きりちゃんの、もうかりまっか?
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(やっぱりおかしい……)
空は眉根を寄せては、う~んと首を捻るばかりである。
「「?」」
一年は組の職員室に入ってきてからずっと好いた女の顔が浮かない――となれば、この二人が黙っているはずがない。
「どうしたんだ、空?そんなに険しい顔をして」
「そうですよ、空さん。可愛い顔が台無しですよ」
半助と利吉が競うように声をかける。
その二つの優しい声に導かれるように、空は顔を上げた。
「土井先生、利吉さん……実は、相談したいことがありまして、」
「うん、いいよ」
「何でも聞いてください」
「ありがとうございます。実はこれなんですが……」
空が手提げの風呂敷から包みを取り出す。
とある烙印の入った外装の箱を見て、半助と利吉は一目でわかった。
「これって、あの有名な高級菓子屋の、」
「結構値が張るけど、町の人たちに大人気で、すぐに売り切れてしまうっていうやつですよね」
空がコクリと頷いた。
「お二方とも、やっぱりご存じですよね。ちなみに、これをくれたのは誰だと思いますか?」
「ええ?ってそりゃこんな高価なもの、学園長先生のご友人とか?」
「或いは、忍術学園と協力関係にあるお城の使いの方が手土産に持ってきたとか、」
しかし、いずれの答えにも、空は首を左右に振った。
「実はこれ……きりちゃんが私にくれたんです。いつもお世話になってるからって、そのお礼に」
衝撃の一言だった。
半助と利吉は一瞬目をテンにした後、すぐに「ええ!」と驚愕の声を同時に上げた。
「あ……ありえない、ありえないぞ!あの超がつくほどのウルトラドケチで、「あげる」とか「くれ」っていう言葉が大嫌いなきり丸がこんな高級菓子をポンとプレゼントするなんて!」
「十中八九怪しいですね。きり丸に何かあったとしか思えません!」
「やっぱり、やっぱりそうですよね。これがたった一度きりなら、日々の感謝の気持ちを素直に受け止めらるんですが、実は……もう三回目なんです」
「三回目……!となると、今のきり丸はしこたま稼いでいるってことになりますね」
「でも、きり丸は天才アルバイターとはいえ、まだ子どもだぞ?そんな稼ぎのいい仕事あるわけ、」
「あ、もしかして!」
空の顔がみるみる青ざめていく。
「ま、まさか……きりちゃん、身体を売っているんじゃ……」
売春。
その二文字が空の頭の中をよぎった。
「いやぁ、さすがにそれはないだろう」
「そうですよ。きり丸が身体を売るなんて、ないない」
「うんうん」
男二人は完全否定する。
だが、真に受けない男たちに空は激怒した。
「もう、二人とも何もわかってません!きりちゃん、とってもとっても可愛いじゃないですか!」
「「そうかぁ?」」
「そうです!!だから、きっと……自分の魅力に気づいたきりちゃんは、大金を得る方法として、大人のお姉さま方に弄ばれることを選んで……あぁ、」
最悪の事態を想定したのだろう。
眩暈で倒れそうになる空を、半助が咄嗟に支えた。
「おいおい大丈夫か!?全く、空も大袈裟というか……心配性だなぁ」
「まぁ、仕方ないですよ。空さんにとっては、きり丸は弟同然ですからね。あれ?ということは私の未来の弟でもあるのか……」
「ん?なんか言ったか?利吉君」
「いーえ、何でもないです!しかし、きり丸が高級菓子を頻繁に差し入れできるほど大金を持っているってのはどうにも引っかかりますね」
「ああ。何か悪いことを働いていないといいが……。ええい、ここで話し合っていても埒が明かない。本人に直接確かめよう」
「では、今すぐきり丸のもとへ行きましょう!」
半助が大きく頷く。
今にも魂が抜けそうな空を背に抱え、利吉とともに部屋を駆けだした。
一方、こちらは乱太郎・きり丸・しんべヱの長屋。
自室前の縁側で、乱太郎、きり丸、しんべヱの三人は羊羹を頬張っている。
菓子の包装は、先ほど空が手にしていた高級和菓子と同じものだ。
