35.この世界より、愛をこめて
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(どうしよう、どうしよう!)
空は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
というのも、光沢を放つ横笛を見れば見るほど、相当値打ちの品であることが伝わってくる。
しかも、唐渡りの品。
空の中では、その楽器に天文学的な金額が付いてしまっていた。
喩えていうなら、世界一のバイオリンと評されるストラディバリウスくらいだろうか。
(しんべヱ君のパパに譲ってもらったなんて言ってるけど、絶対嘘。いくら払ったんだろう……)
これではまるでキャバ嬢のように貢がせる女ではないか。
欲しいなんて口に出すべきではなかったと空は後悔していた。
一方で、半助は面食らっていた。
というのも、空の顔は真っ青。
全く嬉しそうにしていない。
空が今にも泣き出しそうな表情で懇願した。
「土井先生!これ……今すぐしんべヱ君のパパに返してください!」
「ええっ!何でそんなことを言うんだ!?」
「だって、こんな高価なもの、土井先生のお給料で買えるわけないじゃないですか!……私、知っています。この時代でもローンが組めるんですよね?これを買うために、きりちゃんのお知り合いのおりん婆さんや抜天坊さんから多額のお金を融通してもらったんじゃないんですか?」
これを受けて一瞬唖然とする半助だったが、やがて腹の底から咆哮した。
「違う、違う、違う!いい加減にしろぉぉぉぉぉぉ!」
その声の凄まじさに、動転していた空は呆然。
毒気を抜かれたような顔をしている。
「あのなぁ、心配する気持ちもわからなくはないが……言っておくが、私はそれなりに給料は頂いている!君ときり丸を養えるくらいには」
「……」
「もちろん、しんべヱのお父上にお代を払おうとした。が、断られてしまったよ」
「そ、そうなんですか?」
「ああ。しんべヱのお父上はこうおっしゃっていた。私にも君にもお礼がしたい、と」
半助からそう聞かされても、空の罪悪感は完全には拭いきれなかった。
「それでも、いつか自分で手に入れよう、て思ったのに……どうして……?」
「君がそう決意するほど欲しいものを渡したかったんだ。私の手から。想いが通じ合ってからは尚更」
半助は空を見据えながら言った。
「空、私は嬉しかったんだ。あの日……二人で一晩過ごした日の翌日、帰り道で君はこう言った。もう元の世界に帰れなくていい、後悔なんてしない、私と一緒なら、この世界で死んだってかまわない――と」
「半助さん……」
「全てを捨てるくらいの覚悟で私と生きることを選んでくれた君に、一つだけ大切にしてほしいことがあるんだ」
「大切にしてほしいこと?」
呆然と呟く空に、半助はやさしく微笑んだ。
「君の思い出だよ。これから違う世界で生きていくことになろうと、君が生まれ育った十八年間は、永遠に君だけのものだ」
「半助さん……」
やさしい半助の感情が空の心に流れ込んでくる。
温かい。
その温もりを感じながら、空は半助の言葉を聞いていた。
「うまく言えないけど……その……ここと向こうの世界との懸け橋になるようなものを、君に贈りたかったんだ。その楽器は君が使っていたものとは程遠いかもしれないけど、」
「……」
「その楽器が奏でる音を、曲を通して、私たちは君のいた世界を垣間見れるのかな、なんて」
半助が照れくさそうに笑う。
が、次の瞬間には驚きの表情に変わる。
空は顔を伏せ、洟 をすすっている。
膝は熱い涙で濡れていた。
「空……」
半助が心配そうに顔を覗き込む。
が、次の瞬間半助は怯む。
涙目の空が怒り顔で睨みつけてきたのだ。
「勝手にこんなことをして……半助さんはバカです。バカバカバカ。大バカです!」
これに半助はムッとする。
「な……バカとはなんだ、バカとは!」
「何度でもいいますよ。バカですよ。バカ!」
「こら、失礼だぞ!」
半助がいくら注意しても、空は「バカ」と言い続ける。
しかし、言えば言うほど、それが嬉しさの裏返しであることが半助には伝わってきた。
「はいはい、どうせ私はバカですよ……いつだって好きな女の幸せを望んでいる、身勝手で愚かな男だ」
「半助さん!」
感激した空が半助に飛びつく。
が、空の飛び込みが予想以上に勢いがあり、半助はバランスを崩してしまう。
柔らかい草の上に、二人は倒れ込んだ。
「っと、怪我はないか、空?」
半助が空の顔を見る。
