杭瀬村へ行こう! その3
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その後も大木の思考は泥沼にはまっていった。
(空がわしを嫌ってるなんて、そんなことは決してないはず!)
(でもなぁ、毎回会うたびにおちょくっていたら、多少なりとも傷つくかもなぁ)
(いやいや、しかしだな……)
「大木先生!」
「ん?」
周りを見れば、乱きりしんの三人に加え、料理教室を終えた食堂のおばちゃんがいる。
全員が呆れていた。
「どうしたんですか、大木先生。難しい顔してはがっくりと肩を落としたり。せっかくみんなで鍋を囲んでるっていうのに、」
囲炉裏の中央では今日の料理教室のメニュー、杭瀬村産野菜をふんだんにつかった特製ちゃんこ鍋がぐつぐつと煮えている。
気が付けば、昼食の時間に突入していた。
「ああ……すまんすまん。ちょいと考え事をしてな。おっ、今日はちゃんこ鍋か。いただきます」
おばちゃんの厳しい視線を受け、鍋から具を掬い取る。
何とはなしに口に運ぶがこれがいけなかった。
食べた瞬間、
「あちぃぃぃぃぃ!!」
とあまりの熱さに大木はその場でのたうちまわってしまう。
「熱々なのに冷まさないで食べるなんて無茶っすよ。大木先生、大丈夫っすか?これ、お水!」
きり丸から手渡された水をグイグイを飲むと、咥内の灼熱地獄は落ち着いたようだ。
乱太郎としんべえが口々に言う。
「大木先生、今日なんか様子がヘンですよ?」
「そうそう。畑仕事のときも元気なかったし~、どこんじょーが空回りしてて~」
「気、気のせいだ!」
大木ががつがつと白飯をかきこんで、その場をごまかそうとする。
(空ちゃんがいないのが、よっぽど堪えたようねぇ)
乱太郎たちが訝しむ一方で、食堂のおばちゃんは黙々と食していた。
***
「ふぅ……」
昼食後も、大木の憂鬱は続いた。
溜息をつくなんて、いつもの快活明朗な大木からすれば信じられないことである。
「あ、あの~大木先生」
「ん?」
見れば、野菜を積んだ籠を背負った乱太郎がぺこりとお辞儀をしてきた。
「私たち、そろそろ忍術学園に帰ります。お世話になりました」
「「お世話になりました」」
きり丸、しんべヱが後に続く。
大木がぎょっとした。
「も、もうそんな時間なのか!?」
「そんな時間って。おばちゃんの料理教室も終わりましたし、ランチも食べましたし、野菜を持ち帰る準備も終わったし……」
「……」
大木と乱太郎たちの間に沈黙がはしる。
両者に気まずい空気が流れたが、終わらせたのは子どもたちの方だ。
「じゃあ、また。大木先生もぜひ忍術学園に遊びに来てくださいね」
そう言い残すと、食堂のおばちゃんとともに回れ右して歩き始めた。
乱太郎たちの背を大木がぼーっとした表情で見つめている。
(帰っていくのか、忍術学園へ……)
忍術学園
忍術学園
忍術学園
忍術学園の文字が大木の頭の中でエコーする。
忍術学園には空がいる。
そう思った瞬間、大木の顔は豆電球ががともったように明るくなった。
(そ、そうか!ワシが忍術学園に行けばいいではないか!)
このままでは、次に空に会えるまでの間もやもやが続いてしまう。
居ても立っても居られない。
空に嫌われていないかどうか、事実を確かめたくなったのだ。
「決めた!ワシも忍術学園に行くぞぉ!うおおおおお!!!」
さっきまでの覇気のない大木から一変する。
覚悟に引き締まった表情で、大木は全速力で走り出した。
一方、先を行く乱太郎たちが話をしている。
話題のネタは大木についてだ。
「今日の大木先生、絶対おかしいよね」
「ああ。明らかに元気なかったよな。元気なかったし」
「まぁ、大木先生でもそういう日はあるんじゃないの~?それより、これ見てよ~」
そう言ってしんべヱが取り出したのは、花だった。
杭瀬村を発つ前、時間があったのでその辺の茂みで摘んできたらしい。
「帰ったら空さんに渡そうと思って~。喜んでくれるかな~」
「きっと喜ぶわね、空ちゃん」
食堂のおばちゃんが嬉しそうに相槌を打つ。
そのときだった。
「どこんじょー」と咆哮しながら、大木が疾走してくる。
やがて、車が急ブレーキをかけるように乱太郎たちの前で停止した。
「大木先生、どうしたんですか!?」
「わ、ワシも忍術学園に一緒に行く!用事を思い出したんじゃ!」
「よ、用事って……?」
「用事とはその……アレだ、アレ。わしのライバル、にっくき野村雄三との決闘が今夜だったのを忘れておったのだ!」
ほとんど口から出まかせで、そう言った。
「そ、そうなんですね。とにかく、先を急ぎましょうか」
「おう!」
一世一代の大勝負に挑むかのような気迫を背負いながら、大木が歩き進む。
「よくわかんないけど、大木先生、元に戻ったみたいですね」
「そうみたいね」
後をついていく乱太郎たちは思わず顔を見合わせた。
(空がわしを嫌ってるなんて、そんなことは決してないはず!)
