禍福は糾える縄の如し
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利吉が食堂に足を踏み入れると、そこには食堂のおばちゃんと同じ割烹着姿の空がいた。
自分に向かって、にっこりと微笑みかけてくる。
心が洗われるような天使の笑みだった。
「利吉さん、お久しぶりです」
「空さん、挨拶が遅れてすみません。これ……私のために作ってくれたのですか?」
「ええ。お手紙で今日来るとわかっていたから……いつも利吉さんにはお世話になってるし、感謝の気持ちをあらわしたくて。食堂のおばちゃんに手伝ってもらって、和菓子に挑戦してみたんですけど……」
食堂の机にはふっくらと美味しそうなお饅頭の山。
愛しの女性が自分のために手料理を振舞ってくれたのだと思うと、胸がきゅっと締め付けられる。
「空さん……嬉しいです。今日ここに来て、本当に良かった」
「そ、そんな……大げさですよ」
利吉が感激の面持ちで空を見つめる。
空は気恥ずかしいのか頬をぽっと赤くした。
(本当に愛らしい……)
「ほへ?」
小松田以外の周囲が甘い雰囲気で満たされる。
その雰囲気に流されるように、利吉が空をそっと抱きしめて――という展開になるはずだったが、新たなる登場人物によって幕は下りた。
「り・き・ち、さぁーん!お饅頭、私たちも作ったんですよ!」
「今日のために頑張って早起きしたんです!」
「ボクたちのことも褒めてください~!」
利吉と空の合間からぬっと飛び出したのは、忍術学園の大問題児こと、乱太郎・きり丸・しんべヱだった。
(こ、こいつら……!)
思わず額に青筋が浮かぶ。
場の読めなさはピカ一だな、と利吉が心の中で悪態をついた。
ちなみにこの三人とも相性はあまり良くない――利吉はそう自負している。
「ねぇ利吉さぁん」
「褒めて褒めてぇん」
「おねがぁい♡」
しつこい三人は利吉の両の腕と脚に絡みつく。
余程労いの言葉を期待しているらしかった。
「はいはい。乱太郎、きり丸、しんべヱもありがとな。うれしいよ」
ウンザリしながらもそう言うと、承認欲求が満たされたのか、満面の笑みで三人は離れていった。
「ねぇ、利吉さんも来たことだし、早く食べましょう!ボク、お腹空いちゃった!」
「そうだね。僕も利吉さんを探し回って疲れちゃった」
「じゃあ、今お茶淹れるから、ちょっと待っててね」
空がいそいそと厨房へ小走りした。
ふわふわに膨らんだ饅頭を一口頬張った瞬間、利吉が目を見張った。
「うん、美味い!」
「ほんとですか?よかった……!」
空がほっと胸を撫でおろす。
笑顔の和が広がる中、話を切り出したのは乱太郎だ。
「利吉さん、聞きましたよ。山田先生と派手に親子喧嘩したって」
「仲直りしなくていいんっすか?」
「フン。山田家のことは放っておいてくれ……それにしても、色んな色のお饅頭があって、見た目でも楽しませてくれますね」
「せっかく作るなら、ちょっと遊び心も入れようか思ったんです。こっちの黄色はクチナシの実を使って、緑は抹茶の粉を生地に練り込みました」
「結構手間がかかったんじゃないですか?」
「それでも、乱太郎君たちと一緒に作ったからあっという間でしたよ。ね」
乱きりしんはコクリと相槌を打って、無心に食べ続けている。
せっかくだし、と利吉が二個目を頬張る。
しかし、一つ目の饅頭にはなかった、ガリッという固い食感がした。
「あれ……空さん。饅頭の餡に胡桃か何か入混ぜました?やけに硬かったですけど……」
「え?何も混ぜてないですよ」
イヤな予感がした。
同時にしんべヱが得意げに手を上げた。
「あ、それボクが丸めたお饅頭です。ボクが作ったってわかるように、目印に拾った木の実を入れといたんです!」
利吉の顔が青ざめる。
一同は唖然としていた。
「ね、ねぇ……しんべヱ。木の実って何の木の実だよ?」
「んーっとねぇ。わからない。裏々山に落ちてたんだけど……」
「ダメじゃないか、しんべヱ!そんなものを料理に入れるなんて。ちゃんと食べれるかどうか確認してから、」
「あ、それは大丈夫だよ!ボクちゃんと味見したも~ん。食べたけど、何ともなかったよ。ぜ~んぜん、平気平気!」
そう言って、しんべヱが自分の胸を叩く。
既に毒見しているのであれば大丈夫だろう。
全員の顔に安堵の色が浮かんだ。
「しんベヱくん、拾ったものを勝手にいれちゃいけないよ」
「ごめんなさ~い、、」
小松田に窘められても、あはは…と笑うしんべヱの顔は悪びれていない。
利吉のこめかみに再び青筋が浮かぶ。