「ああ、美味しい~!昨日最っ高においしい最中を食べたばかりなのに、今日もこ~んなに美味しい高級羊羹が食べれるなんて」
ほっぺたが落ちるほどの美味しさに舌鼓を打つしんベヱに対し、乱太郎の顔はやや浮かない。
「昨日に引き続き、なんだか悪いような気もするけど。きりちゃん……ほんとに食べちゃっていいの?」
「いいのいいの。今まで乱太郎としんべヱにはうんと世話になってきたからな」
「それにしても、きり丸。今度は何のバイトを見つけたの~?随分と時給の良いバイトみたいだけど~?」
「へへ。それは秘密」
「ふ~ん」
質問を振ったしんべヱだったが、彼にとっては羊羹を食べることが最重要課題で、きり丸にかわされようが、まるで意に介さない。
「おれさ、気づいちまったんだよね。新聞配達や子守に内職……お金の稼ぎ方も色々あるけど、一番重要なのはいかに効率よく稼ぐかってことに……」
そう言って、きり丸は前髪をかき分けて微笑む。
白い八重歯がきらりと光った。
どこか達観したような発言。
表情から読み取れる余裕ある態度。
全身から輝かしいオーラを放つきり丸に、乱太郎もしんベヱも唖然とした。
「ひぇぇぇ……!ど、どうしちゃったのきり丸!?」
「仕草といい、発言といい、今日のきり丸はひと味違う……!」
あの食欲魔人のしんベヱの手から、ぽろっと羊羹がこぼれ落ちるなんて通常ではありえない。
好奇心が食欲に勝った瞬間だった。
「ねぇ、きり丸!一体どんなお仕事をしてるの?ボク、気になって仕方がないよ~!!」
「私も!きり丸みたいにかっこよくなりたい!」
「「ねぇ、教えて教えて~!!」」
「チッチッチッ。ダメダメ。そんな簡単には教えらんないよ。おれもこの境地に達するまで相当時間がかかったし。でも、そうだな……おれが六年生までの授業料を稼ぎ終えたときには、教えてやらなくもないかな。今のペースだと三ヶ月後には達成できそうだけど」
「ええっ?六年分の授業料をたった三ヶ月で!?」
乱太郎としんベヱが顔を見合わせる。
きり丸って凄すぎる。
そんな親友たちから尊敬の眼差しを受けて、満更でもないきり丸の背後から声が飛んだ。
空は眉根を寄せては、う~んと首を捻るばかりである。
「「?」」
一年は組の職員室に入ってきてからずっと好いた女の顔が浮かない――となれば、この二人が黙っているはずがない。
「どうしたんだ、空?そんなに険しい顔をして」
「そうですよ、空さん。可愛い顔が台無しですよ」
半助と利吉が競うように声をかける。
その二つの優しい声に導かれるように、空は顔を上げた。
「土井先生、利吉さん……実は、相談したいことがありまして、」
「うん、いいよ」
「何でも聞いてください」
「ありがとうございます。実はこれなんですが……」
空が手提げの風呂敷から包みを取り出す。
とある烙印の入った外装の箱を見て、半助と利吉は一目でわかった。
「これって、あの有名な高級菓子屋の、」
「結構値が張るけど、町の人たちに大人気で、すぐに売り切れてしまうっていうやつですよね」
空がコクリと頷いた。
「お二方とも、やっぱりご存じですよね。ちなみに、これをくれたのは誰だと思いますか?」
「ええ?ってそりゃこんな高価なもの、学園長先生のご友人とか?」
「或いは、忍術学園と協力関係にあるお城の使いの方が手土産に持ってきたとか、」
しかし、いずれの答えにも、空は首を左右に振った。
「実はこれ……きりちゃんが私にくれたんです。いつもお世話になってるからって、そのお礼に」
衝撃の一言だった。
半助と利吉は一瞬目をテンにした後、すぐに「ええ!」と驚愕の声を同時に上げた。
「あ……ありえない、ありえないぞ!あの超がつくほどのウルトラドケチで、「あげる」とか「くれ」っていう言葉が大嫌いなきり丸がこんな高級菓子をポンとプレゼントするなんて!」
「十中八九怪しいですね。きり丸に何かあったとしか思えません!」
「やっぱり、やっぱりそうですよね。これがたった一度きりなら、日々の感謝の気持ちを素直に受け止めらるんですが、実は……もう三回目なんです」
