35.この世界より、愛をこめて
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「利吉さん……」
空はその場に呆然と立ち尽くしている。
利吉の熱烈なアプローチを受けて、心ここにあらず。
これを見たきり丸は焦りまくっている。
「どうするんですか、土井先生!このままじゃ、空さん……利吉さんに持ってかれちゃいますよ」
「どうもこうもあるか!とにかく、」
持っていた花束をきり丸に押し付け、半助は空の元へとズンズン歩く。
「逃げるぞ、空!」
目の焦点が合っていない空をサッと抱き抱え、猛然と駆けだした。
「逃がしませんよ!」
慌てて利吉が追う。
宴会会場から主役の空が消えてしまった。
残された全員が騒然とする。
この騒ぎをじっと見守っていた学園長はほほぅ……とニヒルな笑みを浮かべている。
何かを思いついたようで、突如声を張り上げて言った。
「皆の者、聞けぃ!主役の空ちゃんがいなくなってしまった。これは由々しき事態じゃ。というわけで、空ちゃんを取り戻し、連れ去った土井先生を捕まえることをここにいる全忍たま及び全教職員に命じる。名付けて、『空ちゃん&土井先生、愛の逃避行阻止大作戦』じゃ!」
「ええぇぇぇ!」
「ふぉふぉふぉ。もちろん頑張った者への褒美は考えておる。見事空ちゃんを救出し、土井先生をとらえた暁には……一か月間食堂のご飯がタダで食べられるフリーパスを進呈しよう!」
思わぬ豪華景品に、全員の目の色が変わった。
特に顕著なのがこの二人。
食欲が服を着て歩いているようなしんべヱとタダのためならなんだってするきり丸だ。
「はぁい。ボク、参加しま~す!」
「おれも、おれも、おれも!」
「あ、待ってよ。二人が参加するなら、私も行く!」
しんべヱときり丸に続き、乱太郎が走り出す。
「へぇ……土井先生を捕まえるとは、中々やりがいがありそうだな」
「ああ。忍者としての実力を試せる、良いチャンスだ」
胸ぐらをつかみ合っている文次郎と留三郎は一時休戦。
乱太郎たちに続いた。
「私たちも参加しましょう、トモミちゃん、おシゲちゃん!」
「もっちろん!空さんをとっつかまえて、これまでのこと、全て教えてもらわないと」
「三人の恋の行方、気になりましゅ♡」
ユキたちも先頭に追い付こうと駆け出して行く。
会場に残っている他学年の忍たまたちも、続々と参加しはじめる。
「さてと、我々もそろそろ行くとしますか」
「フッ。忍術学園で最も若くて、働き盛りの忍者を捕まえるのは一筋縄ではいかないが、いい機会だ。経験の差を見せつけておこう……」
「きゃー、恥ずかしい……でも、食堂のフリーパスは欲しい……」
「体力勝負は分が悪いですが、みんなに集中砲火されている隙を狙えば、私にも勝機があります」
ポキポキと指をならす木下、眼鏡を整え格好つける野村、赤面している松千代、グフッと妖しい笑みをこぼす安藤が一斉に発つ。
「ゆらり……フリーパスは絶対に私がいただく……」
鋭い眼光を放ちながら、戸部が走り出した。
ちなみに学園長の庵に残っているのは、この追いかけっこの発案者である学園長とヘムヘム。
それに、食堂のおばちゃんとシナだ。
「さぁて、半助は無事逃げ切れるかのう」
「ヘムヘムゥ」
「帰ってきた空ちゃんに話を聞くのが楽しみだわ。それにしても、」
「なあに、食堂のおばちゃん?」
「利吉君は全然諦めていないし……私たち、これからも空ちゃんの恋模様をまだまだ楽しめそうね!」
「ほんとほんと、次の女子会が楽しみです!」
食堂のおばちゃんとシナは意気投合する。
