続 きりちゃんのトクトク☆大作戦!
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無事に漬物を買うことができ、城の使いの男は半助と利吉に大感激。
大いに感謝された。
その男がまた律儀なもので、「お礼をするからぜひお城に」と言って聞かない。
半助と利吉は彼を振り払うのに相当な労力を費やしてしまった。
「ああ、疲れた。でも、無事に漬物を手に入れることができてよかった。これで空も喜ぶだろうな」
『わぁ、お漬物だ……こんなにいっぱい。半助さん、ありがとうございます!』
百万カラットの輝きを放つ空の笑顔を思えば、半助の頬がみるみる緩む。
それを横目で見ていた利吉が不機嫌そうに言った。
「言っておきますが、空さんに渡すのは私が先です。邪魔しないでください」
「なっ……邪魔しているのはいつも利吉君の方だろう?何度も言ってるが、私と空は恋人だ!」
「恋人だからって、大きな顔をしないでください。私と空さんとの間にだって、特別な絆があります。まぁ、見ててください。そのうち、土井先生と立場が逆転しますから」
「随分と言ってくれるじゃないか……だが、絶対に空は渡さない!」
「こっちだって、いつまでも土井先生の傍に置かせません!空さんは私のものです!」
「渡さない!!」
「私のです!!」
半助と利吉は我を忘れてつい興奮して叫んでしまっていた。
気が付くと周囲の人間が奇異な目で二人を見ている。
街の往来で抜群の容姿を持つ青年二人が言い争っているのだ。
注目を集めるのは当然のことだった。
「あっ……」
「しまった……」
二人は慌ててその場を駆け去った。
少し離れた場所まで移動して、ふたりは顔を見合わせた。
「フッ……」
「ハハ……」
どちらからともなく、思わず笑ってしまう。
お互いの空への想いの大きさを知って、恋敵 心とは別に親近感を感じたのだ。
それが笑みとなって現れた。
「あ~あ、好きな人が土井先生と同じになるなんて」
「嘆きたいのはこっちだよ、利吉君」
「一つお聞きしたいんですが、土井先生は空さんのどこを好きになったんですか?」
「え……どこって、全部だよ、全部」
「全部なのはわかってますが、もっと具体的にですよ」
「そんなの……山ほどあるよ。素直でやさしいし、何にでも一生懸命だし……あ、ちょっとからかったりしたら、すぐに赤くなって顔に出るの、かわいいよな」
「わかります、わかります、それ。かわいいで思い出したけど、空さん、笑ったときにエクボができるの、かわいくないですか?」
「そうそう!よくわかってるじゃないか、利吉君!」
「土井先生!」
さっきまでの殺伐としたムードから打って変わって、妙な熱気に包まれている。
空のことになると磁石のようにくっついたり、反発したりする大人二人なのだった。
「「ただいま!」」
勢いよく木戸を開けた半助と利吉の二人が真っ先に探したのは、愛しい女 。
その人物は居間で内職を続けていた。
「おかえりなさい、ふたりとも。お漬物、無事に買えたんですね……ありがとうございます。重かったですよね?」
空がにっこりと笑う。
天使のような微笑みに心を奪われる男たちだったが、あることに気づき、目がテンになった。
「ん?きり丸は、寝てるのか……?」
「はい、バイトで疲れちゃったみたいで。布団敷こうか?って聞いたんですけど、ここでいいって言われて」
きり丸は上半身を空の膝に乗せ、猫のように丸くなって眠っている。
居心地は最高らしく、空の声に反応して、時々ニコッと微笑んでいる。
思わず、半助の眉が吊り上がった。
(きり丸のやつ……我々のいぬ間 に抜け駆けしやがって……!)
