禍福は糾える縄の如し
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
さて、物語は一件落着したが、最大の謎が解かれていない。
それは、どうして利吉が元の姿に戻れたということだ。
利吉の騒動から、一週間後のこと――
その日は乱太郎、しんべヱ、きり丸が学園長の庵の掃除当番だった。
学園長が留守なのをいいことに、三人組は手抜きで掃除を終わらせ、縁側でだべっている。
「今日は学園長が留守でラッキーだったね」
「ああ、いつもなら口やかましく言われるし」
「ねぇねぇ。これから何して遊ぼうか?ってその前に腹ごしらえしない?」
歩く食欲こと、しんべヱが懐から布袋を取り出す。
その中に入っていたのは、木の実。
先日、饅頭作りの際に周りに内緒で入れて、ちょっとした騒ぎになったやつだ。
一人食べ始めるしんべヱに対し、きり丸と乱太郎は呆れ顔。
「お前、それ好きだよな」
「最近よく食べてるよね」
「うん。まったりとしていてしつこい味がクセになるというか~あ、乱太郎たちも食べる?」
「「いらない」」
「あ、そう」
再びしんべヱが木の実に没頭する。
ボリボリボリボリ……
咀嚼音がひたすら続く。
やがて、
「もう最後の一個だ。大事に食べないと、」
としんべヱが「あ~ん」と大口開けて木の実を放り込んだ、そのときだった。
「な、その木の実は……!」
乱太郎ときり丸が声のした方を振り返ると、そこには外出先から帰宅した学園長がいた。
「学園長先生だ。おかえりなさい!」
乱太郎が挨拶しても、学園長はしんべヱばかりを見ている。
そのしんべヱはというと、最後の一粒を飲み込んで、
「ああ、美味しかった!」
と満足そうにほっぺを押さえる。
学園長が決死の形相でしんべヱに詰め寄った。
「し、しんべヱ!お前、さっき食べた木の実は……どこで拾ったんじゃ!?」
「あ、学園長先生、おかえりなさい~。あの木の実なら、裏々山で見つけましたよ~」
「なんと!そんな近くにあったとは……!」
学園長が興奮気味に震えている。
奇妙に思った乱太郎が思わず質問した。
「が、学園長先生、しんべヱが食べてた木の実のこと知っているんですか?」
「うむ……じゃが、目にするのは初めてじゃ」
「初めてって、一体どういうこと?」
きり丸の疑問に、学園長がうむ、と頷いてから言った。
「古文書で得た情報からしかわからんが、外殻に独特の縞模様のあるあの木の実は『不老種子』と呼ばれていてのう……食べると身体が若返りするんじゃ」
「「ええ!!」」
魔法のような効能に、三人が興奮する。
「若返るって、すげぇ!」
「でも、しんべえが食べても何にも起こらなかったよね」
「そうだね。ボク全然若返ってないんだけど~」
「それはしんべヱが子どもだからじゃよ。あの実は子どもには効かん。成人した大人にしか効果がないんじゃ」
「なるほど~」
「ただ不老種子だからというて、万能ではないぞ。ある程度時間が経過すると、元の姿に戻ってしまうんじゃ」
「ふ~ん」
学園長がさらに続ける。
「あの実は食べれば食べるほど若返ると言われておってのう……しかし、百年に一度しか実らない。したがって、大変貴重で高価な代物なんじゃ」
貴重で高価という言葉にきり丸の耳がダンボのように膨らむ。
大儲けの匂いがする。
欲に目が眩んだきり丸が、颯爽と手を挙げた。
「はいは~い!おれ、今から取りに行く!」
学園長も負けてはいない。
「もちろん、ワシも行くぞ!不老種子で二十歳まで若返って、天才忍者の実力を皆に知らしめてやる!そうすれば、ワシの人気も……グフフフフ!」
と完全に意気投合した二人は、しんべヱから大体の場所を聞き出すと、一瞬でこの場から消え去った。
「きり丸と学園長、行っちゃったね」
「うん……あ!」
「どうしたの、しんべヱ?」
「ボク、この前裏々山に行ったときに、ぜ~んぶ拾い尽くしちゃったんだよねぇ。何回も行くのが面倒だから、二度と採りに行かなくてもいいように」
「てことは……もしかしたら、もう裏々山には不老種子は落ちてないってこと?」
「まぁ、運が良ければ、一つくらいは残っているんじゃない~」
乱太郎がしんべヱを見るが、しんべヱは冷や汗をだらだらと流している。
望み薄だろう。
以降をもって、乱太郎としんべヱはこの話題を出さずに静かに過ごした。