横で聞いていた学園長は空ちゃんも大変じゃのう……と、しかし、他人事のように呟くのだった。
空はその場に呆然と立ち尽くしている。
利吉の熱烈なアプローチを受けて、心ここにあらず。
これを見たきり丸は焦りまくっている。
「どうするんですか、土井先生!このままじゃ、空さん……利吉さんに持ってかれちゃいますよ」
「どうもこうもあるか!とにかく、」
持っていた花束をきり丸に押し付け、半助は空の元へとズンズン歩く。
「逃げるぞ、空!」
目の焦点が合っていない空をサッと抱き抱え、猛然と駆けだした。
「逃がしませんよ!」
慌てて利吉が追う。
宴会会場から主役の空が消えてしまった。
残された全員が騒然とする。
この騒ぎをじっと見守っていた学園長はほほぅ……とニヒルな笑みを浮かべている。
何かを思いついたようで、突如声を張り上げて言った。
「皆の者、聞けぃ!主役の空ちゃんがいなくなってしまった。これは由々しき事態じゃ。というわけで、空ちゃんを取り戻し、連れ去った土井先生を捕まえることをここにいる全忍たま及び全教職員に命じる。名付けて、『空ちゃん&土井先生、愛の逃避行阻止大作戦』じゃ!」
「ええぇぇぇ!」
「ふぉふぉふぉ。もちろん頑張った者への褒美は考えておる。見事空ちゃんを救出し、土井先生をとらえた暁には……一か月間食堂のご飯がタダで食べられるフリーパスを進呈しよう!」
思わぬ豪華景品に、全員の目の色が変わった。
特に顕著なのがこの二人。
食欲が服を着て歩いているようなしんべヱとタダのためならなんだってするきり丸だ。
「はぁい。ボク、参加しま~す!」
「おれも、おれも、おれも!」
「あ、待ってよ。二人が参加するなら、私も行く!」
しんべヱときり丸に続き、乱太郎が走り出す。
「へぇ……土井先生を捕まえるとは、中々やりがいがありそうだな」
「ああ。忍者としての実力を試せる、良いチャンスだ」
胸ぐらをつかみ合っている文次郎と留三郎は一時休戦。
乱太郎たちに続いた。
「私たちも参加しましょう、トモミちゃん、おシゲちゃん!」
「もっちろん!空さんをとっつかまえて、これまでのこと、全て教えてもらわないと」
「三人の恋の行方、気になりましゅ♡」
ユキたちも先頭に追い付こうと駆け出して行く。
会場に残っている他学年の忍たまたちも、続々と参加しはじめる。
「さてと、我々もそろそろ行くとしますか」
「フッ。忍術学園で最も若くて、働き盛りの忍者を捕まえるのは一筋縄ではいかないが、いい機会だ。経験の差を見せつけておこう……」
「きゃー、恥ずかしい……でも、食堂のフリーパスは欲しい……」
「体力勝負は分が悪いですが、みんなに集中砲火されている隙を狙えば、私にも勝機があります」
ポキポキと指をならす木下、眼鏡を整え格好つける野村、赤面している松千代、グフッと妖しい笑みをこぼす安藤が一斉に発つ。
「ゆらり……フリーパスは絶対に私がいただく……」
鋭い眼光を放ちながら、戸部が走り出した。
ちなみに学園長の庵に残っているのは、この追いかけっこの発案者である学園長とヘムヘム。
それに、食堂のおばちゃんとシナだ。
「さぁて、半助は無事逃げ切れるかのう」
「ヘムヘムゥ」
「帰ってきた空ちゃんに話を聞くのが楽しみだわ。それにしても、」
「なあに、食堂のおばちゃん?」
「利吉君は全然諦めていないし……私たち、これからも空ちゃんの恋模様をまだまだ楽しめそうね!」
「ほんとほんと、次の女子会が楽しみです!」
食堂のおばちゃんとシナは意気投合する。
横で聞いていた学園長は空ちゃんも大変じゃのう……と、しかし、他人事のように呟くのだった。