禍福は糾える縄の如し
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利吉の顔じゅうに伝子のキスマークが残っている。
(うぅぅ……気持ち悪い……)
「わ、悪い人じゃないのよ。う、うん。これには深~い大人の事情があって……」
隣にいる空が必死に慰めてくる。
泣く子と地頭(伝子)には勝てぬ――というわけであれから利吉は伝子の餌食(?)になってしまった。
三分間だけという条件つきだったが、久しぶりの親子の触れ合いは想像以上に地獄だった。
(二度とごめんだ!ああ、早く元の姿に戻りたい!)
(一刻も早く空さんに打ち明けるしかない!今こそ絶好のチャンス……!)
ぎゅっと拳を握りしめ、利吉は覚悟を決める。
しかしながら、案内された場所に面食らってしまった。
「あの、ここってもしかして……お風呂?」
「うん。女子風呂だよ。伝助くん、落とし穴に落ちて身体中砂埃かぶちゃってるから、髪の毛だって、こんな……だから、お風呂に入って綺麗にしないと」
そう言って、空が利吉の服を脱がしはじめる。
いくら子どもの姿でも、心は大人。
一方的に裸になるのはどうにも堪えがたかった。
「あ、あの、いいです!せっかくの厚意ですが、遠慮しておきます!こんなの私慣れてるし、平気です!」
「ダメよ。ちゃんと入って綺麗にしないと。ほら、私も一緒に入るから」
自分の正体を明かさねばと急いた利吉だったが、直前で言葉を飲み込んだ。
というのも、空が目の前で服を脱ぎ始めたからだ。
見てはいけないと咄嗟に目を背けたが、その間にも一枚、また一枚と着物が落ちていく。
「ほら、伝助君も早く脱いで」
利吉の目の前には――白い脚。
そのまま顔を上げると、そこには恥ずかしい部分を覆っていない、空の瑞々しい裸体があった。
***
それから三十分後。
利吉は医務室でぐったりと横たわっていた。
「で、伝助くん、大丈夫……!?」
空が利吉の額に氷水を乗せる。
あのあと、利吉は風呂で鼻血を出して倒れてしまった。
(私ともあろうものが、何たる失態……これでもう本当のこと言えなくなったな)
(でも……子どもの体も……いいもんだな……)
成り行きとはいえ、空と風呂に入れたのは思いがけない幸運だった。
「ごめんね、伝助くん……お風呂のぼせさせちゃって」
「き、気にしないでください。悪いのは倒れた私なんだし、」
そう言っても、空はシュンと落ち込んだ様子のままだった。
こんなことで責任を感じてほしくない――そう語るように寝たきりのまま空の手をぎゅっと握った。
「あの……お、お姉ちゃんは何も悪くないから」
「伝助くん……」
利吉が励ますように微笑むと、空の表情が少しずつ明るくなった。
「本当にごめんね」
「もう謝らないでください」
穏やかな雰囲気の中、二人は見つめ合う。
そこへ、医務室の奥からある人物が近づいてくる。
校医の新野だった。
「えっと……伝助くんだったっけ?気分はどうかい?」
「はい、大丈夫です」
「そうか。それならこの薬を飲んでおいてくれ。それから、もうしばらく安静にしていてほしい。何せあれだけ出血したあとだからね。今日はここで一晩休んでいきなさい」
「は、はい」
利吉は起き上がり、言われた通りに薬を飲み、再び布団に横になる。
それを見届けると、あとのことを空に託し、新野が部屋を出ていった。
「というわけで、明日までここで安静にしておいてね。あ、でも……伝助くんのご両親に何て連絡しよう……。ねえ、伝助くんってどこから来たの?○○村?それとも△△村?」
この一言に利吉が冷や汗をかく。
近隣の村に突撃されて大騒ぎになってはまずい。
何とか思考して、
「××村です。でも、連絡する必要はありません。父上は仕事で母上は用事で……今日は家に帰りませんので」