この場に空がいなければ、100%怒鳴り散らしたであろう。
乱きりしんに関わると碌なことがないと改めて痛感する利吉だった。
自分に向かって、にっこりと微笑みかけてくる。
心が洗われるような天使の笑みだった。
「利吉さん、お久しぶりです」
「空さん、挨拶が遅れてすみません。これ……私のために作ってくれたのですか?」
「ええ。お手紙で今日来るとわかっていたから……いつも利吉さんにはお世話になってるし、感謝の気持ちをあらわしたくて。食堂のおばちゃんに手伝ってもらって、和菓子に挑戦してみたんですけど……」
食堂の机にはふっくらと美味しそうなお饅頭の山。
愛しの女性が自分のために手料理を振舞ってくれたのだと思うと、胸がきゅっと締め付けられる。
「空さん……嬉しいです。今日ここに来て、本当に良かった」
「そ、そんな……大げさですよ」
利吉が感激の面持ちで空を見つめる。
空は気恥ずかしいのか頬をぽっと赤くした。
(本当に愛らしい……)
「ほへ?」
小松田以外の周囲が甘い雰囲気で満たされる。
その雰囲気に流されるように、利吉が空をそっと抱きしめて――という展開になるはずだったが、新たなる登場人物によって幕は下りた。
「り・き・ち、さぁーん!お饅頭、私たちも作ったんですよ!」
「今日のために頑張って早起きしたんです!」
「ボクたちのことも褒めてください~!」
利吉と空の合間からぬっと飛び出したのは、忍術学園の大問題児こと、乱太郎・きり丸・しんべヱだった。
(こ、こいつら……!)
思わず額に青筋が浮かぶ。
場の読めなさはピカ一だな、と利吉が心の中で悪態をついた。
ちなみにこの三人とも相性はあまり良くない――利吉はそう自負している。
「ねぇ利吉さぁん」
「褒めて褒めてぇん」
「おねがぁい♡」
しつこい三人は利吉の両の腕と脚に絡みつく。
余程労いの言葉を期待しているらしかった。
「はいはい。乱太郎、きり丸、しんべヱもありがとな。うれしいよ」
ウンザリしながらもそう言うと、承認欲求が満たされたのか、満面の笑みで三人は離れていった。
「ねぇ、利吉さんも来たことだし、早く食べましょう!ボク、お腹空いちゃった!」
「そうだね。僕も利吉さんを探し回って疲れちゃった」
「じゃあ、今お茶淹れるから、ちょっと待っててね」
空がいそいそと厨房へ小走りした。
ふわふわに膨らんだ饅頭を一口頬張った瞬間、利吉が目を見張った。
「うん、美味い!」
「ほんとですか?よかった……!」
空がほっと胸を撫でおろす。
笑顔の和が広がる中、話を切り出したのは乱太郎だ。
「利吉さん、聞きましたよ。山田先生と派手に親子喧嘩したって」
「仲直りしなくていいんっすか?」
「フン。山田家のことは放っておいてくれ……それにしても、色んな色のお饅頭があって、見た目でも楽しませてくれますね」
「せっかく作るなら、ちょっと遊び心も入れようか思ったんです。こっちの黄色はクチナシの実を使って、緑は抹茶の粉を生地に練り込みました」
「結構手間がかかったんじゃないですか?」
「それでも、乱太郎君たちと一緒に作ったからあっという間でしたよ。ね」
乱きりしんはコクリと相槌を打って、無心に食べ続けている。
せっかくだし、と利吉が二個目を頬張る。
しかし、一つ目の饅頭にはなかった、ガリッという固い食感がした。
「あれ……空さん。饅頭の餡に胡桃か何か入混ぜました?やけに硬かったですけど……」
「え?何も混ぜてないですよ」
イヤな予感がした。
同時にしんべヱが得意げに手を上げた。
「あ、それボクが丸めたお饅頭です。ボクが作ったってわかるように、目印に拾った木の実を入れといたんです!」
利吉の顔が青ざめる。
一同は唖然としていた。
「ね、ねぇ……しんべヱ。木の実って何の木の実だよ?」
「んーっとねぇ。わからない。裏々山に落ちてたんだけど……」
「ダメじゃないか、しんべヱ!そんなものを料理に入れるなんて。ちゃんと食べれるかどうか確認してから、」
「あ、それは大丈夫だよ!ボクちゃんと味見したも~ん。食べたけど、何ともなかったよ。ぜ~んぜん、平気平気!」
そう言って、しんべヱが自分の胸を叩く。
既に毒見しているのであれば大丈夫だろう。
全員の顔に安堵の色が浮かんだ。
「しんベヱくん、拾ったものを勝手にいれちゃいけないよ」
「ごめんなさ~い、、」
小松田に窘められても、あはは…と笑うしんべヱの顔は悪びれていない。
利吉のこめかみに再び青筋が浮かぶ。
この場に空がいなければ、100%怒鳴り散らしたであろう。
乱きりしんに関わると碌なことがないと改めて痛感する利吉だった。