杭瀬村へ行こう!
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最近、杭瀬村に行く回数増えたな……。
杭瀬村までの道中、空はうんざりとした表情で歩いていた。
「食堂のおばちゃん、こんなに杭瀬村に行って食堂業務に穴を開けても大丈夫なんですか?」
「いいのよ、いいのよ。私たちが不在の時は黒古毛般蔵先生が来てくれるの知ってるでしょう?そういう日はね、忍たまの子たちが自分たちで食事を調達する、いい訓練になるの」
「それはそうですけど……」
「それにね、今や私のお料理教室が杭瀬村で人気になってしまった以上、行く回数を減らすわけには行かないわ!」
食堂のおばちゃんの言う通り、杭瀬村名産の野菜を使ったおばちゃんの料理教室は「美味しい野菜料理が簡単に作れる」と大繁盛。
村の女たちがこぞって参加しているのである。
「食堂のおばちゃんは料理教室があるからいいですよ。でも、私は……」
おばちゃんと違って、自分は大木の家でお留守番。
とはいっても、畑仕事の手伝いを強制的にやらされ、大木の手足としてこき使われる始末なのである。
「大木先生、無料で野菜を分けてくれるんだもの。世の中、『持ちつ持たれつ』よ!畑仕事の手伝いくらいやってあげないと。学園長もその考えに賛成しているんだから」
「はい……」
「足腰も鍛えられて、新鮮な野菜ももらえて……まさに一石二鳥だわ」
食堂のおばちゃんは自分と大木が犬猿の仲だと知っておいてそんなこと言うんだから。
人の気も知らないで。
胸底でそうごちりながら、空は仕方なしに杭瀬村までの道を歩いて行った。
***
「大木先生!」
「食堂のおばちゃん!待ってましたよ」
食堂のおばちゃんに声をかけられた大木は、土を耕していた。
鍬をその場に降ろし、空たちの元へと駆けていく。
「二週間前に来たばかりだけど、元気にしてた?」
「ああ、この通り」
大木はそう言って腕を曲げ、力こぶをつくって見せた。
「今日も食堂のおばちゃんが来るの、いまかいまかと楽しみに待ってたくらいだ」
「まぁ!」
嬉しい言葉をかけてくれる大木に食堂のおばちゃんはデレデレ。
顔がゆるみきっている。
「ワシも含めて、みんな食堂のおばちゃんの料理が大好きだからな。村長の家での料理教室、よろしくお願いします」
「ウフフ。もちろん、今日も精一杯努めさせて頂きます。じゃあ、早速村長の家に行ってくるわ。その間、ここに空ちゃん置いていくから、よろしくね」
「うむ。承知した」
大木は深々と頭を下げて、食堂のおばちゃんを送り出した。
ここまでは一見好青年としか言いようのない大木の姿。
が、頭をあげた大木の顔は完全にいじめっ子のそれだった。
「何だぁ?空も来ていたのか」
「べ、別に私は行きたくなかったんですけど。食堂のおばちゃんに言われて仕方なくです、仕方なく!」
「ほ~う。ワシの育てた野菜を食べておいて、なんて恩知らずな。この前来た時、どんぶり飯三杯とともに杭瀬村特製の野菜鍋をぺろりと平らげたのは誰だったかのう?」
「うっ」
「の割に、身体に肉があまりつかないな。この辺とかあの辺とかもっと重量が必要なんじゃ、」
そう言って、大木は真顔で空の胸とお尻を交互に見やる。
空が真っ赤な顔で叫んだ。
「もう、人の身体をジロジロ見るのやめてください!それに、余計なお世話です!」
「わっはっは。とにかく、今日もうんと働いてもらうぞ。どうこき使ってやろうかな」
「大木せんせ……ちょ、ちょっと!?」
言いかけ途中で、大木は空の腕をとった。
グイグイと畑の方へと誘導していく。
「無駄口はここまでだ。ほれ、行くぞ!今日中に畑の手入れをできるところまでしておきたかったから、丁度良かった!」
「せ、せめて可愛いラビちゃんに挨拶してから、」
「つべこべ言わずにとっとと来る!」
会って早々、その強引な手腕に空は舌を巻いた。
いつもこの人のペースに引きずり込まれてしまう、と。
***
ザクザクと鍬で土をすくい上げ、空は畑を耕していく。
既に体験しているとはいえ、現代っ子の空にとっては非常に重労働。
途中、
「どうした、空?息があがってるぞ。どこんじょーで乗り切るんだ!」
と何回も大木に活を入れられた。
(もう、どこんじょーどこんじょー連呼して……バカの一つ覚えみたいにいっつもうるさいんだから!)