横にいる利吉の顔も幾分険しい。
こちらもまた全く同じ感想を抱いたようである。
「空さん。きり丸、結構寝ているんじゃないんですか?そろそろ起こさないと」
「そうですね。夕ご飯食べてから寝てほしいし……きりちゃん、起きて」
空がきり丸に話しかける。
だが、にゃあ……と猫のように甘えた声を出したっきりで、瞼を開こうとしない。
「きりちゃん、起きて」
空がきり丸の耳元に口を寄せる。
あくまでやさしげな口調で空は続けた。
だが、うんともすんとも言わず、きり丸はその心地よき声ににへらっと笑うのみだ。
「困ったわね……」
なかなか目を覚まさないきり丸に、空がまいった、という顔をつくる。
一方、嫉妬心に駆られた男たちはぶるぶると拳を震わせている。
我慢の限界に達していた。
「もういい、空。私が起こす!これ一つあれば十分だ!」
「土井先生、私も協力します!いつまでもきり丸ばかりに空さんを独占されてたまるか!」
半助と利吉はそれぞれ懐からあるものを取り出すと、力いっぱいに床に投げつけた。
チャリン、チャリン……
投げたものは、言うまでもなくアレだった。
「小銭、小銭ぃ!」
小銭の落ちた音を聞き、バチッと眼を開けたきり丸が一瞬で居間から土間へと移動する。
小銭を拾ってキャッキャと喜んでいるきり丸の首根っこを半助がつかんだ。
「……目が覚めたか?きり丸」
「ええ、この通り!って、あ!土井先生だ。おかえりなさい。お漬物もこんなに沢山……おれの予想通りだ。ニヒヒヒヒッ!」
「な!?お前……さては今日店番が大女将だと知ってたんだな?それなら、お前が買いに行けばよかったじゃないか!?」
「そうだぞ、きり丸!」
よく見れば半助と利吉の襟元には無数の紅がついている。
大女将からベタベタされてはモーションをかけられ……色々と大変だったらしい。
「いやぁ、おれもそうしたいのはやまやまなんですが、以前店に行ったとき大女将にこう言われたんですよ」
『あら、ま。美少年!なかなかの逸材ねぇ。イイ線いってるじゃない!でも、あたしのストライクゾーンは十八歳から三十歳まで、て決まってるの。もう少し経ってから、出直しておいで』
「って言われたんです」
「「そ、そうだったのか……」」
「きりちゃんなんかまだ良い方ですよ。相手にしてくれるだけ。私が買いにいったときなんて……大女将さん、うんともすんとも言わなくて。女性には超冷たいから、大女将さんが店番する日は、町の奥様達も絶対に近寄らないんです」
そう言って、空はよいしょっと立ち上がった。
「二人とも。買い物お疲れさまでした。飲み物用意しますね。あ、きりちゃんは夕飯の支度手伝って」
「はぁい!」
きり丸はまるで尻尾を振る犬のように空の元へと寄った。
「ねぇ、空さん。今日のご飯なに?」
「そうねぇ。今日は隣のおばちゃんに鮎を分けてもらったから塩焼きにしようかな。それから、野菜の炒めものと……」
「おれ、アレも食べたいな。空さんが作った卵焼き」
「よ~し。じゃあ、それも作っちゃおう」
「やりぃ!」
「……」
空と仲睦まじく話すきり丸を見て、半助と利吉の心の中に敗北感が広がっていく。
何とも言えない表情で、互いに顔を見合わせた。
「利吉くん……恋敵 同士な我々だが、先に倒すべき敵がいるな」
「そのようですね。土井先生、力を合わせてきり丸 を倒しましょう!」
「ああ!」
打倒きり丸をかかげ、半助と利吉は意気投合。
めらめらと熱い闘志の炎を燃やしている。
「あの二人、何だかんだで仲いいっすね」
「そうね」
不思議そうな顔をするきり丸と空が同時に肩をすくめた。
大いに感謝された。
その男がまた律儀なもので、「お礼をするからぜひお城に」と言って聞かない。
半助と利吉は彼を振り払うのに相当な労力を費やしてしまった。
「ああ、疲れた。でも、無事に漬物を手に入れることができてよかった。これで空も喜ぶだろうな」
『わぁ、お漬物だ……こんなにいっぱい。半助さん、ありがとうございます!』
百万カラットの輝きを放つ空の笑顔を思えば、半助の頬がみるみる緩む。
それを横目で見ていた利吉が不機嫌そうに言った。
「言っておきますが、空さんに渡すのは私が先です。邪魔しないでください」
「なっ……邪魔しているのはいつも利吉君の方だろう?何度も言ってるが、私と空は恋人だ!」
「恋人だからって、大きな顔をしないでください。私と空さんとの間にだって、特別な絆があります。まぁ、見ててください。そのうち、土井先生と立場が逆転しますから」
「随分と言ってくれるじゃないか……だが、絶対に空は渡さない!」
「こっちだって、いつまでも土井先生の傍に置かせません!空さんは私のものです!」
「渡さない!!」
「私のです!!」
半助と利吉は我を忘れてつい興奮して叫んでしまっていた。
気が付くと周囲の人間が奇異な目で二人を見ている。
街の往来で抜群の容姿を持つ青年二人が言い争っているのだ。
注目を集めるのは当然のことだった。
「あっ……」
「しまった……」
二人は慌ててその場を駆け去った。
少し離れた場所まで移動して、ふたりは顔を見合わせた。
「フッ……」
「ハハ……」
どちらからともなく、思わず笑ってしまう。
お互いの空への想いの大きさを知って、
