利吉さんと外出
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空たちは町のはずれの方に来ていた。
「ここまで来れば、もう町は目と鼻の先ですよ」
得意気に言った利吉だったが、腕の中の空を見て絶句した。
空の着物は乱れていた。
緩んだ襟元からは白い膨らみが見えているし、スラリと伸びた脚の方は膝小僧まで顔を覗かせている。
でこぼこ道を全速力で疾走し、上下左右に度重なる振動が生じた結果、そうなってしまったのだ。
利吉の視線を受け、自分の着物の乱れに気づいた空は顔を真っ赤にして叫んだ。
「利吉さん、早く下ろしてっ!!」
「す、すみません!」
利吉は大慌てで空をその場に下ろす。
空は近くの大木に隠れて、着物の乱れを直した。
(利吉さん、意外とそそっかしい所があるのかな……やれやれ……)
ふう、と一息ついて空が利吉の待っているところまで戻れば、利吉は身体を折り曲げる。
「本当に申し訳なかったです!」
「……もう気にしないでください。早く着いたのは、利吉さんのおかげなんだし……フフッ」
「ん?どうしました?」
「そんなに慌てる利吉さんがおかしくて……」
自分以上に利吉の狼狽ぶりがひどくて、空は口を押さえながら吹き出しそうになるのを堪えている。
頬を赤らめていた利吉は、コホンと咳払いをする。
仕切り直し――
「と、とにかく、町を目指しましょう」
恥ずかしさが抜けないのか、利吉が先を切ってずんずんと歩き出す。
その利吉の後に空が続く。
もうあと少しの目的地まで、二人は歩いて目指した。
***
空たちは町に到着した。
町の中心部を形成する大通りの道には、行商人が一定の間隔で並び、買い物客が点在している。
その通りに入るやいなや、利吉は急に空の手を繋いだ。
突然のことに、空の心臓は飛び跳ねそうになる。
「り、利吉さん?」
「混んでいるし、はぐれないようにしないと」
「そんな……子どもじゃないんだし」
空が拗ねたように言う。
その表情が可愛らしくて、ますます離したくないと、利吉は手に握る力を強くした。
「こうしておく理由はもう一つあります。美しいあなたに悪い虫がつくなんて、私は絶対に嫌ですから」
「え?」
「さ、行きますよ」
今、さらっとものすごいことを言ったような気がする――
だが、それを利吉に確認する余裕は空にはなかった。
ただでさえ男の節ばった手を直に感じて、何も考えることができないくらい、頭の中は真っ白になっていた。
利吉と空はおばちゃんのしたためた買い物メモを見ながら、ひとつずつ頼まれた品を購入していく。
町に詳しい利吉が効率よく店を回ってくれたおかげで、買い物は思ったよりも時間がかからなかった。
「利吉さんのおかげで、買い物早く終わりました。本当にありがとうございます」
「いえいえ。礼を言うべきなのは私のほうです」
「えっ?」
「空さんとこうしてふたりきりで町に行けるなんて、今日忍術学園に来た私は本当についてる。今、とても幸せです」
こういう台詞を利吉はさらりと言ってのける。
だが、聞いた方はその十分の一も平静さを保つことができなかった。
「そ、そんな……」
恋愛経験の乏しい空には威力がありすぎたようだ。
空はただ紅い顔で俯くことしかできない。
「……」
そんな空を利吉は満足そうに見つめている。
そして、ひとつのことを確信していた。
この様子だとまだ半助との進展はそれほどでもない。
空の心に自分が入り込む余地はいくらでもある、と。
「だいぶ早く終わったことですし、茶店にでも寄りませんか?」
「はい!」
空は利吉の誘いを断れなかった。
食べもの、中でも甘味には目がないというのも理由の一つである。
が、何より利吉とずっと一緒にいて、胸の鼓動が忙しなくて、緊張で喉が渇きっぱなしだったのだ。
