35.この世界より、愛をこめて
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翌日。
明日から春休みを迎える忍術学園は今、お祭り一色なムードであった。
「やはり、皆で宴会は楽しいのう。なぁ、ヘムヘム!」
「ヘムゥ」
周囲を見渡しながら、学園長とヘムヘムは縁側で団子を頬張っている。
午後、学園長の庵周辺にて宴会が開催されていた。
庵の屋根に飾ってあるのは、下級生たちが予てから作成していた「空さん、快気祝いおめでとう&お誕生日も!」のプレート。
後半の文言は開催間近に知ったようで、プレートの端に小さく書き加えられている。
この宴会――事の発端は、仙人山で遭難した空を救出した際の食満留三郎の一言、
『空さん!忍術学園に戻って怪我が治ったら、派手に快気祝いをやりましょう!』
だった。
とはいえ、空の怪我が治ってから今日に至るまで結構日が空いてしまったが、仕方のないこと。
空を救出した立役者の一人である利吉の都合が合わなかったのだ。
宴会会場の方は、生徒たちも大人たちも大いに盛り上がっている。
外の庭は立食形式をとっており、テーブルの前で忍たまたちが和気あいあいと、室内の庵では教職員たちがほんのり頬を紅くして酒を酌み交わしている。
空は乱太郎たちと一緒に外にいた。
食卓に並んだオードブルをつまんでいる。
「この胡麻豆腐美味しいね。色んな形があって、見た目も可愛い!」
「久々知先輩が作ったんですよね、コレ。流石豆腐に関しては右に出るものがいないっす」
「ボクは豆腐も好きだけど、お肉もお魚もだ~い好き!フガッ……モグッ……」
そう言って、しんべヱは脇目もふらずにご馳走を口に押し込めていく。
「しんべヱ、もう少しゆっくり食べなよ」
「ほんとほんと、喉に詰まっちゃうぜ」
見かねた乱太郎たちが呆れたように注意する。
そこへ、深緑色の制服に身を包んだ忍たまたちがやってきた。
六年生だ。
彼らを代表するかのように、六年い組の立花仙蔵が声をかけた。
「空さん」
「あ、みんな」
「今朝、昨日が空さんの誕生日だったと聞いて、驚きました。快気祝いと兼ねて、お誕生日おめでとうございます」
そう言って、仙蔵は空に花束を渡した。
豊富な種類の花が生成色の和紙で綺麗にラッピングされている。
「うわぁ……凄く綺麗。どうしたの、これ?」
「今朝、近くの川辺や野原で摘んできたんです」
感激した空はまるで花のように顔を綻ばせる。
それを見て、大成功……と六年生たちの間に笑顔が広がっていく。
ただし、ある人物だけを除いて。
仙蔵の後ろで一人ブツクサ言うのは、仙蔵の同室メイト、学園一忍者している忍たまこと潮江文次郎だ。
「まったく、朝イチで花摘みする身にもなってみろってもんだ。女じゃあるまいし」
「その割にはお前、もう少し色鮮やかな花が多い方がいいんじゃないかとか、人一倍こだわってたようだけど」
「な……!」
「他にも、裏山を超えた先に大きな花畑があるからそこへ足を延ばしてみようとか、一番張り切っていたのは誰だっけ?」
文次郎に茶々を入れるのは、彼と犬猿の仲である六年は組の食満留三郎だ。
言われっぱなしの文次郎は、これにプッツン。
「うるさぁぁぁぁい!どんなことにも妥協しないのが俺の信念なんだ!」
「ふ~ん、信念ねぇ」
せせら笑う留三郎に我慢の限界を迎えた文次郎はどこに持っていたのか、得意武器の袋槍を構えた。
「おれを愚弄したこと、後悔させてやる!」
「フン、言ったな文次郎。後悔するのはお前の方だ!」
武闘派同士、考えることは全く同じようで。
