35.この世界より、愛をこめて
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半助は逃げるのに必死だった。
とっくに忍術学園の外で、今は草木生い茂る野道を走っている。
ふたりきりになれる場所を探し、右往左往していた。
「空」
「……」
「空!」
半助が語気を強める。
ようやく空がハッとした。
「は、はい。なんでしょう、半助さん」
「さては、利吉君のことを考えていたな?」
半助に言い当てられ、空がバツが悪そうに瞼を伏せた。
「ごめんなさい……」
「全く、私というれっきとした恋人がありながら、」
「だって、いきなりあんなことをされたら!」
「にしても……なんて言い合っている場合じゃないな。それより、利吉君の台詞……『二回目』とはどういうことだ?」
「実はその、」
半助にジト目で睨まれて、空は観念したように語り出した。
以前、体調を崩して利吉に看病してもらったときに二人の間で起きたことを。
「成程ね……私の知らぬ間に、そんなことを」
「……怒ってますか?」
「過去にあったことを責めてもしょうがない。どうせ、利吉君が強引にしたんだろうし……それに、」
「それに?」
「空が熱を出して体調を崩したあの日……私もひとつ秘密にしていることがある」
「えっ?」
「が、悠長に話している時間はなさそうだ。後ろを見てごらん」
そう言って半助は空に目配せする。
「あ……みんないつの間に!?」
見れば、利吉をはじめ、忍術学園の忍たま・教職員たちがついてきている。
「土井先生、空さんは私のものです。返してください!」
「土井先生、直接恨みはありませんが、最高学年として実力を試すべく、お手合わせ願います!」
「土井先生……食堂のフリーパスがかかってるんだ。悪いが全力でかからせてもらう」
集団の先頭には利吉や上級生、それから猛追してきた教職員たちがいる。
空は混乱していた。
「ど、どうして、みんなが私たちを追ってるんですか?」
「大方、学園長がけしかけたんだろう。突然の思いつきで。私を捕まえて君を取り戻せば、ご褒美をやると」
「そんな……」
「一対多数で圧倒的に不利だが、負けるわけにはいかないな。この勝負!」
この逆境がかえって半助の闘争心に火をつけてしまった。
捕らえられるものならば捕えてみよ――半助の顔に浮かぶ大胆不敵な笑みがそう語っていた。
半助とランナーの先頭集団が火花を散らす少し前のこと。
真っ先にスタートした乱太郎たちは上級生や教職員たちに随分と追い越されてしまった。
今は中間あたりにいる。
「さすがに、上級生や先生たち相手だと分が悪いね」
「ほんと、ほんと~」
乱太郎としんベヱがぼやく。
「それでも、無料 がかかってるんだ。おれはやる!ん?」
「うっふふ~ん♪」
気持ち悪い声だなぁ…ときり丸が横を見れば、伝子がいた。
どうしようかしらぁ、と楽しそうに独り言を呟いている。
伝子ほどのベテラン忍者が、先頭集団に追いついておらず、今の位置に甘んじているのが疑問だった。
きり丸がたまらず聞く。
「伝子さんにしてはのんびりしてますね。おれたちと同じペースで走ってるなんて」
「おほほほほ。ただスピードを競うだけが勝負じゃないのよぉ」
「へ?」
「いくら利吉やほかの先生たちが優秀でも、半助はきっと上手く撒くと思うわ。それを見越して、私は半助を捕まえる作戦を考えてるのぉ」
「へぇ」
「半助といえども、ただの男。この私の色香でどうたぶらかそうか画策してるのよぉ。伝子、策士だからぁ」
伝子がバチッとウインクを決める。
乱きりしんの間に一瞬沈黙が落ちる。
が、すぐにきり丸が笑って言った。
「そうっすか。そうっすか。それなら、まだおれにも優勝の可能性は残ってるてことっすね。そんなくだらない罠に引っかかるような土井先生じゃありませんから!」
「なんですってぇぇ!!」
ドカッ!バキッ!グシャ!