一刻も早く休憩をとって、この渇いた喉を潤したかった。
「ここまで来れば、もう町は目と鼻の先ですよ」
得意気に言った利吉だったが、腕の中の空を見て絶句した。
空の着物は乱れていた。
緩んだ襟元からは白い膨らみが見えているし、スラリと伸びた脚の方は膝小僧まで顔を覗かせている。
でこぼこ道を全速力で疾走し、上下左右に度重なる振動が生じた結果、そうなってしまったのだ。
利吉の視線を受け、自分の着物の乱れに気づいた空は顔を真っ赤にして叫んだ。
「利吉さん、早く下ろしてっ!!」
「す、すみません!」
利吉は大慌てで空をその場に下ろす。
空は近くの大木に隠れて、着物の乱れを直した。
(利吉さん、意外とそそっかしい所があるのかな……やれやれ……)
ふう、と一息ついて空が利吉の待っているところまで戻れば、利吉は身体を折り曲げる。
「本当に申し訳なかったです!」
「……もう気にしないでください。早く着いたのは、利吉さんのおかげなんだし……フフッ」
「ん?どうしました?」
「そんなに慌てる利吉さんがおかしくて……」
自分以上に利吉の狼狽ぶりがひどくて、空は口を押さえながら吹き出しそうになるのを堪えている。
頬を赤らめていた利吉は、コホンと咳払いをする。
仕切り直し――
「と、とにかく、町を目指しましょう」
恥ずかしさが抜けないのか、利吉が先を切ってずんずんと歩き出す。
その利吉の後に空が続く。
もうあと少しの目的地まで、二人は歩いて目指した。
***
空たちは町に到着した。
町の中心部を形成する大通りの道には、行商人が一定の間隔で並び、買い物客が点在している。
その通りに入るやいなや、利吉は急に空の手を繋いだ。
突然のことに、空の心臓は飛び跳ねそうになる。
「り、利吉さん?」
「混んでいるし、はぐれないようにしないと」
「そんな……子どもじゃないんだし」
空が拗ねたように言う。
その表情が可愛らしくて、ますます離したくないと、利吉は手に握る力を強くした。
「こうしておく理由はもう一つあります。美しいあなたに悪い虫がつくなんて、私は絶対に嫌ですから」
「え?」
「さ、行きますよ」
今、さらっとものすごいことを言ったような気がする――
だが、それを利吉に確認する余裕は空にはなかった。
ただでさえ男の節ばった手を直に感じて、何も考えることができないくらい、頭の中は真っ白になっていた。
利吉と空はおばちゃんのしたためた買い物メモを見ながら、ひとつずつ頼まれた品を購入していく。
町に詳しい利吉が効率よく店を回ってくれたおかげで、買い物は思ったよりも時間がかからなかった。
「利吉さんのおかげで、買い物早く終わりました。本当にありがとうございます」
「いえいえ。礼を言うべきなのは私のほうです」
「えっ?」
「空さんとこうしてふたりきりで町に行けるなんて、今日忍術学園に来た私は本当についてる。今、とても幸せです」
こういう台詞を利吉はさらりと言ってのける。
だが、聞いた方はその十分の一も平静さを保つことができなかった。
「そ、そんな……」
恋愛経験の乏しい空には威力がありすぎたようだ。
空はただ紅い顔で俯くことしかできない。
「……」
そんな空を利吉は満足そうに見つめている。
そして、ひとつのことを確信していた。
この様子だとまだ半助との進展はそれほどでもない。
空の心に自分が入り込む余地はいくらでもある、と。
「だいぶ早く終わったことですし、茶店にでも寄りませんか?」
「はい!」
空は利吉の誘いを断れなかった。
食べもの、中でも甘味には目がないというのも理由の一つである。
が、何より利吉とずっと一緒にいて、胸の鼓動が忙しなくて、緊張で喉が渇きっぱなしだったのだ。
一刻も早く休憩をとって、この渇いた喉を潤したかった。