留三郎は得意の武器である鉄双節昆(要は和製ヌンチャク)を取り出した。
睨み合った二人はそのまま熱いバトルへと突入していく。
伊作が顔をおさえた。
「あ~あ、こんなめでたい日になにやってんだか、、」
「いいんじゃないか、伊作。良い余興になる。おっ、意外にも留三郎が押してるな」
「文次郎、何やってるんだ!そこだ、攻めろ!いけいけどんど~ん!」
「もそ……もそ……」
迫力満点。
六年生同士の熾烈なファイトに、下級生や教職員たちも徐々に声援を送り出す。
ちなみにこれに乗じて対戦チケットを売り飛ばそうとしたきり丸は、
「あがががが……」
とくの一教室の女の子たちに袋叩きにされ、地面にめり込んでいた。
「潮江君と食満君、白熱してるね」
「ほんとですねぇ。ボクは食満先輩を応援しますよ、用具委員として!フガッ……モグッ……」
「しんべえ、いい加減食べるのやめたらどう?あ、そこだ!潮江先輩、行け!」
きり丸以外の空たち三人はのんびりと六年生同士の対決を見物している。
そこに、半助がやってきた。
「全く、山田先生たちの悪酔いにも困ったもんだ」
「土井先生!」
やっと解放された、と半助はぐったりとしている。
空が苦笑まじりで聞いた。
「結構お酒飲んじゃいましたか?」
「いや、そんなには。空は楽しんでいるか?」
「はい。さっきも六年生に花束をもらったんです、これ」
「そうか」
花束を抱きしめる空を見て、半助が微笑む。
そのときだった。
「くらえ!」
文次郎が懐から取り出した手裏剣を投げる。
が、留三郎は鉄双節昆で薙ぎ払い、軌道をずらした。
運の悪いことに、弾かれた手裏剣の一部は空たちのいる一角に向かっている。
「危ない!」
半助が動こうとする。
だが、半助よりもいち早く、とある男が空をかばうように前に出た。
被っていた菅笠を盾のようにかざせば、飛んできた手裏剣が吸い込まれるようにそこへと突き刺さった。
明日から春休みを迎える忍術学園は今、お祭り一色なムードであった。
「やはり、皆で宴会は楽しいのう。なぁ、ヘムヘム!」
「ヘムゥ」
周囲を見渡しながら、学園長とヘムヘムは縁側で団子を頬張っている。
午後、学園長の庵周辺にて宴会が開催されていた。
庵の屋根に飾ってあるのは、下級生たちが予てから作成していた「空さん、快気祝いおめでとう&お誕生日も!」のプレート。
後半の文言は開催間近に知ったようで、プレートの端に小さく書き加えられている。
この宴会――事の発端は、仙人山で遭難した空を救出した際の食満留三郎の一言、
『空さん!忍術学園に戻って怪我が治ったら、派手に快気祝いをやりましょう!』
だった。
とはいえ、空の怪我が治ってから今日に至るまで結構日が空いてしまったが、仕方のないこと。
空を救出した立役者の一人である利吉の都合が合わなかったのだ。
宴会会場の方は、生徒たちも大人たちも大いに盛り上がっている。
外の庭は立食形式をとっており、テーブルの前で忍たまたちが和気あいあいと、室内の庵では教職員たちがほんのり頬を紅くして酒を酌み交わしている。
空は乱太郎たちと一緒に外にいた。
食卓に並んだオードブルをつまんでいる。
「この胡麻豆腐美味しいね。色んな形があって、見た目も可愛い!」
「久々知先輩が作ったんですよね、コレ。流石豆腐に関しては右に出るものがいないっす」
「ボクは豆腐も好きだけど、お肉もお魚もだ~い好き!フガッ……モグッ……」
そう言って、しんべヱは脇目もふらずにご馳走を口に押し込めていく。
「しんべヱ、もう少しゆっくり食べなよ」
「ほんとほんと、喉に詰まっちゃうぜ」
見かねた乱太郎たちが呆れたように注意する。