「三回目……!となると、今のきり丸はしこたま稼いでいるってことになりますね」
「でも、きり丸は天才アルバイターとはいえ、まだ子どもだぞ?そんな稼ぎのいい仕事あるわけ、」
「あ、もしかして!」
空の顔がみるみる青ざめていく。
「ま、まさか……きりちゃん、身体を売っているんじゃ……」
売春。
その二文字が空の頭の中をよぎった。
「いやぁ、さすがにそれはないだろう」
「そうですよ。きり丸が身体を売るなんて、ないない」
「うんうん」
男二人は完全否定する。
だが、真に受けない男たちに空は激怒した。
「もう、二人とも何もわかってません!きりちゃん、とってもとっても可愛いじゃないですか!」
「「そうかぁ?」」
「そうです!!だから、きっと……自分の魅力に気づいたきりちゃんは、大金を得る方法として、大人のお姉さま方に弄ばれることを選んで……あぁ、」
最悪の事態を想定したのだろう。
眩暈で倒れそうになる空を、半助が咄嗟に支えた。
「おいおい大丈夫か!?全く、空も大袈裟というか……心配性だなぁ」
「まぁ、仕方ないですよ。空さんにとっては、きり丸は弟同然ですからね。あれ?ということは私の未来の弟でもあるのか……」
「ん?なんか言ったか?利吉君」
「いーえ、何でもないです!しかし、きり丸が高級菓子を頻繁に差し入れできるほど大金を持っているってのはどうにも引っかかりますね」
「ああ。何か悪いことを働いていないといいが……。ええい、ここで話し合っていても埒が明かない。本人に直接確かめよう」
「では、今すぐきり丸のもとへ行きましょう!」
半助が大きく頷く。
今にも魂が抜けそうな空を背に抱え、利吉とともに部屋を駆けだした。
一方、こちらは乱太郎・きり丸・しんべヱの長屋。
自室前の縁側で、乱太郎、きり丸、しんべヱの三人は羊羹を頬張っている。
菓子の包装は、先ほど空が手にしていた高級和菓子と同じものだ。
「ああ、美味しい~!昨日最っ高においしい最中を食べたばかりなのに、今日もこ~んなに美味しい高級羊羹が食べれるなんて」
ほっぺたが落ちるほどの美味しさに舌鼓を打つしんベヱに対し、乱太郎の顔はやや浮かない。
「昨日に引き続き、なんだか悪いような気もするけど。きりちゃん……ほんとに食べちゃっていいの?」
「いいのいいの。今まで乱太郎としんべヱにはうんと世話になってきたからな」
「それにしても、きり丸。今度は何のバイトを見つけたの~?随分と時給の良いバイトみたいだけど~?」
「へへ。それは秘密」
「ふ~ん」
質問を振ったしんべヱだったが、彼にとっては羊羹を食べることが最重要課題で、きり丸にかわされようが、まるで意に介さない。
「おれさ、気づいちまったんだよね。新聞配達や子守に内職……お金の稼ぎ方も色々あるけど、一番重要なのはいかに効率よく稼ぐかってことに……」
そう言って、きり丸は前髪をかき分けて微笑む。
白い八重歯がきらりと光った。
どこか達観したような発言。
表情から読み取れる余裕ある態度。
全身から輝かしいオーラを放つきり丸に、乱太郎もしんベヱも唖然とした。
「ひぇぇぇ……!ど、どうしちゃったのきり丸!?」
「仕草といい、発言といい、今日のきり丸はひと味違う……!」
あの食欲魔人のしんベヱの手から、ぽろっと羊羹がこぼれ落ちるなんて通常ではありえない。
好奇心が食欲に勝った瞬間だった。
「ねぇ、きり丸!一体どんなお仕事をしてるの?ボク、気になって仕方がないよ~!!」
「私も!きり丸みたいにかっこよくなりたい!」
「「ねぇ、教えて教えて~!!」」
「チッチッチッ。ダメダメ。そんな簡単には教えらんないよ。おれもこの境地に達するまで相当時間がかかったし。でも、そうだな……おれが六年生までの授業料を稼ぎ終えたときには、教えてやらなくもないかな。今のペースだと三ヶ月後には達成できそうだけど」
「ええっ?六年分の授業料をたった三ヶ月で!?」
乱太郎としんベヱが顔を見合わせる。
きり丸って凄すぎる。
そんな親友たちから尊敬の眼差しを受けて、満更でもないきり丸の背後から声が飛んだ。