり丸の袖から、一枚の紙が落ちたのだ。
気づいた乱太郎が慌てて拾う。
「きり丸、これ落としたよ」
(ゲゲッ!)
差し出された紙を見て、きり丸の身体から血の気が失せていく。
余程見られてはまずいものらしい。
この狼狽ぶりに、利吉はピンときた。
「土井先生、きっとこれがバイトの秘密ですよ。貸せ、乱太郎!」
「え?あ?」
乱太郎から取り上げると、利吉はもどかしそうに四つ折りの紙を開いた。
「利吉君、一体何が書いてあるんだ?」
「ええっと……まずは一番上に「売上集計表」と題名があって……その下には、表があります」
「表?」
「はい。半、利、仙、伊、久……という文字が縦の列に書いてあって、横には正の字と金額が」
「どういうことだ、きり丸?」
そう言って、半助がきり丸をギロリと睨んだ。
「どうもこうも。物を売ったら売上を数えるなんて商売の基本中の基本、当たり前のことじゃないですか?」
「じゃあ、その物というのは一体何なんだ?」
「うっ。そ、それは……」
半助に詰め寄られて、きり丸が後退りする。
だが、逃すまいと利吉がきり丸の後ろをとった。
「もうこれで逃げられないぞ。観念しろ、きり丸。何のバイトをやってるのか、吐くんだ」
「グズッ……ひどいですぅ。土井先生に利吉さぁん……二人がかりで幼気な少年を追い詰めて、良い大人が恥ずかしくないんですかぁ?」
「「恥ずかしくない!」」
「ありゃりゃ」
哀車の術が大失敗し、ウソ泣きしていたきり丸はずっこける。
そのときだった。
きり丸の袖から、またもやある物がすべり落ちてきたのだ。
はがきサイズの紙が、複数枚。
運の悪いことに、それは緩やかな風に乗って、全部半助と利吉の手元に渡った。
「ん?なんだこれは……ああ!」
半助が愕然と声を上げては、硬直してしまう。
利吉もまた同じ反応だ。
「え、何々?土井先生に利吉さん、私たちにも見せてください!」
勢い込んだ乱太郎としんべヱは、それぞれの紙を見て、顔を見合わせた。