それが笑みとなって現れた。
「あ~あ、好きな人が土井先生と同じになるなんて」
「嘆きたいのはこっちだよ、利吉君」
「一つお聞きしたいんですが、土井先生は空さんのどこを好きになったんですか?」
「え……どこって、全部だよ、全部」
「全部なのはわかってますが、もっと具体的にですよ」
「そんなの……山ほどあるよ。素直でやさしいし、何にでも一生懸命だし……あ、ちょっとからかったりしたら、すぐに赤くなって顔に出るの、かわいいよな」
「わかります、わかります、それ。かわいいで思い出したけど、空さん、笑ったときにエクボができるの、かわいくないですか?」
「そうそう!よくわかってるじゃないか、利吉君!」
「土井先生!」
さっきまでの殺伐としたムードから打って変わって、妙な熱気に包まれている。
空のことになると磁石のようにくっついたり、反発したりする大人二人なのだった。
「「ただいま!」」
勢いよく木戸を開けた半助と利吉の二人が真っ先に探したのは、愛しい
その人物は居間で内職を続けていた。
「おかえりなさい、ふたりとも。お漬物、無事に買えたんですね……ありがとうございます。重かったですよね?」
空がにっこりと笑う。
天使のような微笑みに心を奪われる男たちだったが、あることに気づき、目がテンになった。
「ん?きり丸は、寝てるのか……?」
「はい、バイトで疲れちゃったみたいで。布団敷こうか?って聞いたんですけど、ここでいいって言われて」
きり丸は上半身を空の膝に乗せ、猫のように丸くなって眠っている。
居心地は最高らしく、空の声に反応して、時々ニコッと微笑んでいる。
思わず、半助の眉が吊り上がった。
(きり丸のやつ……我々のいぬ
横にいる利吉の顔も幾分険しい。
こちらもまた全く同じ感想を抱いたようである。
「空さん。きり丸、結構寝ているんじゃないんですか?そろそろ起こさないと」
「そうですね。夕ご飯食べてから寝てほしいし……きりちゃん、起きて」
空がきり丸に話しかける。
だが、にゃあ……と猫のように甘えた声を出したっきりで、瞼を開こうとしない。
「きりちゃん、起きて」
空がきり丸の耳元に口を寄せる。
あくまでやさしげな口調で空は続けた。
だが、うんともすんとも言わず、きり丸はその心地よき声ににへらっと笑うのみだ。
「困ったわね……」
なかなか目を覚まさないきり丸に、空がまいった、という顔をつくる。
一方、嫉妬心に駆られた男たちはぶるぶると拳を震わせている。
我慢の限界に達していた。
「もういい、空。私が起こす!これ一つあれば十分だ!」
「土井先生、私も協力します!いつまでもきり丸ばかりに空さんを独占されてたまるか!」
半助と利吉はそれぞれ懐からあるものを取り出すと、力いっぱいに床に投げつけた。
チャリン、チャリン……
投げたものは、言うまでもなくアレだった。
「小銭、小銭ぃ!」
小銭の落ちた音を聞き、バチッと眼を開けたきり丸が一瞬で居間から土間へと移動する。
小銭を拾ってキャッキャと喜んでいるきり丸の首根っこを半助がつかんだ。
「……目が覚めたか?きり丸」
「ええ、この通り!って、あ!土井先生だ。おかえりなさい。お漬物もこんなに沢山……おれの予想通りだ。ニヒヒヒヒッ!」
「な!?お前……さては今日店番が大女将だと知ってたんだな?それなら、お前が買いに行けばよかったじゃないか!?」
「そうだぞ、きり丸!」
よく見れば半助と利吉の襟元には無数の紅がついている。
大女将からベタベタされてはモーションをかけられ……色々と大変だったらしい。
「いやぁ、おれもそうしたいのはやまやまなんですが、以前店に行ったとき大女将にこう言われたんですよ」
『あら、ま。美少年!なかなかの逸材ねぇ。イイ線いってるじゃない!でも、あたしのストライクゾーンは十八歳から三十歳まで、て決まってるの。もう少し経ってから、出直しておいで』
「って言われたんです」
「「そ、そうだったのか……」」
「きりちゃんなんかまだ良い方ですよ。相手にしてくれるだけ。私が買いにいったときなんて……大女将さん、うんともすんとも言わなくて。女性には超冷たいから、大女将さんが店番する日は、町の奥様達も絶対に近寄らないんです」
そう言って、空はよいしょっと立ち上がった。
「二人とも。買い物お疲れさまでした。飲み物用意しますね。あ、きりちゃんは夕飯の支度手伝って」
「はぁい!」
きり丸はまるで尻尾を振る犬のように空の元へと寄った。
「ねぇ、空さん。今日のご飯なに?」
「そうねぇ。今日は隣のおばちゃんに鮎を分けてもらったから塩焼きにしようかな。それから、野菜の炒めものと……」
「おれ、アレも食べたいな。空さんが作った卵焼き」
「よ~し。じゃあ、それも作っちゃおう」
「やりぃ!」
「……」
空と仲睦まじく話すきり丸を見て、半助と利吉の心の中に敗北感が広がっていく。
何とも言えない表情で、互いに顔を見合わせた。
「利吉くん……
「そのようですね。土井先生、力を合わせて
「ああ!」
打倒きり丸をかかげ、半助と利吉は意気投合。
めらめらと熱い闘志の炎を燃やしている。
「あの二人、何だかんだで仲いいっすね」
「そうね」
不思議そうな顔をするきり丸と空が同時に肩をすくめた。