そこへ、深緑色の制服に身を包んだ忍たまたちがやってきた。
六年生だ。
彼らを代表するかのように、六年い組の立花仙蔵が声をかけた。
「空さん」
「あ、みんな」
「今朝、昨日が空さんの誕生日だったと聞いて、驚きました。快気祝いと兼ねて、お誕生日おめでとうございます」
そう言って、仙蔵は空に花束を渡した。
豊富な種類の花が生成色の和紙で綺麗にラッピングされている。
「うわぁ……凄く綺麗。どうしたの、これ?」
「今朝、近くの川辺や野原で摘んできたんです」
感激した空はまるで花のように顔を綻ばせる。
それを見て、大成功……と六年生たちの間に笑顔が広がっていく。
ただし、ある人物だけを除いて。
仙蔵の後ろで一人ブツクサ言うのは、仙蔵の同室メイト、学園一忍者している忍たまこと潮江文次郎だ。
「まったく、朝イチで花摘みする身にもなってみろってもんだ。女じゃあるまいし」
「その割にはお前、もう少し色鮮やかな花が多い方がいいんじゃないかとか、人一倍こだわってたようだけど」
「な……!」
「他にも、裏山を超えた先に大きな花畑があるからそこへ足を延ばしてみようとか、一番張り切っていたのは誰だっけ?」
文次郎に茶々を入れるのは、彼と犬猿の仲である六年は組の食満留三郎だ。
言われっぱなしの文次郎は、これにプッツン。
「うるさぁぁぁぁい!どんなことにも妥協しないのが俺の信念なんだ!」
「ふ~ん、信念ねぇ」
せせら笑う留三郎に我慢の限界を迎えた文次郎はどこに持っていたのか、得意武器の袋槍を構えた。
「おれを愚弄したこと、後悔させてやる!」
「フン、言ったな文次郎。後悔するのはお前の方だ!」
武闘派同士、考えることは全く同じようで。
留三郎は得意の武器である鉄双節昆(要は和製ヌンチャク)を取り出した。
睨み合った二人はそのまま熱いバトルへと突入していく。
伊作が顔をおさえた。
「あ~あ、こんなめでたい日になにやってんだか、、」
「いいんじゃないか、伊作。良い余興になる。おっ、意外にも留三郎が押してるな」
「文次郎、何やってるんだ!そこだ、攻めろ!いけいけどんど~ん!」
「もそ……もそ……」
迫力満点。
六年生同士の熾烈なファイトに、下級生や教職員たちも徐々に声援を送り出す。
ちなみにこれに乗じて対戦チケットを売り飛ばそうとしたきり丸は、
「あがががが……」
とくの一教室の女の子たちに袋叩きにされ、地面にめり込んでいた。
「潮江君と食満君、白熱してるね」
「ほんとですねぇ。ボクは食満先輩を応援しますよ、用具委員として!フガッ……モグッ……」
「しんべえ、いい加減食べるのやめたらどう?あ、そこだ!潮江先輩、行け!」
きり丸以外の空たち三人はのんびりと六年生同士の対決を見物している。
そこに、半助がやってきた。
「全く、山田先生たちの悪酔いにも困ったもんだ」
「土井先生!」
やっと解放された、と半助はぐったりとしている。
空が苦笑まじりで聞いた。
「結構お酒飲んじゃいましたか?」
「いや、そんなには。空は楽しんでいるか?」
「はい。さっきも六年生に花束をもらったんです、これ」
「そうか」
花束を抱きしめる空を見て、半助が微笑む。
そのときだった。
「くらえ!」
文次郎が懐から取り出した手裏剣を投げる。
が、留三郎は鉄双節昆で薙ぎ払い、軌道をずらした。
運の悪いことに、弾かれた手裏剣の一部は空たちのいる一角に向かっている。
「危ない!」
半助が動こうとする。
だが、半助よりもいち早く、とある男が空をかばうように前に出た。
被っていた菅笠を盾のようにかざせば、飛んできた手裏剣が吸い込まれるようにそこへと突き刺さった。