身体を気遣う半助に構わず、空は下にいる半助を愛おしげに見つめて言った。
「半助さん……好き、大好き!」
次の瞬間、二つの唇は重なっていた。
「!」
熱烈なキス――
思わぬ積極性に驚かされる半助だったが、ほんの僅かな時間のこと。
柔らかい唇を存分に味わおうと空の後頭部へ手を回し、長いキスへと繋げようとする。
だが、ここまでだった。
半助だけは察知していた。
濃厚な雰囲気を醸し出した途端、あからさまに存在を主張し始めた第三者たちの気配を。
焦った半助は大急ぎで上体を起こし、割れんばかりの怒声を飛ばした。
「食堂のおばちゃんにシナ先生!それから……他にもいるでしょう!いつまでも隠れてないで、出てきてください!」
「え?え?え?」
空が慌てて立ち上がる。
ぞろぞろと後方の叢や岩の影から野次馬たちが姿を現した。
食堂のおばちゃん、シナ、伝蔵、学園長、ヘムヘムの固定メンバーに加え、小松田に吉野、しんべヱのパパまでいた。
全員、半助たちをこっそりと尾行していたのだ。
食堂のおばちゃんを始め、全員がにんまりと笑う。
その笑みで今までのやりとりを全部見られていたのだと空は悟った。
半助が眉間に皺をよせ、忌々しげに呟く。
「全く、悪趣味な……」
「そう怒るな、半助。何はともあれ喜んでもらえてよかったではないか」
「そうよ、半助!私たちはずっと心配してたんだから……空ちゃん、よかったわね。素敵な誕生日になって」
食堂のおばちゃんがそう言えば、他のみんなは次々に祝意を述べる。
しばらく放心したように聞いていた空だったが、やがてふたたび涙を流し始めた。
歓喜の涙を。
空は食堂のおばちゃんを見て、困ったように尋ねた。
「食堂のおばちゃん……私、今日までずっとずっと忍術学園のみんなに優しくしてもらって……こんなに幸せで……いいんでしょうか?」
空の声は震えている。
食堂のおばちゃんは空の元へ寄り、その肩に手を置いた。
「何言ってんのよ。遠いところから一人でやってきて……失ったものが大きいんだもの。当然じゃない」
「……」
「それにね、空ちゃんが幸せになることは決まっていたのよ。私たちと出会った、その瞬間から」
「おばちゃん!」
空の涙腺は完全に崩壊してしまった。
食堂のおばちゃんは泣きじゃくる空を抱きしめる。
しばしの間、空を甘えさせていたおばちゃんだったが、頃合いを見てポツリと呟いた。
「空ちゃん、このままずっと胸を貸してあげたいところだけど、あんまり長引くと誰かさんがいじけてしまうわよ」
「あ、」
空が振り返る。
見れば、どこか面白くないといった様子の半助がいた。
空は涙を拭いながら半助の隣に戻り、手持ち無沙汰な彼の手をさりげなく握る。
コホンと咳払いをして、半助が部外者たちに向けて言った。
刺々しい口調で。
「皆さん……申し訳ありませんが、速やかにお引き取り願えませんか?」
「そうじゃった、そうじゃった。これ以上の見物は野暮と言ったところかのう……ふぉっふぉっふぉっ」
「ヘムヘムゥ」
学園長とヘムヘムが事も無げに笑う。
その横でしんべヱのパパはご満悦といった様子だ。
「いやぁ、それにしても今日はいいものを見せてもらいました。これぞ、青春ですなぁ。興奮して今夜は眠れなさそうですぞ!」
「ほうほう、それでしたらしんべヱのお父上、この後ワシと一杯やりませんか?」
「おお!いいんですか?」
「もちろん。吉野先生も宜しければ軽く一杯どうですか?」
「山田先生、是非。今日は久々に小松田君に付き合わされて、大変でした。酒を煽りたい気分です……」
「ほへ?」
男たちは続々と帰っていく。
「空ちゃん、明日は寝坊してもいいわよ。快気祝いはお昼からだから」
「んもう、食堂のおばちゃんったら、フフフ……空さん、今度笛の演奏ゆっくり聞かせてね!」
食堂のおばちゃんとシナも去っていった。
「……行っちゃいましたね」
「ほんと、油断も隙もありゃしない。彼らの出しゃばりにも困ったものだ」
「そうですね」
恋人との逢瀬を覗き見されて、半助のように怒ってもおかしくないというのに。
空は今微笑んでいる。
全く、なんて人達だろう――
だが、そのお節介が無性に心地よい。
自分と半助の幸せを願ってくれる彼らに、感謝の思いでいっぱいだった。
「空」
甘く切なげに半助が呼ぶ。
いつの間にか、半助は頭巾をほどいていた。
長い髪が夜風にたなびいている。
「半助さん……」
素顔の半助に見つめられて、空の胸が高鳴っていく。
節ばった指が目元に残った涙を掬った。
「贈って頂いた笛……一生大事にします」
「うん」
唇がスッと重なる。
