35.この世界より、愛をこめて
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その翌日のこと。
朝、目が覚めた空は枕元に文が置いてあるのに気が付いた。
「何だろう……?」
不思議そうに呟きながら文を開けば、そこにはこう書いてあった。
今日の戌の刻、庭の池のほとりに来てほしい、と。
差出人は筆跡ですぐにわかった。
半助だ。
(半助さん……)
空は手紙を愛おしそうに握りしめる。
想いを通わせた日から一週間。
その間、仕事でお互い忙しく、ゆっくり話す時間など皆無だった。
春休みになれば、のんびりと二人で過ごすことができる――そう自分に言い聞かせながら日々を乗り切っている空にとっては、思いがけないほどの嬉しい出来事だった。
(今日はなんだか良い一日になりそうな気がする……!)
空はうーんとその場で背伸びをする。
部屋の戸を少し開けば、けぶったような薄明の光が空の顔を照らした。
***
ランチの時間が終われば、空は食堂補佐から事務員へとチェンジする。
約半日を終えて、空は一人首を捻っていた。
(なんか、今日みんな変……)
食堂のおばちゃんやシナ、伝蔵や学園長は意味深な笑みを向けてくるし、乱太郎たち三人は何か言いたそうにウズウズしている様子だった。
半助も然り。
今日に限って、何故かよそよそしい。
朝一番に食堂で会って、手紙読んでくれた?と確認されてからはそれっきり。
(一体、どうしたんだろう、みんな……)
そうこうしているうちに事務室に着いた。
戸を開ければ、先輩の小松田が顔をくしゃくしゃにして空のところへ駆けてくる。
「空さん、乱太郎君たちから聞きましたよ!なんでも今日た、」
が、小松田の言葉をあらんかぎりの大声が制した。
「小松田君!」
小松田の後ろには般若の形相をした吉野が控えていた。
「よ、吉野先生……」
空が思わず怯む。
一方で、吉野は空を視界に収めると、忽ち仏様のように穏やかになった。
「明日は空さんの快気祝いですね」
「は、はい」
「さて、今日空さんには……ここ事務室の書棚の整理をお願いしようかと思います。私は小松田君とともに、外で倉庫の点検をしてきます」
そう言って、小松田の腕をとった吉野はそそくさと退室する。
バタン……
戸が閉まり、部屋に沈黙が広がる。
何かを言いかけた小松田が気になる空だったが、吉野に言付かったことを思い出し、すぐに書棚を確認した。
長いこと整理されていないようで、本の並びや綴ってある資料が乱雑である。
夜の逢瀬を控えている今日だけは残業したくない。
そう思った空は気合注入とばかりに腕をまくり、作業を開始した。
部屋を退室した吉野たちは廊下をズンズン歩き進む。
事務室が見えなくなったあたりで、小松田に言った。
「小松田君、あれほど言っちゃダメだって注意したでしょう!」
「え、何のことですか?」
あっけらかんと言う小松田に対し、吉野はこめかみに青筋を浮かばせている。
が、怒りを我慢しながら小松田に応じた。
「舞野さんの誕生日のことですよ!乱太郎君たちがうっかり君にばらしちゃった後、食堂のおばちゃんに口止めされたでしょう!」
「あ、そうだった。あはは」
悪びれずに笑う小松田の傍で、吉野がボソッと言った。
「今日だけは小松田君と舞野さんを一緒に居させるわけには行きません。土井先生のためにも」
「ほへ?」
「あ、いや君は知らなくていいんです。とにかく倉庫へ向かいましょう」
「はい!」
小松田が元気よく頷く。
このあと、小松田のパートナーを久々に務める吉野は度重なる小松田の失態にブチ切れるのであった。
朝、目が覚めた空は枕元に文が置いてあるのに気が付いた。
「何だろう……?」
不思議そうに呟きながら文を開けば、そこにはこう書いてあった。
今日の戌の刻、庭の池のほとりに来てほしい、と。
差出人は筆跡ですぐにわかった。
半助だ。
(半助さん……)
空は手紙を愛おしそうに握りしめる。
想いを通わせた日から一週間。
その間、仕事でお互い忙しく、ゆっくり話す時間など皆無だった。
春休みになれば、のんびりと二人で過ごすことができる――そう自分に言い聞かせながら日々を乗り切っている空にとっては、思いがけないほどの嬉しい出来事だった。
(今日はなんだか良い一日になりそうな気がする……!)
空はうーんとその場で背伸びをする。
部屋の戸を少し開けば、けぶったような薄明の光が空の顔を照らした。
***
ランチの時間が終われば、空は食堂補佐から事務員へとチェンジする。
約半日を終えて、空は一人首を捻っていた。
(なんか、今日みんな変……)
食堂のおばちゃんやシナ、伝蔵や学園長は意味深な笑みを向けてくるし、乱太郎たち三人は何か言いたそうにウズウズしている様子だった。
半助も然り。
今日に限って、何故かよそよそしい。
朝一番に食堂で会って、手紙読んでくれた?と確認されてからはそれっきり。
(一体、どうしたんだろう、みんな……)
そうこうしているうちに事務室に着いた。
戸を開ければ、先輩の小松田が顔をくしゃくしゃにして空のところへ駆けてくる。
「空さん、乱太郎君たちから聞きましたよ!なんでも今日た、」
が、小松田の言葉をあらんかぎりの大声が制した。
「小松田君!」
小松田の後ろには般若の形相をした吉野が控えていた。
「よ、吉野先生……」
空が思わず怯む。
一方で、吉野は空を視界に収めると、忽ち仏様のように穏やかになった。
「明日は空さんの快気祝いですね」
「は、はい」
「さて、今日空さんには……ここ事務室の書棚の整理をお願いしようかと思います。私は小松田君とともに、外で倉庫の点検をしてきます」
そう言って、小松田の腕をとった吉野はそそくさと退室する。
バタン……
戸が閉まり、部屋に沈黙が広がる。
何かを言いかけた小松田が気になる空だったが、吉野に言付かったことを思い出し、すぐに書棚を確認した。
長いこと整理されていないようで、本の並びや綴ってある資料が乱雑である。
夜の逢瀬を控えている今日だけは残業したくない。
そう思った空は気合注入とばかりに腕をまくり、作業を開始した。
部屋を退室した吉野たちは廊下をズンズン歩き進む。
事務室が見えなくなったあたりで、小松田に言った。
「小松田君、あれほど言っちゃダメだって注意したでしょう!」
「え、何のことですか?」
あっけらかんと言う小松田に対し、吉野はこめかみに青筋を浮かばせている。
が、怒りを我慢しながら小松田に応じた。
「舞野さんの誕生日のことですよ!乱太郎君たちがうっかり君にばらしちゃった後、食堂のおばちゃんに口止めされたでしょう!」
「あ、そうだった。あはは」
悪びれずに笑う小松田の傍で、吉野がボソッと言った。
「今日だけは小松田君と舞野さんを一緒に居させるわけには行きません。土井先生のためにも」
「ほへ?」
「あ、いや君は知らなくていいんです。とにかく倉庫へ向かいましょう」
「はい!」
小松田が元気よく頷く。
このあと、小松田のパートナーを久々に務める吉野は度重なる小松田の失態にブチ切れるのであった。