予想通り、帰ってきたきり丸と学園長はこれ以上ないくらいがっくりと肩を落としていた。
それは、どうして利吉が元の姿に戻れたということだ。
利吉の騒動から、一週間後のこと――
その日は乱太郎、しんべヱ、きり丸が学園長の庵の掃除当番だった。
学園長が留守なのをいいことに、三人組は手抜きで掃除を終わらせ、縁側でだべっている。
「今日は学園長が留守でラッキーだったね」
「ああ、いつもなら口やかましく言われるし」
「ねぇねぇ。これから何して遊ぼうか?ってその前に腹ごしらえしない?」
歩く食欲こと、しんべヱが懐から布袋を取り出す。
その中に入っていたのは、木の実。
先日、饅頭作りの際に周りに内緒で入れて、ちょっとした騒ぎになったやつだ。
一人食べ始めるしんべヱに対し、きり丸と乱太郎は呆れ顔。
「お前、それ好きだよな」
「最近よく食べてるよね」
「うん。まったりとしていてしつこい味がクセになるというか~あ、乱太郎たちも食べる?」
「「いらない」」
「あ、そう」
再びしんべヱが木の実に没頭する。
ボリボリボリボリ……
咀嚼音がひたすら続く。
やがて、
「もう最後の一個だ。大事に食べないと、」
としんべヱが「あ~ん」と大口開けて木の実を放り込んだ、そのときだった。
「な、その木の実は……!」
乱太郎ときり丸が声のした方を振り返ると、そこには外出先から帰宅した学園長がいた。
「学園長先生だ。おかえりなさい!」
乱太郎が挨拶しても、学園長はしんべヱばかりを見ている。
そのしんべヱはというと、最後の一粒を飲み込んで、
「ああ、美味しかった!」
と満足そうにほっぺを押さえる。
学園長が決死の形相でしんべヱに詰め寄った。
「し、しんべヱ!お前、さっき食べた木の実は……どこで拾ったんじゃ!?」
「あ、学園長先生、おかえりなさい~。あの木の実なら、裏々山で見つけましたよ~」
「なんと!そんな近くにあったとは……!」
学園長が興奮気味に震えている。
奇妙に思った乱太郎が思わず質問した。
「が、学園長先生、しんべヱが食べてた木の実のこと知っているんですか?」
「うむ……じゃが、目にするのは初めてじゃ」
「初めてって、一体どういうこと?」
きり丸の疑問に、学園長がうむ、と頷いてから言った。
「古文書で得た情報からしかわからんが、外殻に独特の縞模様のあるあの木の実は『不老種子』と呼ばれていてのう……食べると身体が若返りするんじゃ」
「「ええ!!」」
魔法のような効能に、三人が興奮する。
「若返るって、すげぇ!」
「でも、しんべえが食べても何にも起こらなかったよね」
「そうだね。ボク全然若返ってないんだけど~」
「それはしんべヱが子どもだからじゃよ。あの実は子どもには効かん。成人した大人にしか効果がないんじゃ」
「なるほど~」
「ただ不老種子だからというて、万能ではないぞ。ある程度時間が経過すると、元の姿に戻ってしまうんじゃ」
「ふ~ん」
学園長がさらに続ける。
「あの実は食べれば食べるほど若返ると言われておってのう……しかし、百年に一度しか実らない。したがって、大変貴重で高価な代物なんじゃ」
貴重で高価という言葉にきり丸の耳がダンボのように膨らむ。
大儲けの匂いがする。
欲に目が眩んだきり丸が、颯爽と手を挙げた。
「はいは~い!おれ、今から取りに行く!」
学園長も負けてはいない。
「もちろん、ワシも行くぞ!不老種子で二十歳まで若返って、天才忍者の実力を皆に知らしめてやる!そうすれば、ワシの人気も……グフフフフ!」
と完全に意気投合した二人は、しんべヱから大体の場所を聞き出すと、一瞬でこの場から消え去った。
「きり丸と学園長、行っちゃったね」
「うん……あ!」
「どうしたの、しんべヱ?」
「ボク、この前裏々山に行ったときに、ぜ~んぶ拾い尽くしちゃったんだよねぇ。何回も行くのが面倒だから、二度と採りに行かなくてもいいように」
「てことは……もしかしたら、もう裏々山には不老種子は落ちてないってこと?」
「まぁ、運が良ければ、一つくらいは残っているんじゃない~」
乱太郎がしんべヱを見るが、しんべヱは冷や汗をだらだらと流している。
望み薄だろう。
以降をもって、乱太郎としんべヱはこの話題を出さずに静かに過ごした。
予想通り、帰ってきたきり丸と学園長はこれ以上ないくらいがっくりと肩を落としていた。