35.この世界より、愛をこめて
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半助は依然として空を横抱きにしたまま疾走中。
しかし、先頭集団との差が徐々に詰まってきていた。
ここで利吉が一気に首位に躍り出る。
ほどなくして、ついに半助に並んだ。
「土井先生、いい加減返してください。私の最愛の人を!」
「言わせておけば、利吉君……空は私のものだ!」
「こうなったら、力ずくしかありませんね」
視線を絡み合わせたのもつかの間、利吉は苦無を、半助は出席簿を懐から同時に取り出す。
一触即発。
「二人とも!」
空が不安げに見守る。
そのときだった。
「おどきなさぁぁぁぁぁい!」
遠くから女王様口調でそう叫んだのは伝子だ。
きり丸にバカにされてからというもの、冷静さを失った狂戦士 と化していた。
茂みの中を全力疾走した伝子は髪に葉っぱが多量についていて、山姥 そのもの。
「ち、父上……」
「山田先生……」
「で・ん・こ、よ。で・ん・こ!」
遠くにいても地獄耳は健在で、呼び名の訂正まで要求する伝子なのだった。
「そこのけ、そこのけ……伝子様のお通りよぉ!」
周囲にいた上級生及び教職員たちは伝子のあまりの恐ろしさに顔面蒼白になっている。
サッと脇に避け、あっさりと伝子の通過を許した。
その様はまるで海を真っ二つに割る、モーゼの伝説かのよう。
「……」
少しの間、ひくひくと表情を引きつらせていた半助だったが、やがて決死の覚悟で叫んだ。
「あんなおぞましい伝子さんに捕まってたまるか!絶対に逃げ切るぞ、空」
「は、はい。でも、逃げるといっても、どこへ……?」
空が聞き返す。
半助は最高の微笑みを浮かべながら、自信たっぷりに言った。
「どこだっていいさ、君となら!」
すがすがしい表情で半助が再び走り出す。
感激の面持ちで空が首にしがみついた。
「半助さん!」
「アハハ……ずっと、ついてきてくれる?」
「はい」
空が弾けるように笑う。
それを見て、半助もうれしそうに微笑みを浮かべる。
「空、しっかり掴まって。飛ばすぞ!」
そう言った半助が大きく跳躍し、ふたつの身体が宙に舞う。
二人の輝かしい未来は、今ここから始まったのだ――
しかし、先頭集団との差が徐々に詰まってきていた。
ここで利吉が一気に首位に躍り出る。
ほどなくして、ついに半助に並んだ。
「土井先生、いい加減返してください。私の最愛の人を!」
「言わせておけば、利吉君……空は私のものだ!」
「こうなったら、力ずくしかありませんね」
視線を絡み合わせたのもつかの間、利吉は苦無を、半助は出席簿を懐から同時に取り出す。
一触即発。
「二人とも!」
空が不安げに見守る。
そのときだった。
「おどきなさぁぁぁぁぁい!」
遠くから女王様口調でそう叫んだのは伝子だ。
きり丸にバカにされてからというもの、冷静さを失った
茂みの中を全力疾走した伝子は髪に葉っぱが多量についていて、
「ち、父上……」
「山田先生……」
「で・ん・こ、よ。で・ん・こ!」
遠くにいても地獄耳は健在で、呼び名の訂正まで要求する伝子なのだった。
「そこのけ、そこのけ……伝子様のお通りよぉ!」
周囲にいた上級生及び教職員たちは伝子のあまりの恐ろしさに顔面蒼白になっている。
サッと脇に避け、あっさりと伝子の通過を許した。
その様はまるで海を真っ二つに割る、モーゼの伝説かのよう。
「……」
少しの間、ひくひくと表情を引きつらせていた半助だったが、やがて決死の覚悟で叫んだ。
「あんなおぞましい伝子さんに捕まってたまるか!絶対に逃げ切るぞ、空」
「は、はい。でも、逃げるといっても、どこへ……?」
空が聞き返す。
半助は最高の微笑みを浮かべながら、自信たっぷりに言った。
「どこだっていいさ、君となら!」
すがすがしい表情で半助が再び走り出す。
感激の面持ちで空が首にしがみついた。
「半助さん!」
「アハハ……ずっと、ついてきてくれる?」
「はい」
空が弾けるように笑う。
それを見て、半助もうれしそうに微笑みを浮かべる。
「空、しっかり掴まって。飛ばすぞ!」
そう言った半助が大きく跳躍し、ふたつの身体が宙に舞う。
二人の輝かしい未来は、今ここから始まったのだ――