そのまま身体を密着させ、ふたりはきつく抱き締め合う。
恋人たちの真上にある星々は銀紙のような光を放っていた。
空は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
というのも、光沢を放つ横笛を見れば見るほど、相当値打ちの品であることが伝わってくる。
しかも、唐渡りの品。
空の中では、その楽器に天文学的な金額が付いてしまっていた。
喩えていうなら、世界一のバイオリンと評されるストラディバリウスくらいだろうか。
(しんべヱ君のパパに譲ってもらったなんて言ってるけど、絶対嘘。いくら払ったんだろう……)
これではまるでキャバ嬢のように貢がせる女ではないか。
欲しいなんて口に出すべきではなかったと空は後悔していた。
一方で、半助は面食らっていた。
というのも、空の顔は真っ青。
全く嬉しそうにしていない。
空が今にも泣き出しそうな表情で懇願した。
「土井先生!これ……今すぐしんべヱ君のパパに返してください!」
「ええっ!何でそんなことを言うんだ!?」
「だって、こんな高価なもの、土井先生のお給料で買えるわけないじゃないですか!……私、知っています。この時代でもローンが組めるんですよね?これを買うために、きりちゃんのお知り合いのおりん婆さんや抜天坊さんから多額のお金を融通してもらったんじゃないんですか?」
これを受けて一瞬唖然とする半助だったが、やがて腹の底から咆哮した。
「違う、違う、違う!いい加減にしろぉぉぉぉぉぉ!」
その声の凄まじさに、動転していた空は呆然。
毒気を抜かれたような顔をしている。
「あのなぁ、心配する気持ちもわからなくはないが……言っておくが、私はそれなりに給料は頂いている!君ときり丸を養えるくらいには」
「……」
「もちろん、しんべヱのお父上にお代を払おうとした。が、断られてしまったよ」
「そ、そうなんですか?」
「ああ。しんべヱのお父上はこうおっしゃっていた。私にも君にもお礼がしたい、と」
半助からそう聞かされても、空の罪悪感は完全には拭いきれなかった。
「それでも、いつか自分で手に入れよう、て思ったのに……どうして……?」
「君がそう決意するほど欲しいものを渡したかったんだ。私の手から。想いが通じ合ってからは尚更」
半助は空を見据えながら言った。
「空、私は嬉しかったんだ。あの日……二人で一晩過ごした日の翌日、帰り道で君はこう言った。もう元の世界に帰れなくていい、後悔なんてしない、私と一緒なら、この世界で死んだってかまわない――と」
「半助さん……」
「全てを捨てるくらいの覚悟で私と生きることを選んでくれた君に、一つだけ大切にしてほしいことがあるんだ」
「大切にしてほしいこと?」
呆然と呟く空に、半助はやさしく微笑んだ。
「君の思い出だよ。これから違う世界で生きていくことになろうと、君が生まれ育った十八年間は、永遠に君だけのものだ」
「半助さん……」
やさしい半助の感情が空の心に流れ込んでくる。
温かい。
その温もりを感じながら、空は半助の言葉を聞いていた。
「うまく言えないけど……その……ここと向こうの世界との懸け橋になるようなものを、君に贈りたかったんだ。その楽器は君が使っていたものとは程遠いかもしれないけど、」
「……」
「その楽器が奏でる音を、曲を通して、私たちは君のいた世界を垣間見れるのかな、なんて」
半助が照れくさそうに笑う。
が、次の瞬間には驚きの表情に変わる。
空は顔を伏せ、
膝は熱い涙で濡れていた。
「空……」
半助が心配そうに顔を覗き込む。
が、次の瞬間半助は怯む。
涙目の空が怒り顔で睨みつけてきたのだ。
「勝手にこんなことをして……半助さんはバカです。バカバカバカ。大バカです!」
これに半助はムッとする。
「な……バカとはなんだ、バカとは!」
「何度でもいいますよ。バカですよ。バカ!」
「こら、失礼だぞ!」
半助がいくら注意しても、空は「バカ」と言い続ける。
しかし、言えば言うほど、それが嬉しさの裏返しであることが半助には伝わってきた。
「はいはい、どうせ私はバカですよ……いつだって好きな女の幸せを望んでいる、身勝手で愚かな男だ」
「半助さん!」
感激した空が半助に飛びつく。
が、空の飛び込みが予想以上に勢いがあり、半助はバランスを崩してしまう。
柔らかい草の上に、二人は倒れ込んだ。
「っと、怪我はないか、空?」
半助が空の顔を見る。
身体を気遣う半助に構わず、空は下にいる半助を愛おしげに見つめて言った。
「半助さん……好き、大好き!」
次の瞬間、二つの唇は重なっていた。