と返した。
「そっか……伝助くんのご両親は不在にしているのね。なら連絡の必要なし、と」
咄嗟についた嘘だったが、空は納得してくれたようで利吉は一安心。
「それじゃあ、新野先生に言われた通り、ここで一晩安静にしてね。明日、一緒にお家に帰りましょう」
「は、はい」
そう返事した利吉だったが、内心ではこうだ。
(う~ん、嘘に嘘を重ねる状況はつらいな。長引くのはまずい。空さんを頼れなくなったことだし、一人になった隙に忍術学園から離れよう……)
だが、その目論見は脆くも崩れ去った。
ガラガラ……
「失礼します。やっぱりここに居た!」
と医務室に入って来たのは、さっき出くわしたくノ一教室のユキ。
トモミ、おシゲも付き添っている。
さらに、
「こんにちは、空さん!新野先生に聞いて、お手伝いに来ました!」
と保健委員の乱太郎が登場する。
もちろん、きり丸としんべヱももれなくいる。
「小さい子って、ほんと可愛いわよねぇ」
「甘えさせてあげたくなるでしゅ」
「ねぇねぇ、ここに居ても暇でしょ。おれたちと一緒に遊ぼうよ!」
「退屈しないように、かるたやすごろく持ってきたよ!」
とあっという間に利吉の周囲が人で埋め尽くされる。
(ちょ、ちょっと待ってくれ!)
だが、利吉の心の声など空に届くはずもなく、
「よかったね。伝助くん。このお兄さんとお姉さんたち、とってもやさしいから、安心してね」
「はぁ……」
「みんな、悪いけど伝助くんの相手しばらくお願いできる?私、仕事を片付けてくるから」
「もちろん!」
「任せてください!」
と代表者である乱太郎、ユキの快諾を受け、空が部屋を去る。
「さぁ、伝助くん。私たちと一緒に遊びましょ!」
「はい……」
何が悲しくて、子どもの遊びに付き合わないといけないのか。
目の前に張本人のしんべヱはいるものの、外野が多すぎてとても聞き出せる雰囲気ではない。
結局、利吉は幼気な三歳児を演じることしかなかった。
(うぅぅ……気持ち悪い……)
「わ、悪い人じゃないのよ。う、うん。これには深~い大人の事情があって……」
隣にいる空が必死に慰めてくる。
泣く子と地頭(伝子)には勝てぬ――というわけであれから利吉は伝子の餌食(?)になってしまった。
三分間だけという条件つきだったが、久しぶりの親子の触れ合いは想像以上に地獄だった。
(二度とごめんだ!ああ、早く元の姿に戻りたい!)
(一刻も早く空さんに打ち明けるしかない!今こそ絶好のチャンス……!)
ぎゅっと拳を握りしめ、利吉は覚悟を決める。
しかしながら、案内された場所に面食らってしまった。
「あの、ここってもしかして……お風呂?」
「うん。女子風呂だよ。伝助くん、落とし穴に落ちて身体中砂埃かぶちゃってるから、髪の毛だって、こんな……だから、お風呂に入って綺麗にしないと」
そう言って、空が利吉の服を脱がしはじめる。
いくら子どもの姿でも、心は大人。
一方的に裸になるのはどうにも堪えがたかった。
「あ、あの、いいです!せっかくの厚意ですが、遠慮しておきます!こんなの私慣れてるし、平気です!」
「ダメよ。ちゃんと入って綺麗にしないと。ほら、私も一緒に入るから」
自分の正体を明かさねばと急いた利吉だったが、直前で言葉を飲み込んだ。
というのも、空が目の前で服を脱ぎ始めたからだ。
見てはいけないと咄嗟に目を背けたが、その間にも一枚、また一枚と着物が落ちていく。
「ほら、伝助君も早く脱いで」
利吉の目の前には――白い脚。
そのまま顔を上げると、そこには恥ずかしい部分を覆っていない、空の瑞々しい裸体があった。
***
それから三十分後。
利吉は医務室でぐったりと横たわっていた。
「で、伝助くん、大丈夫……!?」
空が利吉の額に氷水を乗せる。
