18.疑似家族の土井家 (前編)
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
まだ日の高い、午後の時間。
半助たちの町に入った牛車は、町の人々たちの注目をかっさらっていた。
「すげえ……人を乗せる牛車なんて初めて見たよ」
「どこに向かってるのかしらね?」
そんなことを人々は口々に話していたという。
半助ときり丸は、家の外にいた。
きり丸はあたりを見回している。
牛車を探していた。
「ああ、早く来ないかなぁ」
「落ち着け、きり丸。じきに到着するんだから」
「土井先生、前見て!あれ……牛車ですよ!」
きり丸は前方を指さした。
車輪の音を響かせながら、徐々に牛車が近づいてくる。
嬉しさから思わず二人は顔を見合わせた。
牛車は半助の家の前で止まった。
が、中にいるはずの空が一向に出てこない。
不思議に思ったきり丸と半助が御者に一礼し、簾をめくって屋形内を覗く。
そこにあった光景に、二人は驚愕した。
「空さん、眠ってますね……」
散々半助のことで悩みぬいた結果、夢の世界へと旅立ってしまった空だった。
まさか寝ているとは思わなかった。
拍子抜けしたきり丸と半助はそれぞれ笑う。
しかし、困ったことに空が起きない。
きり丸が至近距離で叫んでも、顔をぺちぺちと叩いても、体を揺すっても目が開く気配がない。
何か美味しいものを食べている夢でも見ているのか、時折むにゃむにゃと口が動く。
その可愛らしい仕草に半助は目を細める傍ら、きり丸はこらえきれずに吹き出した。
「見て見て、土井先生!空さん口元が動いてる。あれ、癖なんですかね?ニヒヒッ」
「ん?癖って?」
「だって、あの寝顔見たことありますもん」
「……いつだ?」
「いつって……ジュンコが脱走した日。おれ、夜一緒に寝たし」
自分よりも空のことを知っているかのようなきり丸の口振りに、半助がムッと顔を険しくする。
「そんな恨めし気に見ないでくださいよ!今日からいくらでも空さんの寝顔を見れるじゃないっすか?ともかく、空さんをここから下ろしましょう。土井先生、抱えてあげてください!」
「そ、そうだな」
きり丸が荷物を運び、半助が空を抱え上げ、牛車から降りようとする。
そのときだった。
「ん……?ここは……?」
空がようやく眠りから覚めたのだ。
ゴシゴシと目を擦っている。
ぼんやりとした視界が徐々にはっきりとした輪郭を帯びていく。
「!?」
目の前あったのは半助の顔。
空は起きて早々、心臓が止まりそうになった。
「ど、土井先生……!?」
「起きてしまったか。中々目を覚まさなかったから、その、すまない……」
「起きない空さんが悪いんですからね」
きり丸が悪戯っぽくそう言って、べーと舌を出した。
「草履履いてないし、このまま家の居間まで運ぶよ。そのままでいてくれる?」
「あ……はい……」
いきなりの展開に空はどうすることもできず、頬を赤らめたまま、半助の腕の中で縮こまるより他なかった。
(よりによって、土井先生に寝顔を見られてしまった……しかも、お姫様抱っこまでされて……)
空は眠りこけていた自分に呆れていた。
顔をおさえる空を、きり丸と半助は温かく見守っている。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないっすか?」
「だって……」
「とにかく、長旅お疲れ様」
緊張をほぐすようなやさしい声だった。
空はゆっくりと半助を見る。
忍術学園で毎日目にしていた、あの温かい笑顔がそこにはあった。
再び空の頬が赤く染まる。
半助はすっかり余裕を取り戻していた。
会ってみれば、空は無防備な寝顔をさらしているし、今も動揺丸出しでもじもじしている。
そんな空の姿を目の当たりにすれば、身体に張り付いていた緊張はどこかへ飛んで行ってしまった。
「あ、あの……土井先生、きり丸君。今日からその……お世話になります……」
空がその場に三つ指を立てて頭を下げた。
「んもう、そんな畏まらないでください!おれ、ずっと楽しみに待ってたのに……他人行儀はイヤです!」
「きり丸の言う通りだ。ここにいる間は自分の家だと思って、くつろいでほしい」
「そうそう、その通りっすよ」
空を安心させるように、半助ときり丸が微笑む。
「……」
二人の笑顔に、ガチガチに固まっていた顔の筋肉がほぐれていくのが自分でもわかった。
「うん、今日からよろしく……二人とも」