「!」
熱烈なキス――
思わぬ積極性に驚かされる半助だったが、ほんの僅かな時間のこと。
柔らかい唇を存分に味わおうと空の後頭部へ手を回し、長いキスへと繋げようとする。
だが、ここまでだった。
半助だけは察知していた。
濃厚な雰囲気を醸し出した途端、あからさまに存在を主張し始めた第三者たちの気配を。
焦った半助は大急ぎで上体を起こし、割れんばかりの怒声を飛ばした。
「食堂のおばちゃんにシナ先生!それから……他にもいるでしょう!いつまでも隠れてないで、出てきてください!」
「え?え?え?」
空が慌てて立ち上がる。
ぞろぞろと後方の叢や岩の影から野次馬たちが姿を現した。
食堂のおばちゃん、シナ、伝蔵、学園長、ヘムヘムの固定メンバーに加え、小松田に吉野、しんべヱのパパまでいた。
全員、半助たちをこっそりと尾行していたのだ。
食堂のおばちゃんを始め、全員がにんまりと笑う。
その笑みで今までのやりとりを全部見られていたのだと空は悟った。
半助が眉間に皺をよせ、忌々しげに呟く。
「全く、悪趣味な……」
「そう怒るな、半助。何はともあれ喜んでもらえてよかったではないか」
「そうよ、半助!私たちはずっと心配してたんだから……空ちゃん、よかったわね。素敵な誕生日になって」
食堂のおばちゃんがそう言えば、他のみんなは次々に祝意を述べる。
しばらく放心したように聞いていた空だったが、やがてふたたび涙を流し始めた。
歓喜の涙を。
空は食堂のおばちゃんを見て、困ったように尋ねた。
「食堂のおばちゃん……私、今日までずっとずっと忍術学園のみんなに優しくしてもらって……こんなに幸せで……いいんでしょうか?」
空の声は震えている。
食堂のおばちゃんは空の元へ寄り、その肩に手を置いた。
「何言ってんのよ。遠いところから一人でやってきて……失ったものが大きいんだもの。当然じゃない」
「……」
「それにね、空ちゃんが幸せになることは決まっていたのよ。私たちと出会った、その瞬間から」
「おばちゃん!」
空の涙腺は完全に崩壊してしまった。
食堂のおばちゃんは泣きじゃくる空を抱きしめる。
しばしの間、空を甘えさせていたおばちゃんだったが、頃合いを見てポツリと呟いた。
「空ちゃん、このままずっと胸を貸してあげたいところだけど、あんまり長引くと誰かさんがいじけてしまうわよ」
「あ、」
空が振り返る。
見れば、どこか面白くないといった様子の半助がいた。
空は涙を拭いながら半助の隣に戻り、手持ち無沙汰な彼の手をさりげなく握る。
コホンと咳払いをして、半助が部外者たちに向けて言った。
刺々しい口調で。
「皆さん……申し訳ありませんが、速やかにお引き取り願えませんか?」
「そうじゃった、そうじゃった。これ以上の見物は野暮と言ったところかのう……ふぉっふぉっふぉっ」
「ヘムヘムゥ」
学園長とヘムヘムが事も無げに笑う。
その横でしんべヱのパパはご満悦といった様子だ。
「いやぁ、それにしても今日はいいものを見せてもらいました。これぞ、青春ですなぁ。興奮して今夜は眠れなさそうですぞ!」
「ほうほう、それでしたらしんべヱのお父上、この後ワシと一杯やりませんか?」
「おお!いいんですか?」
「もちろん。吉野先生も宜しければ軽く一杯どうですか?」
「山田先生、是非。今日は久々に小松田君に付き合わされて、大変でした。酒を煽りたい気分です……」
「ほへ?」
男たちは続々と帰っていく。
「空ちゃん、明日は寝坊してもいいわよ。快気祝いはお昼からだから」
「んもう、食堂のおばちゃんったら、フフフ……空さん、今度笛の演奏ゆっくり聞かせてね!」
食堂のおばちゃんとシナも去っていった。
「……行っちゃいましたね」
「ほんと、油断も隙もありゃしない。彼らの出しゃばりにも困ったものだ」
「そうですね」
恋人との逢瀬を覗き見されて、半助のように怒ってもおかしくないというのに。
空は今微笑んでいる。
全く、なんて人達だろう――
だが、そのお節介が無性に心地よい。
自分と半助の幸せを願ってくれる彼らに、感謝の思いでいっぱいだった。
「空」
甘く切なげに半助が呼ぶ。
いつの間にか、半助は頭巾をほどいていた。
長い髪が夜風にたなびいている。
「半助さん……」
素顔の半助に見つめられて、空の胸が高鳴っていく。
節ばった指が目元に残った涙を掬った。
「贈って頂いた笛……一生大事にします」
「うん」
唇がスッと重なる。
そのまま身体を密着させ、ふたりはきつく抱き締め合う。
恋人たちの真上にある星々は銀紙のような光を放っていた。