(でもなぁ、毎回会うたびにおちょくっていたら、多少なりとも傷つくかもなぁ)
(いやいや、しかしだな……)
「大木先生!」
「ん?」
周りを見れば、乱きりしんの三人に加え、料理教室を終えた食堂のおばちゃんがいる。
全員が呆れていた。
「どうしたんですか、大木先生。難しい顔してはがっくりと肩を落としたり。せっかくみんなで鍋を囲んでるっていうのに、」
囲炉裏の中央では今日の料理教室のメニュー、杭瀬村産野菜をふんだんにつかった特製ちゃんこ鍋がぐつぐつと煮えている。
気が付けば、昼食の時間に突入していた。
「ああ……すまんすまん。ちょいと考え事をしてな。おっ、今日はちゃんこ鍋か。いただきます」
おばちゃんの厳しい視線を受け、鍋から具を掬い取る。
何とはなしに口に運ぶがこれがいけなかった。
食べた瞬間、
「あちぃぃぃぃぃ!!」
とあまりの熱さに大木はその場でのたうちまわってしまう。
「熱々なのに冷まさないで食べるなんて無茶っすよ。大木先生、大丈夫っすか?これ、お水!」
きり丸から手渡された水をグイグイを飲むと、咥内の灼熱地獄は落ち着いたようだ。
乱太郎としんべえが口々に言う。
「大木先生、今日なんか様子がヘンですよ?」
「そうそう。畑仕事のときも元気なかったし~、どこんじょーが空回りしてて~」
「気、気のせいだ!」
大木ががつがつと白飯をかきこんで、その場をごまかそうとする。
(空ちゃんがいないのが、よっぽど堪えたようねぇ)
乱太郎たちが訝しむ一方で、食堂のおばちゃんは黙々と食していた。
***
「ふぅ……」
昼食後も、大木の憂鬱は続いた。
溜息をつくなんて、いつもの快活明朗な大木からすれば信じられないことである。
「あ、あの~大木先生」
「ん?」
見れば、野菜を積んだ籠を背負った乱太郎がぺこりとお辞儀をしてきた。
「私たち、そろそろ忍術学園に帰ります。お世話になりました」
「「お世話になりました」」
きり丸、しんべヱが後に続く。
大木がぎょっとした。
「も、もうそんな時間なのか!?」
「そんな時間って。おばちゃんの料理教室も終わりましたし、ランチも食べましたし、野菜を持ち帰る準備も終わったし……」
「……」
大木と乱太郎たちの間に沈黙がはしる。
両者に気まずい空気が流れたが、終わらせたのは子どもたちの方だ。
「じゃあ、また。大木先生もぜひ忍術学園に遊びに来てくださいね」
そう言い残すと、食堂のおばちゃんとともに回れ右して歩き始めた。
乱太郎たちの背を大木がぼーっとした表情で見つめている。
(帰っていくのか、忍術学園へ……)
忍術学園
忍術学園
忍術学園
忍術学園の文字が大木の頭の中でエコーする。
忍術学園には空がいる。
そう思った瞬間、大木の顔は豆電球ががともったように明るくなった。
(そ、そうか!ワシが忍術学園に行けばいいではないか!)
このままでは、次に空に会えるまでの間もやもやが続いてしまう。
居ても立っても居られない。
空に嫌われていないかどうか、事実を確かめたくなったのだ。
「決めた!ワシも忍術学園に行くぞぉ!うおおおおお!!!」
さっきまでの覇気のない大木から一変する。
覚悟に引き締まった表情で、大木は全速力で走り出した。
一方、先を行く乱太郎たちが話をしている。
話題のネタは大木についてだ。
「今日の大木先生、絶対おかしいよね」
「ああ。明らかに元気なかったよな。元気なかったし」
「まぁ、大木先生でもそういう日はあるんじゃないの~?それより、これ見てよ~」
そう言ってしんべヱが取り出したのは、花だった。
杭瀬村を発つ前、時間があったのでその辺の茂みで摘んできたらしい。
「帰ったら空さんに渡そうと思って~。喜んでくれるかな~」
「きっと喜ぶわね、空ちゃん」
食堂のおばちゃんが嬉しそうに相槌を打つ。
そのときだった。
「どこんじょー」と咆哮しながら、大木が疾走してくる。
やがて、車が急ブレーキをかけるように乱太郎たちの前で停止した。
「大木先生、どうしたんですか!?」
「わ、ワシも忍術学園に一緒に行く!用事を思い出したんじゃ!」
「よ、用事って……?」
「用事とはその……アレだ、アレ。わしのライバル、にっくき野村雄三との決闘が今夜だったのを忘れておったのだ!」
ほとんど口から出まかせで、そう言った。
「そ、そうなんですね。とにかく、先を急ぎましょうか」
「おう!」
一世一代の大勝負に挑むかのような気迫を背負いながら、大木が歩き進む。
「よくわかんないけど、大木先生、元に戻ったみたいですね」
「そうみたいね」
後をついていく乱太郎たちは思わず顔を見合わせた。