伝子のラリアットが直撃し、きり丸は地面に沈んでいる。
「お、おれ……何かわるいこと……言った?」
「きりちゃん、それだよ、それ」
「も~う、ほんと一言多いんだから」
伝子はきり丸にナメられたのが余程悔しかったのか、額に血管を浮き上がらせている。
「見てなさい……それなら、伝子の実力を今すぐ証明してあげるわぁ。何がなんでも半助を捕まえるわよ!」
伝子が猛スピードで爆走しだした。
とっくに忍術学園の外で、今は草木生い茂る野道を走っている。
ふたりきりになれる場所を探し、右往左往していた。
「空」
「……」
「空!」
半助が語気を強める。
ようやく空がハッとした。
「は、はい。なんでしょう、半助さん」
「さては、利吉君のことを考えていたな?」
半助に言い当てられ、空がバツが悪そうに瞼を伏せた。
「ごめんなさい……」
「全く、私というれっきとした恋人がありながら、」
「だって、いきなりあんなことをされたら!」
「にしても……なんて言い合っている場合じゃないな。それより、利吉君の台詞……『二回目』とはどういうことだ?」
「実はその、」
半助にジト目で睨まれて、空は観念したように語り出した。
以前、体調を崩して利吉に看病してもらったときに二人の間で起きたことを。
「成程ね……私の知らぬ間に、そんなことを」
「……怒ってますか?」
「過去にあったことを責めてもしょうがない。どうせ、利吉君が強引にしたんだろうし……それに、」
「それに?」
「空が熱を出して体調を崩したあの日……私もひとつ秘密にしていることがある」
「えっ?」
「が、悠長に話している時間はなさそうだ。後ろを見てごらん」
そう言って半助は空に目配せする。
「あ……みんないつの間に!?」
見れば、利吉をはじめ、忍術学園の忍たま・教職員たちがついてきている。
「土井先生、空さんは私のものです。返してください!」
「土井先生、直接恨みはありませんが、最高学年として実力を試すべく、お手合わせ願います!」
「土井先生……食堂のフリーパスがかかってるんだ。悪いが全力でかからせてもらう」
集団の先頭には利吉や上級生、それから猛追してきた教職員たちがいる。
空は混乱していた。
「ど、どうして、みんなが私たちを追ってるんですか?」
「大方、学園長がけしかけたんだろう。突然の思いつきで。私を捕まえて君を取り戻せば、ご褒美をやると」
「そんな……」
「一対多数で圧倒的に不利だが、負けるわけにはいかないな。この勝負!」
この逆境がかえって半助の闘争心に火をつけてしまった。
捕らえられるものならば捕えてみよ――半助の顔に浮かぶ大胆不敵な笑みがそう語っていた。
半助とランナーの先頭集団が火花を散らす少し前のこと。
真っ先にスタートした乱太郎たちは上級生や教職員たちに随分と追い越されてしまった。
今は中間あたりにいる。
「さすがに、上級生や先生たち相手だと分が悪いね」
「ほんと、ほんと~」
乱太郎としんベヱがぼやく。
「それでも、
「うっふふ~ん♪」
気持ち悪い声だなぁ…ときり丸が横を見れば、伝子がいた。
どうしようかしらぁ、と楽しそうに独り言を呟いている。
伝子ほどのベテラン忍者が、先頭集団に追いついておらず、今の位置に甘んじているのが疑問だった。
きり丸がたまらず聞く。
「伝子さんにしてはのんびりしてますね。おれたちと同じペースで走ってるなんて」
「おほほほほ。ただスピードを競うだけが勝負じゃないのよぉ」
「へ?」
「いくら利吉やほかの先生たちが優秀でも、半助はきっと上手く撒くと思うわ。それを見越して、私は半助を捕まえる作戦を考えてるのぉ」
「へぇ」
「半助といえども、ただの男。この私の色香でどうたぶらかそうか画策してるのよぉ。伝子、策士だからぁ」
伝子がバチッとウインクを決める。
乱きりしんの間に一瞬沈黙が落ちる。
が、すぐにきり丸が笑って言った。
「そうっすか。そうっすか。それなら、まだおれにも優勝の可能性は残ってるてことっすね。そんなくだらない罠に引っかかるような土井先生じゃありませんから!」
「なんですってぇぇ!!」
ドカッ!バキッ!グシャ!
伝子のラリアットが直撃し、きり丸は地面に沈んでいる。
「お、おれ……何かわるいこと……言った?」
「きりちゃん、それだよ、それ」
「も~う、ほんと一言多いんだから」
伝子はきり丸にナメられたのが余程悔しかったのか、額に血管を浮き上がらせている。
「見てなさい……それなら、伝子の実力を今すぐ証明してあげるわぁ。何がなんでも半助を捕まえるわよ!」
伝子が猛スピードで爆走しだした。