あのあと、利吉は風呂で鼻血を出して倒れてしまった。
(私ともあろうものが、何たる失態……これでもう本当のこと言えなくなったな)
(でも……子どもの体も……いいもんだな……)
成り行きとはいえ、空と風呂に入れたのは思いがけない幸運だった。
「ごめんね、伝助くん……お風呂のぼせさせちゃって」
「き、気にしないでください。悪いのは倒れた私なんだし、」
そう言っても、空はシュンと落ち込んだ様子のままだった。
こんなことで責任を感じてほしくない――そう語るように寝たきりのまま空の手をぎゅっと握った。
「あの……お、お姉ちゃんは何も悪くないから」
「伝助くん……」
利吉が励ますように微笑むと、空の表情が少しずつ明るくなった。
「本当にごめんね」
「もう謝らないでください」
穏やかな雰囲気の中、二人は見つめ合う。
そこへ、医務室の奥からある人物が近づいてくる。
校医の新野だった。
「えっと……伝助くんだったっけ?気分はどうかい?」
「はい、大丈夫です」
「そうか。それならこの薬を飲んでおいてくれ。それから、もうしばらく安静にしていてほしい。何せあれだけ出血したあとだからね。今日はここで一晩休んでいきなさい」
「は、はい」
利吉は起き上がり、言われた通りに薬を飲み、再び布団に横になる。
それを見届けると、あとのことを空に託し、新野が部屋を出ていった。
「というわけで、明日までここで安静にしておいてね。あ、でも……伝助くんのご両親に何て連絡しよう……。ねえ、伝助くんってどこから来たの?○○村?それとも△△村?」
この一言に利吉が冷や汗をかく。
近隣の村に突撃されて大騒ぎになってはまずい。
何とか思考して、
「××村です。でも、連絡する必要はありません。父上は仕事で母上は用事で……今日は家に帰りませんので」
と返した。
「そっか……伝助くんのご両親は不在にしているのね。なら連絡の必要なし、と」
咄嗟についた嘘だったが、空は納得してくれたようで利吉は一安心。
「それじゃあ、新野先生に言われた通り、ここで一晩安静にしてね。明日、一緒にお家に帰りましょう」
「は、はい」
そう返事した利吉だったが、内心ではこうだ。
(う~ん、嘘に嘘を重ねる状況はつらいな。長引くのはまずい。空さんを頼れなくなったことだし、一人になった隙に忍術学園から離れよう……)
だが、その目論見は脆くも崩れ去った。
ガラガラ……
「失礼します。やっぱりここに居た!」
と医務室に入って来たのは、さっき出くわしたくノ一教室のユキ。
トモミ、おシゲも付き添っている。
さらに、
「こんにちは、空さん!新野先生に聞いて、お手伝いに来ました!」
と保健委員の乱太郎が登場する。
もちろん、きり丸としんべヱももれなくいる。
「小さい子って、ほんと可愛いわよねぇ」
「甘えさせてあげたくなるでしゅ」
「ねぇねぇ、ここに居ても暇でしょ。おれたちと一緒に遊ぼうよ!」
「退屈しないように、かるたやすごろく持ってきたよ!」
とあっという間に利吉の周囲が人で埋め尽くされる。
(ちょ、ちょっと待ってくれ!)
だが、利吉の心の声など空に届くはずもなく、
「よかったね。伝助くん。このお兄さんとお姉さんたち、とってもやさしいから、安心してね」
「はぁ……」
「みんな、悪いけど伝助くんの相手しばらくお願いできる?私、仕事を片付けてくるから」
「もちろん!」
「任せてください!」
と代表者である乱太郎、ユキの快諾を受け、空が部屋を去る。
「さぁ、伝助くん。私たちと一緒に遊びましょ!」
「はい……」
何が悲しくて、子どもの遊びに付き合わないといけないのか。
目の前に張本人のしんべヱはいるものの、外野が多すぎてとても聞き出せる雰囲気ではない。
結局、利吉は幼気な三歳児を演じることしかなかった。