どこんじょー、つまりは精神論をモットーにしている大木と理論派の空。
水と油の関係で、相性は最悪だった。
「どうした、空?もうへばったのか?」
「そ、そんなことないですよ、まだまだ!」
空はえいやと鍬を振りかざす。
「おーし、その意気だ。わしも負けてられん!どこんじょー!」
大木の叫びがあたり一帯に木霊した。
三十分後。
「も、もうダメ……」
体力の限界を迎えた空はその場に座り込んでしまった。
四肢に力が入らない。
反対に、大木はまだまだ元気が有り余っている。
「全く、情けないな……もやしっ子だな、お前は」
「はいはい、どうせ私はもやしっ子ですよ」
そう言って頬を膨らませる空の頭を、大木はわしゃわしゃと掻いた。
「まぁ、お前にしてはよくやった。水でも飲んで休憩してこい。ワシはもうしばらくここの土を耕しておくから」
「は、はい!」
このとき、空の目には大木が神様のように映ったという。
休憩できると分かった途端、空は駆け足で大木の家へと向かっていく。
「なんだあいつは。まだ走る元気が残っとるではないか」
その背を見ながら、大木がぼやいた。
杭瀬村までの道中、空はうんざりとした表情で歩いていた。
「食堂のおばちゃん、こんなに杭瀬村に行って食堂業務に穴を開けても大丈夫なんですか?」
「いいのよ、いいのよ。私たちが不在の時は黒古毛般蔵先生が来てくれるの知ってるでしょう?そういう日はね、忍たまの子たちが自分たちで食事を調達する、いい訓練になるの」
「それはそうですけど……」
「それにね、今や私のお料理教室が杭瀬村で人気になってしまった以上、行く回数を減らすわけには行かないわ!」
食堂のおばちゃんの言う通り、杭瀬村名産の野菜を使ったおばちゃんの料理教室は「美味しい野菜料理が簡単に作れる」と大繁盛。
村の女たちがこぞって参加しているのである。
「食堂のおばちゃんは料理教室があるからいいですよ。でも、私は……」
おばちゃんと違って、自分は大木の家でお留守番。
とはいっても、畑仕事の手伝いを強制的にやらされ、大木の手足としてこき使われる始末なのである。
「大木先生、無料で野菜を分けてくれるんだもの。世の中、『持ちつ持たれつ』よ!畑仕事の手伝いくらいやってあげないと。学園長もその考えに賛成しているんだから」
「はい……」
「足腰も鍛えられて、新鮮な野菜ももらえて……まさに一石二鳥だわ」
食堂のおばちゃんは自分と大木が犬猿の仲だと知っておいてそんなこと言うんだから。
人の気も知らないで。
胸底でそうごちりながら、空は仕方なしに杭瀬村までの道を歩いて行った。
***
「大木先生!」
「食堂のおばちゃん!待ってましたよ」
食堂のおばちゃんに声をかけられた大木は、土を耕していた。
鍬をその場に降ろし、空たちの元へと駆けていく。
「二週間前に来たばかりだけど、元気にしてた?」
「ああ、この通り」
大木はそう言って腕を曲げ、力こぶをつくって見せた。
「今日も食堂のおばちゃんが来るの、いまかいまかと楽しみに待ってたくらいだ」
「まぁ!」
嬉しい言葉をかけてくれる大木に食堂のおばちゃんはデレデレ。
顔がゆるみきっている。
「ワシも含めて、みんな食堂のおばちゃんの料理が大好きだからな。村長の家での料理教室、よろしくお願いします」
「ウフフ。もちろん、今日も精一杯努めさせて頂きます。じゃあ、早速村長の家に行ってくるわ。その間、ここに空ちゃん置いていくから、よろしくね」
「うむ。承知した」
大木は深々と頭を下げて、食堂のおばちゃんを送り出した。
ここまでは一見好青年としか言いようのない大木の姿。
が、頭をあげた大木の顔は完全にいじめっ子のそれだった。
「何だぁ?空も来ていたのか」
「べ、別に私は行きたくなかったんですけど。食堂のおばちゃんに言われて仕方なくです、仕方なく!」
「ほ~う。ワシの育てた野菜を食べておいて、なんて恩知らずな。この前来た時、どんぶり飯三杯とともに杭瀬村特製の野菜鍋をぺろりと平らげたのは誰だったかのう?」
「うっ」
「の割に、身体に肉があまりつかないな。この辺とかあの辺とかもっと重量が必要なんじゃ、」
そう言って、大木は真顔で空の胸とお尻を交互に見やる。
空が真っ赤な顔で叫んだ。
「もう、人の身体をジロジロ見るのやめてください!それに、余計なお世話です!」
「わっはっは。とにかく、今日もうんと働いてもらうぞ。どうこき使ってやろうかな」
「大木せんせ……ちょ、ちょっと!?」
言いかけ途中で、大木は空の腕をとった。
グイグイと畑の方へと誘導していく。
「無駄口はここまでだ。ほれ、行くぞ!今日中に畑の手入れをできるところまでしておきたかったから、丁度良かった!」
「せ、せめて可愛いラビちゃんに挨拶してから、」
「つべこべ言わずにとっとと来る!」
会って早々、その強引な手腕に空は舌を巻いた。
いつもこの人のペースに引きずり込まれてしまう、と。
***
ザクザクと鍬で土をすくい上げ、空は畑を耕していく。
既に体験しているとはいえ、現代っ子の空にとっては非常に重労働。
途中、
「どうした、空?息があがってるぞ。どこんじょーで乗り切るんだ!」
と何回も大木に活を入れられた。
(もう、どこんじょーどこんじょー連呼して……バカの一つ覚えみたいにいっつもうるさいんだから!)
どこんじょー、つまりは精神論をモットーにしている大木と理論派の空。
水と油の関係で、相性は最悪だった。
「どうした、空?もうへばったのか?」
「そ、そんなことないですよ、まだまだ!」
空はえいやと鍬を振りかざす。
「おーし、その意気だ。わしも負けてられん!どこんじょー!」
大木の叫びがあたり一帯に木霊した。
三十分後。
「も、もうダメ……」
体力の限界を迎えた空はその場に座り込んでしまった。
四肢に力が入らない。
反対に、大木はまだまだ元気が有り余っている。
「全く、情けないな……もやしっ子だな、お前は」
「はいはい、どうせ私はもやしっ子ですよ」
そう言って頬を膨らませる空の頭を、大木はわしゃわしゃと掻いた。
「まぁ、お前にしてはよくやった。水でも飲んで休憩してこい。ワシはもうしばらくここの土を耕しておくから」
「は、はい!」
このとき、空の目には大木が神様のように映ったという。
休憩できると分かった途端、空は駆け足で大木の家へと向かっていく。
「なんだあいつは。まだ走る元気が残っとるではないか」
その背を見ながら、大木がぼやいた。