空が親しみを込めてそう言う。
できる限りの微笑みを二人に返した。
半助たちの町に入った牛車は、町の人々たちの注目をかっさらっていた。
「すげえ……人を乗せる牛車なんて初めて見たよ」
「どこに向かってるのかしらね?」
そんなことを人々は口々に話していたという。
半助ときり丸は、家の外にいた。
きり丸はあたりを見回している。
牛車を探していた。
「ああ、早く来ないかなぁ」
「落ち着け、きり丸。じきに到着するんだから」
「土井先生、前見て!あれ……牛車ですよ!」
きり丸は前方を指さした。
車輪の音を響かせながら、徐々に牛車が近づいてくる。
嬉しさから思わず二人は顔を見合わせた。
牛車は半助の家の前で止まった。
が、中にいるはずの空が一向に出てこない。
不思議に思ったきり丸と半助が御者に一礼し、簾をめくって屋形内を覗く。
そこにあった光景に、二人は驚愕した。
「空さん、眠ってますね……」
散々半助のことで悩みぬいた結果、夢の世界へと旅立ってしまった空だった。
まさか寝ているとは思わなかった。
拍子抜けしたきり丸と半助はそれぞれ笑う。
しかし、困ったことに空が起きない。
きり丸が至近距離で叫んでも、顔をぺちぺちと叩いても、体を揺すっても目が開く気配がない。
何か美味しいものを食べている夢でも見ているのか、時折むにゃむにゃと口が動く。
その可愛らしい仕草に半助は目を細める傍ら、きり丸はこらえきれずに吹き出した。
「見て見て、土井先生!空さん口元が動いてる。あれ、癖なんですかね?ニヒヒッ」
「ん?癖って?」
「だって、あの寝顔見たことありますもん」
「……いつだ?」
「いつって……ジュンコが脱走した日。おれ、夜一緒に寝たし」
自分よりも空のことを知っているかのようなきり丸の口振りに、半助がムッと顔を険しくする。
「そんな恨めし気に見ないでくださいよ!今日からいくらでも空さんの寝顔を見れるじゃないっすか?ともかく、空さんをここから下ろしましょう。土井先生、抱えてあげてください!」
「そ、そうだな」
きり丸が荷物を運び、半助が空を抱え上げ、牛車から降りようとする。
そのときだった。
「ん……?ここは……?」
空がようやく眠りから覚めたのだ。
ゴシゴシと目を擦っている。
ぼんやりとした視界が徐々にはっきりとした輪郭を帯びていく。
「!?」
目の前あったのは半助の顔。
空は起きて早々、心臓が止まりそうになった。
「ど、土井先生……!?」
「起きてしまったか。中々目を覚まさなかったから、その、すまない……」
「起きない空さんが悪いんですからね」
きり丸が悪戯っぽくそう言って、べーと舌を出した。
「草履履いてないし、このまま家の居間まで運ぶよ。そのままでいてくれる?」
「あ……はい……」
いきなりの展開に空はどうすることもできず、頬を赤らめたまま、半助の腕の中で縮こまるより他なかった。
(よりによって、土井先生に寝顔を見られてしまった……しかも、お姫様抱っこまでされて……)
空は眠りこけていた自分に呆れていた。
顔をおさえる空を、きり丸と半助は温かく見守っている。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないっすか?」
「だって……」
「とにかく、長旅お疲れ様」
緊張をほぐすようなやさしい声だった。
空はゆっくりと半助を見る。
忍術学園で毎日目にしていた、あの温かい笑顔がそこにはあった。
再び空の頬が赤く染まる。
半助はすっかり余裕を取り戻していた。
会ってみれば、空は無防備な寝顔をさらしているし、今も動揺丸出しでもじもじしている。
そんな空の姿を目の当たりにすれば、身体に張り付いていた緊張はどこかへ飛んで行ってしまった。
「あ、あの……土井先生、きり丸君。今日からその……お世話になります……」
空がその場に三つ指を立てて頭を下げた。
「んもう、そんな畏まらないでください!おれ、ずっと楽しみに待ってたのに……他人行儀はイヤです!」
「きり丸の言う通りだ。ここにいる間は自分の家だと思って、くつろいでほしい」
「そうそう、その通りっすよ」
空を安心させるように、半助ときり丸が微笑む。
「……」
二人の笑顔に、ガチガチに固まっていた顔の筋肉がほぐれていくのが自分でもわかった。
「うん、今日からよろしく……二人とも」
空が親しみを込めてそう言う。
できる限りの微笑みを二人に返した。
